大型ツアラーなど、近年はバイクにも採用例が増えている「ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)」。高速道路などで車間距離を自動で保ちながら前車を追従する機能で、4輪車ではおなじみですよね。でも、バイクのACCは、実は4輪車の機能と違う点もあって、使う際には注意も必要です。
では、それは、実際にどんな点なのでしょうか? ここでは、ヤマハの「トレーサー9GT+ Y-AMT」などを例に、バイク用ACCの特徴や4輪車との違い、作動時の注意点などを紹介。また、2025年に登場したKTMの「1390スーパーアドベンチャーS EVO」のように、近年は4輪車とほぼ同様の機能も採用するモデルが出てくるなど、最新のトレンドについても言及します。

ACCとクルコンの違い

今や、4輪車ではおなじみとなったACC。これは、今どきのクルマに乗っている人ならご存じの通り、高速道路などで、アクセル操作をしなくても設定速度での巡航ができ、先行車両に追いつくと一定の車間を保って追従走行をしてくれる機能です。

バイクにも、以前からアクセル操作なしに設定速度を維持して走行できる「クルーズコントロール」、いわゆるクルコン機能を備えるモデルはありました。でも、前車を自動で追従する機能までは装備されていなかったため、前車に追いついた際は、ライダーの操作を必要とします。それが、最近のモデルは、レーダーセンサーの搭載により、クルマと同じように車間距離を自動で維持できるACCも可能に。長距離ツーリングなどで、さらなる疲労軽減や安全性向上などに貢献します。

バイクでも、レーダーセンサーの搭載により、クルマと同じように車間距離を自動で維持できるACCが登場してきた

最新機能を持つトレーサー9GT+ Y-AMT

では、実際に、バイクのACCはどんな機能を持つのでしょうか? 最新機能を採用するヤマハ「トレーサー9GT+ Y-AMT」を例に紹介しましょう。

ヤマハ・トレーサー9GT+ Y-AMT

このモデルは、888cc・3気筒エンジンを搭載する「トレーサー9GT」に、先行車を追従走行するACCなど、先進の運転支援システムを追加した上級バージョンです。その2025年モデルでは、電子制御シフト機構「Y-AMT」を採用したことで、車名を従来のトレーサー9GT+からトレーサー9GT+ Y-AMTに変更しています。

ACCの主な機能は、まず、車体に装備したミリ波レーダーにより、前車の有無や車間を検知。その情報を元に、状況に応じて、定速巡航はもちろん、前車との車間が近い場合は減速、離れた場合は設定速度まで加速するといった制御を自動的で実施します。なお、ACCは約30km/h以上(使用するギアによって異なる)で走行中に作動。追従走行時の車間設定は4段階から選択可能となっています。

また、コーナーなどで車体の旋回を検知すると、車速の上昇を抑えたり、先行車がいる場合は追従加速度も制限する「旋回アシスト機能」も採用。コーナリング時の安全性にも貢献します。

加えて、ライダーが追い越し車線側へウインカーを出し、車両が追い越し状態にあると判断すると、通常の車速回復時よりもスムーズに加速する「追い越しアシスト機能」も装備。これらさまざまなACCの機能により、ツーリング時などでライダーの疲労軽減などに役立ってくれます。

トレーサー9GT+ Y-AMTのACC作動イメージ。先行車を捕捉しているときは、設定したクルージングスピードを超えない範囲で、先行車の速度に合わせて加速や減速を行う(左)/設定したクルージングスピード以下で走行中、先行車がミリ波レーダーの検知から外れたときは、設定したクルージングスピードまで加速(右)*トレーサー9GT+ Y-AMT取扱説明書から抜粋

トレーサー9GT+ Y-AMTでは、さらに「レーダー連携UBS(ユニファイドブレーキシステム)」も搭載。UBSとは、ヤマハ独自の前後連動ブレーキ機構で、後輪ブレーキを操作すると、前輪にもほどよく制動力を配分して、良好なブレーキフィーリングをもたらすことが特徴です。そして、このモデルでは、UBS機能とミリ波レーダー、高機能6軸「IMU」などをマッチングさせることで、前走車との車間が近く衝突の恐れがあるにも関わらず、ライダーのブレーキ入力が不足している場合、自動でブレーキ力をアシストする機能も採用。衝突回避のための操作を手助けする先進機能も装備します。

なお、ほかにも2025年モデルでは、新たに車体後方にもミリ派レーダーを追加。後方から接近してくる車両を検知しミラー内に表示する「BSD(ブラインド・スポット・ディテクション)」なども新採用しています。

ちなみに、このモデルには、前述の通り、新しく電子制御シフト機構「Y-AMT」を搭載。これは、クラッチレバーやシフトペダルを廃し、ハンドルに装備したシフトレバーでの変速操作を可能とする新開発の自動変速トランスミッションです。

子制御シフト機構「Y-AMT」を搭載。クラッチレバーやシフトペダルを廃し、ハンドルに装備したシフトレバーでの変速操作を可能とする新開発の自動変速トランスミッションだ

主な機能では、パドルシフトで手動変速できるMTモードと、フルオートで変速するATモードの両方を用意。とくに、ACCとの関係では、ATモードとACCの作動時に、定速走行中のギア選択のほか、車速の増減によってもY-AMTが自動的な変速を実施。これにより、一般的な4輪のオートマチック車と同様に、追従走行中にシフトアップとダウン、もしくはその維持をシステムに託すことができる2輪車世界初の制御も採用しています。

4輪車との大きな違いは渋滞時

このように、まるで4輪車並みに高機能なのがトレーサー9GT+ Y-AMTのACCです。でも、注意したいのは、最新の4輪車に搭載されている「渋滞追従(または全車速追従)機能付き」ではないこと。これは、たとえば、ACC作動時に、渋滞などで前車が停止すると自車も自動で停止。前車が再び発進すると、ドライバーの操作などで前車の追従を再開するという機能のことです。

一方、トレーサー9GT+ Y-AMTのACCでは、設定できる巡航速度は、最低速度30~50km/h(ギヤによって異なる)で、最高速度160km/h。また、たとえば、ギヤが1速や2速のとき、速度が25km/h以下に低下すると機能を自動停止するようになっています(これもギアによって最低速度は変わる)。そのため、渋滞などで前車が停車すると、後続のバイクに乗るライダーはブレーキ操作を必要とするのです。

また、レーダー連携UBSの対応速度範囲は30~150km/hで、UBS自体の機能は、一般道などでACCを使っていない時には、ライダーがブレーキ操作を行わないと作動しないようになっています。

ミリ波レーダーを搭載し、ACCなど数々の先進機能を採用するトレーサー9GT+ Y-AMT(写真は欧州仕様車)

こうした低速時や停止時に機能を制限する理由は何なのでしょうか? ヤマハの開発者によれば「(渋滞時などにライダーが意識的に)ブレーキをかけていないのに、バイクが勝手にブレーキをかけてしまうと、ライダーは予期しない制動により体が前のめりになってしまい、最悪の場合は前方へ飛び出してしまう危険性がある」ためといいます。特に、コーナリング中の予期せぬブレーキは、ライダーにとって危険度が増すもの。加減速で重心が前後に移動するバイクでは、4輪で走るクルマほど安定性が高くないからです。

そして、こうした設定は、ほかのACC機能を持つ多くのモデルも同様です。たとえば、カワサキ「ニンジャH2 SX SE」では、ギヤごとに設定された一定の速度以下になるとシステムを解除する仕組み。つまり、渋滞などで前車が止まり、自車も停車する時にはライダー自身のブレーキ操作が必要になるということです。

カワサキ・ニンジャH2 SX SE

なお、この点でいえば、ACC機能を備える欧州メーカー製モデルも同様。たとえば、ドゥカティ「ムルティストラーダV4S/Sスポーツ」、BMW「R1300GS・ツーリング」なども、基本的には停止時にはACCの機能が解除されるため、ライダーのブレーキ操作などが必須となっています。

ドゥカティ・ムルティストラーダV4S

BMW・R1300GS

KTMの新型は自動停止機能も搭載

そんなバイク用ACCですが、KTM「1390スーパーアドベンチャーS EVO(2025年12月5日現在で日本未導入)」が、2025年モデルで完全自動停止も行うACCを採用し注目を集めています。

オンロードとオフロードの両方で高い走破性を誇るアドベンチャーモデルの「1290スーパーアドベンチャーS」をベースに、排気量を1350ccに拡大し、パワーアップなどを施したのがこのモデル。大きなトピックは、クラッチ操作を自動化した「KTM AMT」を採用すること。クラッチレバーを装備しておらず、左スイッチボックスには指先でシフト操作できるスイッチを備えることで、任意の変速操作も可能とすることなどが特徴です。

また、先代モデルでも採用していたボッシュ製ACCは、ブレーキアシスト、衝突警告、距離警告を備えるなどで機能をアップ。加えて、KTM AMTとの連携で、追従する前車の停車に合わせた自動停車と再始動も実現。まるで、4輪車の渋滞追従機能付きACCのように、ライディング時の操作を極限まで自動化し、疲労感のないツーリングを実現できるようになっています。

KTM・1390スーパーアドベンチャーS EVO

このように、クルマの機能進化に呼応するかのように、バイクの場合も、ACCなどの先進運転支援システムは徐々にアップデートされています。こうした技術進歩により、近い将来、バイク事故が大きく減少する世界が到来することに期待したいですね。

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