長距離ツーリングで快適な装備やオンロードでの余裕ある走りなどで、昔から高い人気を誇るのがスポーツツアラーです。近年は、各メーカーからさまざまなモデルが販売され、ラインアップも充実。さらに、イタリア・ミラノで開催のEICMA2025では、ホンダが最新モデル「CB1000GT」も発表し、このジャンルに対する注目度はさらにアップしています。
ここでは、そんなスポーツツアラーの特徴、同じツアラー系でもアドベンチャーやクロスオーバーなどのモデルとどう違うのかなどを紹介します。

スポーツツアラーの特徴

スポーツツアラーとは、文字通りスポーツバイクとツアラーそれぞれの性格をミックスしたバイクのことです。

エンジン特性は、高回転域のピークパワーだけでなく、低・中回転域のトルク特性も重視することで、幅広いユーザーが扱いやすい性格に味付けしているバイクがほとんど。また、高速走行時やコーナーリングでの安定性も高く、初心者でも乗りやすく、ベテランライダーも納得の走りを楽しめる奥の深いバイクも数多いといえます。

装備面では、ウィンドスクリーンやフェアリングなどで防風効果を高めたり、大容量の燃料タンクで長い航続距離を確保したモデルが主流。また、アップライトなポジションや広めのシートなどで、長距離走行での快適性も追求しています。

スポーツツアラーとは、スポーツバイクとツアラーそれぞれの性格をミックスし、とくにオンロードでの走りを磨いたモデル(写真はホンダ・CB1000GT)

加えて、近年、大排気量バイクなどには、クラッチやスロットル操作をせずにシフトアップやダウンができるクイックシフターや、アクセル操作なしでも設定速度を維持するクルーズコントロールなど、高速道路などの巡航で疲労を軽減するような装備を採用するモデルも増えています。

さらに、大型高級モデルなどのなかには、先行車との車間距離を自動で維持しながら先行車を追従するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を採用するなど、まるで4輪車並みの装備を持つモデルも増加傾向。より快適で、より安全なバイク旅を楽しめるようになってきています。

最新のCB1000GTも登場

では、実際に、スポーツツアラーにはどんなモデルがあるのか、国産車を例にいくつか紹介しましょう。

【スポーツツアラーの例】
・ホンダ・CB1000GT(近日登場)
・ホンダ・NT1100
・ヤマハ・トレーサー9GT/9GT+ Y-AMT
・ヤマハ・TMAX560/テックマックス
・カワサキ・ニンジャH2 SX SE
・カワサキ・ニンジャ1100SX/SE
・スズキ・GSX-S1000GT

ホンダ・CB1000GT

ホンダ・NT1100

ヤマハ・トレーサー9GT

ヤマハ・TMAX560テックマックス

カワサキ・ニンジャH2 SX SE

カワサキ・ニンジャ1100SX SE

スズキ・GSX-S1000GT

いずれのモデルも、フェアリングやスクリーン、アップライトなポジションなど、先に述べたようなスポーツツアラーの要件を満たしているといえます。

なかでも、注目なのは、前述の通り、ホンダがEICMA2025で発表したCB1000GT。ストリートファイターの「CB1000ホーネット」をベースに開発されたモデルで、エンジンには2017年型「CBR1000RRファイアーブレード」と同系の1000cc・水冷直列4気筒を搭載。元々レースにも対応するスーパースポーツ向けエンジンをベースに、専用のFI(フューエルインジェクション)セッティングとスロットルバイワイヤ(TBW)システムを採用。力強い出力特性を維持しながら、スロットルの開け始めの出力をより滑らかにすることなどにより、長距離ツーリングでライダー、パッセンジャーの疲労を軽減し、快適性に寄与するといいます。

一方、車体には、CB1000ホーネットのスチール製ダイヤモンドフレームをベースに、シートレール部を新設計。パッセンジャーや荷物の積載に配慮し、走行時の車体安定感を高めています。

また、サスペンションには、ショーワ製の電子制御サスペンション「EERA(エレクトロニカリー・イクイップド・ライド・アジャストメント)」を標準装備。搭載する6軸IMUが検知する車体姿勢、ECUのエンジン制御情報、車輪回転速度などのデータから走行状態を把握し、前後サスペンションの減衰力を最適化。路面状況に適した高度な減衰力調整を自動で行うことを可能としています。

さらに、市街地からワインディングまで幅広い状況などに応じて、出力特性や前後サスペンションの減衰力特性などを好みの設定にできるライディングモードも搭載。「STANDARD(スタンダード)」「SPORT(スポーツ)」「RAIN(レイン)」「TOUR(ツアー)」の4モードから選択できるほか、各設定を任意に調整できるユーザーモードも用意します。

外観では、シャープな造形を施したフロントカウル一体型のシュラウドを採用し、ツアラーらしさを強調します。また、5段階、上下81mmの調節幅を持つアジャスタブルスクリーンを装備。シャープな造形でまとめながらも、高いプロテクション性能とニュートラルなハンドリング特性に貢献します。

なお、このモデルは、ホンダによると、欧州をはじめ日本やアジア・大洋州地域などで販売を計画。日本での発売時期や価格などはまだ未発表ですが、追加情報が気になるところです。

CB1000GTは、日本での発売時期や価格などはまだ未発表。追加情報が気になるところだ

4輪並みの先進装備も魅力

また、スポーツツアラーには、これも前述の通り、数々の先進装備を採用するモデルも増えています。

たとえば、ヤマハ「トレーサー9GT+ Y-AMT」。ヤマハ車で初のミリ波レーダーを搭載するこのモデルは、前述したACCをはじめ、前方の車などと衝突する危険がある場合にブレーキ力をアシストする「レーダー連携UBS(ユニファイドブレーキシステム)」を採用。シーンに応じ減衰力を自動で最適化する電子制御サスペンション、スマホと繋ぐことでアプリを画面に表示できる7インチ高輝度TFTメーターなど、高機能な装備が満載です。

トレーサー9GT+ Y-AMTはヤマハ車で初のミリ波レーダーを搭載するモデル

さらに、2025年モデルでは、障害物や他車両などを検知する車体前方の「ミリ波レーダー」に加え、新たに車体後方にもレーダーを追加。後方から接近してくる車両を検知しミラー内に表示する「BSD(ブラインド・スポット・ディテクション)」も新採用しています。

加えて、電子制御シフト機構のY-AMTも新搭載。これは、クラッチレバーやシフトペダルを廃し、ハンドルに装備したシフトレバーでの変速操作を可能とする新開発の自動変速トランスミッションです。

しかも、パドルシフトで手動変速できるMTモードに加え、バイクがフルオートで変速を行うATモードも搭載。いずれのモードも、クラッチやシフトペダルの操作が不要になることで、ライダーは体重移動やスロットル開閉、ブレーキングなど、ほかの操作に集中できるメリットを生みます。

スーパースポーツとの違い

スポーツツアラーは、前述の通り、スポーツバイクの要素とツアラーの要素を併せ持つのですが、スポーツバイクの代表選手といえるスーパースポーツとの違いは意外に大きいといえます。

たとえば、速さを徹底的に追求するスーパースポーツは、前傾姿勢が比較的きつく、荷物の積載性もほとんど考えられていません。

対するスポーツツアラーの場合、ツーリングのための性能と装備が充実。低・中回転域のトルクが太いため、発進からスムーズに走りますし、タイトコーナーなども軽快。荷物などの積載性もいいのもバイク旅にぴったりです。

そのうえ、タイヤにはスーパースポーツなどにも採用される前後17インチのハイグリップ系などを採用するモデルが多い傾向です。

たとえば、ヤマハのトレーサー9GT+ Y-AMTのタイヤサイズは以下の通り。

【ヤマハ・トレーサー9GT+ Y-AMTのタイヤサイズ】
・前:120/70ZR17M/C (58W)
・後:180/55ZR17M/C (73W)

前後17インチのタイヤ&ホイールを装備するトレーサー9GT+ Y-AMT

このサイズは、トレーサー9GT+ Y-AMTと同じ888cc・3気筒エンジンを搭載するヤマハ最新のスーパースポーツ「YZF-R9」のタイヤと同サイズです。前後17インチのタイヤ&ホイールは、舗装路での旋回性やブレーキ性能、高速道路など高い速度で巡航する場合の快適性などに優れているとして、今ではスポーツモデルの多くに採用されています。

ヤマハ・YZF-R9

そういった意味で、スポーツツアラーは、あくまでオンロードで走ることを最優先し、舗装路でより軽快なハンドリングや乗り心地の良さを追求しているため、タイヤにスーパースポーツと同様のサイズを採用しているといえます。

アドベンチャーバイクとの違い

一方、大型のウインドスクリーンやアップライトなポジションなど、スポーツツアラーとスタイルが似ているモデルには、アドベンチャーバイクもあります。こちらは、スポーツツアラーと何が違うかといえば、最も分かりやすいは前後ホイールの大きさです。

たとえば、ヤマハの「テネレ700」や、ホンダの「CRF1100Lアフリカツイン<s>/DCT」では、フロント21インチ、リア18インチを採用。また、電子制御サスペンションを採用する「CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツES/DCT」は、フロント19インチ、リア18インチを採用しています。いずれも後輪よりも前輪が大きいサイズ設定です。

ヤマハ・テネレ700

ホンダ・CRF1100Lアフリカツイン<s>/DCT

ホンダ・CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツES/DCT

つまり、先に紹介したトレーサー9GT+ Y-AMTなど、スポーツツアラーの多くが前後17インチを採用するのとは大きく異なるのです。

これは、アドベンチャーバイクと呼ばれるモデルの多くが、オンロードだけでなく、オフロードの走破性も重視しているから。一般的に、バイクで悪路を走る場合、前輪の径が小さいとギャップなどにはまりやすく、ひどい場合は前転してしまうこともあります。逆に、大きい前輪の方が、少々路面が荒れていてもハンドルが取られにくいなどのメリットがあるといわれています。

とくに、テネレ700やCRF1100Lアフリカツイン<s>などが採用するフロント21インチ、リヤ18インチというホイールは、オフロード競技用のエンデューロレーサーなどにもよく採用されるサイズ(モトクロッサーはフロント21インチ、リヤ19インチが多い)。

おそらく、長年のトライ&エラーから、比較的長距離を走るエンデューロレースでの最適解として採用例が多いのでしょう。つまり、アドベンチャーバイクは、オフロードバイクにより近い性格を持ったモデルであるため、こうした前後タイヤのサイズを採用しているといえます。そして、こうした点が、あくまでオンロードメインのスポーツツアラーと違うのです。

アドベンチャーバイクは、オフロードバイクにより近い性格を持ったモデルといえる

クロスオーバーモデルとの違い

ちなみに、オンロードとオフロードの両方での走りを楽しめるモデルには、近年、ホンダ「NC750X/DCT」やスズキ「GSX-S1000GX」などのクロスオーバーモデルも登場しました。

ホンダ・NC750X/DCT

スズキ・GSX-S1000GX

ただし、こちらもタイヤには前後17インチを採用する例が多いといえます。おそらく、アドベンチャーモデルよりもオンロード性能の方に重点を置ているモデルが多いのでしょう。その意味で、クロスオーバーモデルは、スポーツツアラーとアドベンチャーモデルの中間的な存在だといえます。

ちなみに、クロスオーバーモデルに関しても、前述のEICMA2025で、スズキが新型クロスオーバーモデル「SV-7GX」を発表し話題となっています。

SV650シリーズと同系の645cc・2気筒エンジンを搭載するこのモデルは、兄弟車である1000ccモデルのGSX-S1000GXと同じコンセプトで開発され、共通のアグレッシブなデザインも採用します。また、SV650シリーズで定評のある軽快でスポーテイな走りと、アドベンチャーモデルの快適性を併せ持つことも大きな特徴です。

なお、このモデルは、2026年より北米・欧州を中心に各国で順次販売を開始。日本での発売時期や価格はこれも未発表ですが、やはり今後の追加情報に注目です。

スズキ・SV-7GX

ともあれ、スポーツツアラーはもちろん、クロスオーバーモデルやアドベンチャーモデルなど、ツーリングに最適なモデルは今後もラインアップが充実してきそうです。ユーザーにとっては、より選択肢が増えることは大歓迎ですよね。より好みに応じたバイク旅を楽しめるようになりますからね。

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