ジャパンモビリティーショー2025で、スズキがコンセプトモデルの「e-VanVan(e-バンバン)」を世界初公開。1970年代の名車がEVで甦る!? ジックリと開発者に訊いてみた! さらに4足歩行するコンセプトEV「モクバ2」、日本発売が待ち遠しい「GSX-8T/TT」についてもインタビューを敢行だ。

【e-バンバン】元祖のフレームやエキパイカバーなどをアイデアで再現

モビリティショーのスズキブースで、まず注目したいのが「e-VanVan(e-バンバン)」。バンバンはご存じ1970年代から人気シリーズとなったレジャーバイクで、ファットなバルーンタイヤと細身の車体が斬新だった。これをEVとして現代に復活させたコンセプトモデルがe-バンバンだ。

ワールドプレミアとなった「e-バンバン」(参考出品車)。往年のバンバンを現代風にアレンジしたEVだ。モーターやバッテリーは、既に海外で展開されているe-アドレスを使用している。■主要諸元(参考値)全長1810×全幅825×全高1050(各mm)

コチラが元祖の「バンバン90」。1971年にデビューし、砂地でも走れるバルーンタイヤとシートの存在感に対し、対照的なスリムボディが特徴だった。エンジンは2ストロークで後に50、75、125も発売。

話を伺ったのは、スズキの斎藤航平さん(e-バンバン デザイン担当 写真右)と大谷慎也さん(同 企画)。

プレスカンファレンスでは鈴木俊宏社長がe-バンバンにまたがる場面も。スズキとしてもアピールしたい1台のようだ。

 

特徴的なアンダーボーンフレームにブレースバー付きのワイドハンドル、前後12インチのファットタイヤetc……。よく見ると、往年のバンバンをかなり再現していることがわかる。ただし従来のエンジンがあった位置には大きな箱型バッテリー、その後部にモーターを搭載。LEDヘッドライトやバーエンドミラーで現代のバイクらしいスタイルを獲得している。

「可能な限りこだわって昔のバンバンの特徴を再現しています。バンバンでアンダーボーンフレームだった部分のカバーはオリジナルの曲線を意識していますし、バッテリーカバーは昔のエキパイカバーをイマ風のイメージで再現しています。タイヤは絶版になってしまったので、なんとか太く見せるためにディッシュホイールにして黒にすることでタイヤを強調しました。

やっぱりバンバンを知っている方には『EVなんて』と思う人もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと乗ってもらって案外楽しいと気づいてもらいたい。また、若い世代でアナログなものが流行っていますが、同じような感覚で楽しんでもらえたら嬉しいです」。

ハンドル下のカバーは、バンバンのアンダーボーンフレームをイメージした曲線美。

通常のエンジン位置に巨大なバッテリーを搭載。上部のカバーは元祖バンバンのエキパイカバーを意識した。

リング状ポジションを備えるLEDヘッドライトやLEDウインカーで、現代的な雰囲気に。

ワイドハンドルだった元祖に倣い、「幅広いハンドルに見せたかったのでバーエンドミラーにしました」とのこと。GSX-8T/TTのミラーを加工して装着している。

前後タイヤともダンロップ製の130/80-12。フロントに倒立フォークを採用する。ABSの車速センサーや配線もあり。

リヤはイニシャル調整機構付きの2本ショックで、後輪はチェーン駆動。黒いディッシュホイールで往年のバンバンらしい極太タイヤをイメージしている。

リヤフェンダーも往年のバンバンを思わせる曲線デザイン。

懐かしさと新しさを同居させた、気軽なEVモーターサイクル

コンセプトは?

「モーターサイクルのEVがまだあまり発売されていない中、EVで面白いものができればというコンセプトで提案しました。EVは大きくて仰々しかったり、逆に華奢だったりするので、普通に相棒として気楽に使えて、遊びゴコロを感じられるEVとしています」。

各部にドット風のカラーリングを採用しているが?

「スタイルには懐かしさもありつつ、カラーリングはイマ風な所を狙いました。昔のファミコンみたいにわざと画質の悪いグラフィックとすることで、若者にもアピールしたいと考えました」。

各部に荒いドットのグラフィックを施し、レトロゲームやデジタルなイメージを演出。

走行はできないが、各部のパーツやサイズ感はリアル

ABSに配線があったり、各部のパーツはかなり現実的に見える。

「EVのモーターサイクルをスズキで作ったらどうなるか考えながらのコンセプトモデルなので、リアリティを出すためにきちんと保安部品を装着しています」。

実際に走行は可能?

「これは走りません。もっとワクワクするEVバイクというコンセプト提案ですので、デザイン優先で作っている部分も多いです」。

走行できないとのことだが、すぐ市販できそうなほど完成度が高い印象で、実際、市販モデルであるe-アドレスのモーターやバッテリーを使用している。e-アドレス搭載のモーターは原付二種に相当する0.98kWを発生し、WMTCモード値で80kmもの航続距離を確保。サイズも原付二種スクーターと同等だ。

今回展示されたe-バンバンは「耐荷重などは考慮していませんが、リアルなサイズをベースに考えています」とのこと。もし市販されるとしたら、今回の車両ぐらいの車格になると思われる。スクーターではなく、遊びゴコロのあるコンパクトなモーターサイクルEVの登場に期待したい!

会場に展示されていたe-アドレスは、既に生産国のインドを皮切りに発売され、世界展開されていく。このシステムをベースとするだけに、e-バンバンも具体性が高いように思える。

車格はダックス125などよりわずかに大きい程度。発売されれば遊べる1台になりそうだ。

【モクバ2】モーター23個を内蔵、坂や階段をラクに移動できる

「MOQBA (モクバ) 2」は、4本脚の新感覚モビリティ。2023年に出展したモクバを技術的に進化させたコンセプトモデルだ。それぞれの脚にモーターを内蔵し、人を乗せて坂や段差なども4足歩行で走破できる。

上部モジュールの変更で、バイク仕様のほか、荷物配送仕様、ベッドになるフラット仕様、椅子仕様の4バリエーションに変化できる。

「モクバ 2」(参考出品車)は4足歩行できる電動モビリティ。人を乗せて、坂や階段でも動物のように移動できる。

スズキの宮坂智海さん(研究開発 写真左)、伊達正泰さん(デザイン)に話を伺った。

 

どういう使い方をするモデルなのだろうか。

「坂や階段が多い所で大変ご苦労されている方に対して、サポートするための乗り物です。そういった地域に住んでいる方だけでなく、配達業務やゴミ収集など働いている人たちも助けたいという思いで開発しました」。

モーターはそれぞれの脚に5つ、胴体に2つあり、計23個も搭載しているという。

「各関節が動き、坂道や段差でも、乗っている人を水平に保つ仕組みです。ステップも乗り込みしやすいようにモーターで上下します。ずっと歩行すると消費電力が激しいので、平坦な道では各関節を固定し、ステア軸と車輪だけで走行することによって消費電力を抑えられます」。

最高速度は歩行者と同じ6km/h程度を想定。車道も走れて20km/h程度出せるという。特定原付のカテゴリーに入ると思いきや「どのジャンルにも、どこのカテゴリーにも属してない乗り物になります」という。確かにこの形状だと特定原付には合致できない。それでも、使用目的が明確であり、役立つ局面は多そう。今後の動向を見守りたい。

前方にカメラがあり、階段などを認識。前回より横幅がスリム化された。

各関節にモーターを内蔵。操舵する部分をヒザから足首に変更し、安定感と旋回性がアップしている。

足を載せるステップもモーターで稼働。会場では外部電源で給電していたが、バッテリーを内蔵し(まるでエヴァンゲリオン笑)、充電口も備える。

右グリップのレバーがスロットル。左グリップのウインカー風スイッチで舵を切る。

ショー会場内のキッザニアブースには荷物配送仕様(写真)と椅子仕様も展示されていた。

【GSX-8T/TT】バーエンドミラーは(ほぼ)スズキ初、しかも見やすい!

続いてネオレトロネイキッドのGSX-8T/TTを紹介しよう。前述の2台と違い、海外で今夏正式発表。日本での市販予定車として国内初展示された。

GSX-8系の新たなバリエーションモデルとして、車体や足まわりはスポーツNKのGSX-8Sと共通ながら、専用の丸目LEDヘッドライトや燃料タンクを与え、クラシカルさとモダンさを併せ持つネイキッドとしている。さらにビキニカウルとアンダーカウルを装着したGSX-8TTもラインナップ。デザインは1968年に登場し、タイタンの愛称で呼ばれたT500からインスパイアを受けている。概要やライポジは下記記事に詳しい。

GSX-8T(写真右)とGSX-8TTはともに市販予定車。GSX-8S譲りの775cc水冷4ストDOHC4バルブ直列2気筒のエンジンや鋼管フレームを踏襲する。

話を伺ったのはスズキの加藤幸生さん(開発責任者)。DR-Z4S/SMのチーフエンジニアも務めた。

 

別記事に掲載されていない項目について話を訊いてみた。まずデザインの特徴は?

「ネオレトロなのですが、リバイバルではなく、いつかのスズキのDNAを持ちつつ、現代的なスタイリングに昇華させた、新しいスタイリングとして造っています。デザインスケッチは、スズキイタリアデザインセンターのフランス人デザイナーによるもの。T500をモチーフにしながら、見る人によってはGS1000やインパルスのDNAが入っていたりしますが、新しさを感じていただけるスタイリングになっています」。

ベースはGSX-8Sと同様ながら、細部は色々変更されている。

「キャラクターに合わせて、エンジンカバー色のほか、マフラーカバーを樹脂からステンレスに変更しました。他にもタンクのエンブレムを立体タイプにしたり、遊び心のあるエイトのバッジをつけたりして、高い所有感を狙っています。

バーエンドミラーも特徴ですね。これスズキ初と言いたいところなのですが、実は1980年頃、アメリカ仕様のモデルで採用していたので、21世紀ではスズキ初となります。バーエンドミラーは視認性が少し落ちるケースがありますが、GSX-8Sと同じ視認性を持たせるように、サイズ、位置、ガラスの曲率をチューニングしています。加えて野暮ったくないデザインにするため、造り込みました」。

エンジンカバーの色はブラック。同じエンジンの8Sだとブルーグレー、Vストロームだとブロンズ、とキャラクターによって色を変えているという。

マフラーカバーは樹脂からステンレスに変更。より質感やレトロな雰囲気を高めている。

国内仕様ではスズキ初となるバーエンドミラー。高い視認性とデザイン性を持たせている。

8TTはウインカーがポジション灯に、デザインにこだわりアリ

GSX-8TTのビキニカウルにも様々なこだわりがある。

「ネイキッド8Tはヘッドライトがポジション灯を兼ねていますが、8TTはウインカーがポジション灯になっており、発光しています。これは8TTのカウルをスクエアにするためです。ヘッドライトは共通ユニットなのですが、カウルをこの形状にするとポジション灯が妨げられ、法規に適合しません。そこで8TTではウインカーをポジション灯とすることで法規に適合しています。一つひとつのパーツもしっかり造り込んでいます」。

8Tはヘッドライトがポジション灯を兼ね、ウインカーが発光していない。馬蹄型ヘッドライトは往年のT500などがモチーフ。

8TTのカウルは奥行きがあるスクエア形状。ライトのユニットは8Tと同じだが、ポジションランプの法規に適合しないため、ウインカーをポジションとしている。

エンジンと車体はベースのGSX-8Sとのことだが、走りは?

「GSX-8Sと8R、Vストローム800と800DEは同時開発なんです。一方のGSX-8T/TTはそこからの派生機種になります。ただ乗ってみると、もしかするとこのプラットホームは8Tのためにあったのでは、と錯覚するぐらい合っているんです。目を三角にして走らせるのではなく、トコトコと50~60km/hで走っている時にパラレルツインのトルク感が心地いいです。バイク本来の楽しさを具現化できたと思います」。

ネイキッドの8Tとカウル付きの8TTで走りは違う?

「若干ウインドプロテクションは違いますが、ほぼ同じと思っていただいて結構です。ネイキッドが好きな方は8T、プロテクションやボリューム感が欲しい方は8TTといった好みで選んでいただければと思います」。

正式な価格や発売日は未発表だが、展示車は日本語のコーションラベル付きで、国内仕様と思われる。登場する日は近そうだ。

メーターバイザーなどの純正アクセサリーを装着した車両も会場に展示されていた。

 

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