645ccのVツインエンジンを搭載するスズキSV650系/Vストローム650系は、各方面から“神機”とも称されるほど評価の高い車両。しかし、そんな名車もついにスズキのホームページで生産終了が公式に発表されてしまった。最新の排ガス規制・ユーロ5+に適合していないのがその理由と思われるが…。11/4に開幕するミラノショーで「新型」が発表されるとの噂がッ!!

スズキは国産Vツイン最後の砦

775ccの並列2気筒を積むGSX-8系/Vストローム800系が2022年に登場した時点で「存在危うし…」といった予感もあったスズキの645ccVツイン系だが、その懸念が現実となってしまった。メーカーのホームページでSV650/X、Vストローム650/Xの生産終了が発表されたのだ。

いまやスズキだけとなってしまった国産Vツイン(国内販売される日本メーカー車で、Vツインをラインナップするのは兄貴分の1050ccを含むスズキだけ)の片割れが消えることも悲しいが、それよりも鬼のトータルバランスから「現代の神機」と賞賛されてきたスズキの名車が消えることが残念でならない。

スズキ SV650(83万6000円)

スズキVストローム650XT(103万4000円)

スズキSV650X(88万円)

スズキVストローム650(99万円)

みな生産終了してしまいました…(スズキホームページより)。

 

とはいえ、いわゆるアッパーミドル帯に属する775ccのGSX-8系に対し、そのやや下、600〜700cc帯に位置する645ccのSV650系が消滅してしまうと、GSX-8系の下に存在するスズキ車は398cc単気筒のDR-Z4S/SMのみとなってしまう。ラインナップにぽっかり穴が開いてしまうのだ。

DRはやや特殊な、言うなれば「オフロードのGSX-R」なだけに、ホンダCB650RやヤマハMT-07、カワサキZ650Sといった、ミドルの実力派ロードスターに対抗できる機種は、スズキとしても用意しておきたいハズ。

2023年に発売されたGSX-8S。同じエンジンのフルカウルスポーツ・GSX-8Rや、アドベンチャーのVストローム800/DEと同様に、スズキ車らしい好バランスの走りが身上だ。

日本でも10/8に販売がスタートしたDR-Z4S/SM(写真はSM)。コストよりもパフォーマンスに特化した存在のため、価格も119万9000円と、650系の後継とは言い難い。

良き時代のエンジンをスズキ手法でリフレッシュ?

というわけで、我々が提案したいのは近年のスズキが愛用する「中身全とっかえ法(弊サイトの仮称)」によるSV650系のリフレッシュ再登板プラン。これは2021年のハヤブサで初採用され、今年発表の改良版GSX-R1000R、そして新型DR-Z4S/SMでも採用された手法で、エンジンの基本設計は踏襲しつつ、内部パーツをほぼ刷新することで最新法規や市場の要求に応えようとするものだ。

左が新型DR-Z4S/SM、右が改良型GSX-R1000Rのエンジンで、黄色い部分が従来型からの変更点。GSX-Rも内部パーツの多くが変更されているが、ユーロ2からユーロ5+へと、一挙に3段階も規制を飛び越えたDR-Zはエンジン単体でもほぼ全パーツが新作だ。

 

すでに定評のあるエンジンであれば、イチから新設計するのではなく、弱点を徹底的に潰してリフレッシュする手法は大いにアリ。手堅すぎるという意見もあるだろうが、少し古い設計だから持ち得る「味」が魅力を生むこともあるのがバイクの面白さ。新しければ全てOKというほど、2輪にとってエンジンが単純な存在ではない事は理解してもらえるだろう。

その好例と言えるのが、基本設計は1999年の初代SV650/Sまで遡る現行SV650系のエンジンなのだ。90度Vツインというレイアウトは、ミドルクラスのエンジン形態を模索していた1990年代初頭のスズキが、ヨーロッパアルプスで並列4気筒車/V型2気筒車/単気筒車などを乗り比べた末に「どんな走行状況でも常にライダーに優しく、楽しめる」と選択された逸話を持つ。エンジン形態をテストライダーを筆頭とする開発陣の感性で選択できた、良き時代の遺物なのだ。

しかも2003年の2代目SV650/SではFI化され、2020年の3代目SV650(の改良版)ではユーロ5規制に適合と、時代に添ったアップデートも受けている。ユーロ2仕様だったDR-Z400S/SMをユーロ5+にまでジャンプアップさせたDR-Z4S/SMに比べれば、そのハードルはさほど高くない?とも思える。

ボア×ストローク=81mm×62.6mmの645ccから、72ps/6.4kg-m(Vストローム650系は69ps/6.2kg-m)を発揮するSV650系の90度Vツイン。扱いやすさと楽しさを併せ持つ、現代の名エンジンと言っていい。

1999年に登場した初代SV650Sはアルミトラスフレームに新開発の645cc・90度V2を搭載。カウル付きのSV650Sと、丸目ネイキッドのSV650が存在し、後者は乾燥重量165kgの軽量を誇った。ボア・ストロークダウンで排気量を399ccとしたSV400/Sも存在。

2003年に登場した2代目SV650/Sは輸出専用車。エンジンはFI化され、フレームはアルミトラスながら角パイプ風のデザインに進化した。丸目ライトの無印も継続ラインナップ。

SV650系は2009年にフレームをスチールパイプ化し、曲線的なスタイリングを与えたグラディウス(650)にモデルチェンジ。こちらも輸出専用車で国内には逆輸入車として流通(写真は400cc版のグラディウス400)。

2016年にはグラディウスをベースに、丸目ヘッドライトのシンプルなデザインを与えた3代目SV650が登場。カウル付きのSは存在しないが、低めのハンドルと小型ヘッドライトカウルを備えたカフェレーサー風のSV650Xを2018年に追加している。

 

我々としても情報を掴みきれていない中、希望的観測で記事を作るのは気が引けるが、このエンジンとなれば話が別。率直な話をすれば、Vツインというバイク固有のエンジン形態だから生み出せる面白さを、ぜひスズキさんには継続生産して欲しい…と、それだけなんです(笑)。

実際に「SV-7GX」という名を挙げ、SV650系エンジンのニューモデルが11/4開幕のミラノショーで登場する…と示唆している海外サイトもある。その車名を鵜呑みにすれば足長系ロードツアラーと思われるが、645ccのこのVツインを残して欲しいという、我々の願望が実るのか砕け散るのかは…あと数日で分かるハズ!

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    「SV-7GX」発表後の今となっては、壮大な「前フリ記事」に思えますね。(* ´艸`)
    はたして「お買い得モデル」のネイキッド車「SV-7S」は、登場するのか?!期待しちゃいますね~。

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