ホンダ初のV4エンジンは革新的な長円ピストンのNR500

現在、ホンダのV型4気筒エンジンを搭載するマシンは、MotoGPクラスのRC213Vのみとなりました。

このV4レイアウトのエンジンは、MotoGPの世界ではスタンダードになりつつあります。

高性能エンジンの代名詞とも言われる、4ストロークV4エンジン搭載車の歴史を、カタログで紹介いたします。

ホンダが、ロードレース世界選手権500ccクラスに復帰する際に新開発したエンジンは、2ストロークに対抗するためにV型4気筒DOHC・8バルブで、ピストンは長円型という革新的なものでした。

1979年、片山敬済選手とミック・グラント選手により世界戦にデビューしますが、エンジンも車体もあまりにも革新的で前例のないメカニズムを採用していたため、思うような成績を残す事ができませんでした。

また、当時のレギュレーションでは、2ストロークと4ストロークは同じ排気量で、スタートは4ストロークに不利な押し掛けスタートというのも、競争を困難なものにしていました。

ホンダは、NRが不振の中で世界チャンピオンを獲得するために選択したのは、2ストロークV型3気筒NS500の投入でした。

1983年、NS500はフレディ・スペンサーによって500ccでチャンピオンを獲得することに成功しました。

NR500は、レースの世界では目指した成績を収めることはできませんでしたが、膨大なノウハウは、市販車に反映されることになります。

1979年 NR500と片山敬済選手

NR500(0X)のエンジン

世界初の水冷V4エンジンを搭載したVF750

1982年、ホンダ初の4ストロークV4エンジンを搭載した市販車2車種が発売されました。

オンロードスポーツのVF750SABRE(セイバー)と、アメリカンスタイルのVF750MAGNA(マグナ)です。
※カタログは個人所有のため、汚れなどがあることをご了承ください。

1982年3月発行 表紙は、この2車種に賭ける思いが伝わってきます

VF750 SABRE(セイバー)

高性能な水冷V4エンジンを高らかにPRしています

セイバーは、エレクトロニクス技術を採用した先進的なモデルです

リアにはプロリンクサスペンションを採用

アメリカンカスタムに新風を吹き込んだ、水冷V4エンジン搭載のマグナ

マグナのリアサスは、オーソドックスなスイングアーム式の2本タイプを採用

ホンダは、国内のフラッグシップクラスの750ccに、水冷V4エンジンのVF750シリーズと、空冷直4エンジンのCB750シリーズをラインナップ

ホンダにとって、水冷V4エンジンは、他社に対して独自性と先進性をアピールできるため、V4戦略を積極的に推し進めました。

ここから、ホンダのV4ストーリーが本格的にスタートすることになります。

レーシングテクノロジーを反映したVF750F

V4エンジンは、レースの世界で再び脚光を浴びることになります。

1982年、アメリカのデイトナ200マイルレースに、RS1000RWを投入。

スペンサー選手のライディングにより、デビュー戦ながら2位を獲得しました。

1982年 フレディ・スペンサー選手とRS1000RW

1982年12月、VF750セイバーは、発売8か月後に早くもVF750Fにバトンタッチされました。セイバーは、初の水冷V4エンジン搭載車として華々しくデビューしたのですが、当時の国内市場ではスポーツ性の高いモデルを望む声が多かったのです。

VF750Fは、水冷V4のレイアウトはそのままに、エンジンから車体まで新設計されました。カタログでは、RS1000RWの技術をフィードバックしたことが紹介されています。

1982年12月発行 VF750Fのカタログ表紙

RS1000RWを駆る木山賢悟選手が紹介されています

レーシングテクノロジーを反映したマシンであることをアピール

さまざまなメカニズム紹介のページには、バックトルクリミッター機構の図版もあります。ホイールには、ホンダ独自技術によるコムスターホイールを採用しています。

空力に優れたフェアリングを採用するなど、快適なツーリングにも適した仕様

価格は748,000円。高級モデルVF750セイバーに比べて5万円ほど高くなりました。

輸出専用モデルのVF1000R

1984年、V4ロードスポーツのフラッグシップモデルとしてVF1000Rが発売されました。このVF1000Rは、約3年の販売という短命に終わりましたが、その存在感は今でも語り継がれています。

1985年 VF1000Rのカタログ

V4エンジンの透視図とカムギアトレーンの図版などでメカニズムを紹介

WGPのNSR500でも採用されているコムスターホイールを装着

世界耐久選手権とVFR750F

ホンダは、1983年の世界耐久選手権から、V4エンジンのRS850Rで新たな挑戦をスタートしました。

翌1984年には750ccのRS750Rによって、鈴鹿8時間耐久レースでも優勝し、世界耐久選手権のライダー&メーカーチャンピオンを獲得しました。
エンジンは、市販車のVF750Fをベースとしていました。

そして、1985年には車名をRVF750に変え、新設計フレームを採用するなど、進化を遂げました。世界耐久選手権のライダー&メーカーチャンピオンも獲得し、V4エンジンの優秀性を証明しました。

1984年 鈴鹿8耐を制したRS750Rライダーはマイク・ボールドウィン

1985年 RVF750世界耐久選手権でチャンピオンを獲得

1986年3月、ワークスマシンRVF750の技術を投入したVFR750Fが発表されました。

フレームは、アルミ製ツインチューブを採用し、エンジン出力特性も高められました。タンデムランでも快適な走行ができる設計思想でまとめられたモデルです。

このカタログは、1987年モデルとして欧州向けに制作されたものです。

1987年 VFR750Fカタログ(欧州向け)

欧州モデルの最高出力は105PS

日本モデルは規制があり77PSでした

VFR750R(RC30)の誕生

1987年、ワークスマシンRVF750の技術を反映した市販車VFR750R(RC30)を限定発売しました。

当時の価格としては高額な148万円という設定でしたが、高性能さと稀少価値などで入手がとても困難なスーパースポーツマシンとなりました。

正式な車名はVFR750Rですが、型式番号のRC30が歴代のワークスマシンを連想させることから、「RC30」をメインとしたPR展開となりました。

1987年発行 RC30を全面に押し出したカタログ表紙

RC30のカタログはとてもシンプルな内容ですが、通称RC30ブックと呼ばれるメカニズムを網羅した冊子が用意されていました。この冊子の中にはRC30のサウンドを収録したレコードが付随しているなど、コレクターズアイテムとしても重宝されています。

通称RC30ブックより。44ページで魅力を伝える豪華カタログと言えるかもしれません

このカタログは、イタリア向けに制作されたものです。8ページで魅力を伝えています

RC30は、日本の運輸省が認可した型式番号ですから、イタリア向けのカタログにはVFR750Rの正式車名のみが使われています。

奥のマシンは、三浦昇選手が全日本選手権で使用したRVF750です。

世界耐久選手権で戦うRVF750と対比。ヘッドライトは日本仕様に比べて大型化されています

エンジンの透視図や各種構成パーツなど

メカニズムを伝える写真が多く掲載されています

RC30は、1988年にスタートした市販車ベースで戦うスーパーバイク世界選手権において、フレッド・マーケル選手が初代チャンピオンを獲得。またホンダにメーカーチャンピオンをもたらすなど、高いポテンシャルを発揮しました。

1988年 スーパーバイク世界選手権 フレッド・マーケル選手とRC30

1988年 スーパーバイク世界選手権 ジョイ・ダンロップ選手とRC30

1980年代は、ホンダのV4エンジンを搭載した市販車が誕生し、レースにおいて数々のタイトルを獲得するなど、世界がホンダのV4エンジンを認めた時代と言えます。

1990年代は、いよいよ楕円ピストンのNRが誕生します。

次回では、NRやRVF/RC45などを紹介したいと思います。

※次回に続く!

ホンダのホームページでは、過去にV4ストーリーをまとめたサイトを制作しました。ぜひご覧ください。
ホンダ公式ページ:https://www.honda.co.jp/WGP/spcontents2012/v4-story/

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