ついに、ついに登場した新世代「CB」、新世代の「F」。コンセプトモデルの発表、鈴鹿8耐でのデモ走行、九州「鉄馬」レースでの好成績…。「これは絶対いいぞ!」と期待も膨らみ切ったところでスタンダードモデルが11月14日、カウルやグリップヒーター、クイックシフターが標準装備となるSEが2026年1月16日に発売が決まった。箱根のワインディングを中心に、市街地/高速/晴れ/雨…と、様々な条件でCB1000Fを走らせたノア セレンによる、入魂の1万文字インプレをお届けする!
●写真:小川裕之/ホンダ
目次
兄のホーネット、1300は父親、そして意外な叔父貴とは…?
タイトルにあるように、このブランニューCB1000Fはハンドリングが最っ高なのだが、その話に入る前にまずはこのバイクの成り立ちをおさらいしておきたい。このバイクに期待してきたCBファンたちも、かつての雰囲気を歓迎するエンスーたちも、そして我々メディアもなんとなく「Z900RSがストファイZ900の味付けを変えたネオレトロ版であるように、CB1000Fもホーネットのネオレトロ版??」という認識もあるのではないかと思うのだ。
確かにCB1000FはCB1000ホーネットというベースモデルを持っている。しかしそれだけではない。親戚筋を整理すると、兄貴はやはりホーネット。フレームもエンジンも基本的な部分は共有しているし、足回りも引き継ぐ部分は多い。しかし同時にポジショニング的にはお父さんがCB1300SFだろう。30年も駆け抜けたホンダの看板ブランド「スーパーフォア」はホンダのフラッグシップのCBという立場を守ってきた名車であり、CBブランドの後継者としてCB1000FはCB1300SFから重責を引き継いだということになる。でもまぁ、兄貴であるホーネットの父はCBR1000RR(SC77)だろうから、ここは異父兄弟ということになるか?
そしてスタイリングイメージとしては当然、CB750Fの影響は一目瞭然だ。ロングタンクやテールに流れるライン、スペンサーやバリ伝(といったワードを知らない人も多くなったとは思うが)を連想させてくれるクラシカルなカラーリング。Z900RSやKATANAが世に出て久しく、ネオレトロももはやブームではなくスタンダードになった今、ホンダとしてはやはり「F」というブランドを同社のアイコンに設定するのは自然の流れ。ということはCB750Fはひい爺さんぐらいに当たるのだろうか。
そして意外な親戚が、あの空冷CB1100なのである。正月にお年玉をもらって「あれ、この人だれだろう」レベルなのだが、意外に近しい叔父さんぐらいの間柄。メカニズム的にもセットアップの思想も、CB1000Fにはこの叔父さんの血が濃く流れていたのがまったくの予想外で面白い。
どうしてもひい爺さんのルックスや雰囲気が先行してしまうが、この新型CB1000Fを見るときにはこれら親戚筋「CB一家」のこともわかっておくと諸々理解しやすいように思う。CBは一日にして成らず。親族というのは結構ドロドロするものなのである(?)。
“味変”レベルでここまで別物になるのか!!
兄貴に当たるCB1000ホーネットの復習をしておこう。CBR1000RR(SC77)由来のエンジンをスチールフレームに搭載、王道ストリートファイターであるホーネットはそれはそれは激しいモデルだ。
192psのCBRに対し、STDで152ps、上級仕様のSPで158psに抑えられているとはいえ、エンジンはキンキンに速いしレスポンスもビンビン。タンクが短く着座位置が前の方で、ハンドリングはフロントタイヤを股下に挟み込んでいるかというほどダイレクトで前輪重視。あまりに極端な運動性に「これ本当にホンダ⁉」と思ったほどだ。万人向けのバイクを作ることの多いホンダがこんな激しいものを作ったということがショッキングで、欧州では大変に評価が高い様子だ。
そんなバイクをベースにレトロテイスト溢れ、かつCB1300SFが担ってきた万能性もカバーするようなモデルが作れるものか? と思ってしまう。エンジンキャラクターはともかく、フレームが共通ではハンドリングを作り込むのは至難の業…と思ってしまっていた。
しかもCB1000Fのフレームは基本的な部分がホーネットと全く共通だ。25度のキャスターや98mmのトレール、1455mmのホイールベースや135mmの最低地上高といった数値もまさかの共通。唯一少しの剛性調整をしたのはエンジンをフレームから吊るしている部分のボルト。ココの強度をほんのわずかに落として柔らかさを出しているというが、逆にその程度の変更しか加えていないのが驚きだ。もちろん、タンクが長くなり、38.5㎜後方へと移動した着座位置やテール周りのデザインに合わせてシートレール部は作り直しているが。

CB1000Fとホーネットのフレーム。CB1000Fは着座位置が後退し、かつシート高を下げるためにシートレールをカクカクと折れ曲がった形状に変更。これによって共振が増えるため、後端部のボルトサイズを拡大してハンドルウエイト的に使ったり、プレートで上下レールを接続するなど、各部に工夫を凝らしている。
足回りも同様。セパレートファンクションの倒立フォークは内部の減衰セッティングこそ見直されてはいるもののスプリングはホーネットと共通。スプリングが同じであるならば減衰もそんなには大きくは変わっていないはず。リアに関してはサス本体はバネレートが下げられた専用品でリンク比も変更されてより低荷重域での作動性を追求しているものの、これもまたピボット位置やスイングアームの垂れ角自体はホーネットと共通というのだから驚く。
乗り味は全く違い、対極にあるような運動性をもつホーネットとCB1000Fの異父兄弟。それなのにあくまで技術的には「味変」の域を出ない。着座位置の変更、そしてそれに合わせての前後サスの変更、基本的にはこの2点だけでこれだけベツモノのバイクを作り上げられるのだからバイクって面白い…というか、技術者ってスゴイ!

ショーワ製SFF-BPフォークやニッシン製ラジアルマウントキャリパー、さらにそのパッドなどはホーネットと共通だが、ホース硬度のチューニングで絶妙なブレーキフィーリングを生み出している。撮影車のタイヤはダンロップのロードスマート2だが、試乗した車両のタイヤはブリヂストンのS22だった。
舗装林道が最高! 夢のハンドリングマシン
前置きが長くなってしまって申し訳ない。本題のハンドリングに移ろう。試乗は大小さまざまなワインディングがヨリドリミドリの箱根を中心に行った。ウェットパッチが残り、落ち葉が散乱し路面もツギハギだらけという舗装林道のような長尾峠から、3速4速を使い、スピードが乗る路面のよいワインディング(箱根&芦ノ湖スカイライン)、さらに市街地や高速道路と様々なシチュエーションで乗ることができた。
リッターバイクなのだからスピードが乗るワインディングや高速道路が気持ちいい、というのが相場なのだろうが、実は最初の「荒れた舗装林道」こそが日本でのツーリング先で最も出会いやすいシチュエーションであり、こういったトリッキーな場面を怖がらずに満喫できるかどうかがそのバイクの真のフトコロを知る基準だと筆者は思っている。そして兄貴のホーネットはこういった場面が、極端なほどのダイレクトさゆえに若干ニガテなのに対し、かつてのCB1300SFのような大らかなビッグネイキッド系は特に苦にしない。果たしてCB1000Fはどうだろう。
結果、CB1000Fはこういったシチュエーションこそが最も光ったのだった! 2速3速、そして時には1速も使うようなタイトな長尾峠を、左右にジムカーナ的に振り回してグイグイと走るのが気持ちの良いこと! 連続するコーナーをピピピーッとこなすときにはワイドかつ大きくアップしたハンドルの逆操舵でペタペタとイケるし、短い直線からブレーキング&シフトダウンしながらバンクしていくときはステップに荷重してペタコン!と寝かせていける。その時にストファイ系にありがちなヘッド周りの硬質さのようなものがまったくなく、極端に言えば「クニャックニャッ」としなやかに柔らかく振り回せるのだ。これでフレームやフォークがホーネットと共通というのだから不思議なものである。
ライダーの着座位置はホーネット比で38.5mm後方という数値以上に後ろに感じられ、積極的に走らせ始めると後輪のトラクション感やフィーリングがとてもよくわかる。対するフロント周りは遠くに感じるのだが、だからこそ絶対的グリップを気にすることなく、前方で泳がせておけばいいという感覚。路面が荒くても濡れていてもフロントがスッポ抜けることはまずないな、という絶大なる安心感があり、それはまるでフロントが19インチのアドベンチャーバイクかのようなのだ。
路面の状況が良ければホーネットの方が絶対性能や限界性能は高いのだろう。しかし車体やサスがしなやかなCB1000Fは限界こそ低いのかもしれないが、その差を埋めて余りあるほどライダー側の余裕は大きいため、荒れた舗装林道のような場面にめっぽう強い。
もう一つ、こういったシチュエーションで光ったのはブレーキだ。キャリパーもパッドもマスターシリンダーもホーネットと共通なのだが、唯一ブレーキホースのゴムの材質を柔らかく変更し、レバーへのフィーリングにより余裕を持たせているという。ブレーキの好印象はこれだけに由来するものではなく大アップハンによる姿勢の変化やアイポイントの変化による心理的余裕なども絡んでいるとは思うが、それにしてもブレーキフィーリングは最高の最高、極上だった。
舗装林道は路面の継ぎ目や落ち葉など、フロントブレーキを積極的に使うには難しい状況。特にABSが搭載されている近年のバイクはふいにABSが介入すると逆に止まれなかったりということだってある(ちなみにCB1000Fは6軸IMUを搭載し、コーナリングABSを備える)。そんな中でCB1000Fは前輪のグリップ感が本当に手に取るように分かるブレーキだったし、ゆえにABSが介入することもなく常に効果的な減速が可能だった。しっかり減速できることはスポーツライディングをする上で最もといってもいいほど大切なこと。このブレーキ性能を引き出せるフォークのセッティングと合わせて、CB1000Fのブレーキは特に絶賛したい。
試乗後に「舗装林道最高ですね!!」と開発者に申し上げたら、まさにそういったシチュエーションを想定したセッティングにこだわったそう。当初は長野県のビーナスラインなど、もっと速度が乗る緩いコーナーが連続する場所での試乗会も検討したそうだが、舗装林道的なシチュエーションもある箱根にしたのはそういう意図もあったとか。その意図に応えるような素晴らしいパフォーマンスを見せたCB1000F、まさに「舗装林道国際A級」である。
現時点でCB1000Fの海外展開は未定ながら「海外市場にもアピールしていけるように作っている」とのことだった。欧州やイギリスでは国道に相当するAロード、県道に相当するBロードというものがあるが、「Bロードを楽しむ」という文化もある。これが日本の舗装林道的なシチュエーションなのだから、やはりCB1000Fは「国内A級」ではなく「国際A級」のポテンシャルを持っていると思う。
1300からマイナス50kg! 軽さという新しい価値
舗装林道的な長尾峠があまりに楽しくてすっかり惚れ込んでしまったCB1000F。お次は中速ワインディングの箱根&芦ノ湖スカイラインへと進む。速度域は一気に上がりリッターバイクらしい走りとなる場面だ。
速度が乗ってきて気づくのは圧倒的な軽さ。舗装林道ではCB1300SFのように重たくてもそれはそれで楽しめるが、速度が乗る場面だとブレーキングが厳しくなってくることも多い。対するCB1000Fはなにせ軽い。CB1300SFより50㎏程も軽いのだから、タンデムライダーを一人おろしたようなものだ。
速度が乗ったところからギューンとブレーキングした時に予想よりも数段短い距離で減速できてしまうのは先述したブレーキ性能による部分もあるが、何よりも軽さが効いていて、その減速感は兄貴のホーネットと同じレベル。車体を左右に翻す時にも軽さが活きているとは感じるが、やっぱり軽さが最も光るのはブレーキング時であり、これはCB1300SFにはなかった新たな魅力だ。
舗装林道ではあれだけヒラヒラと軽かったハンドリングは、速度域があがっても好印象が続いた。ホーネットのようにフロントに乗ってグリグリとコーナーを切り取っていくような積極性は特に求められず、リーンウィズでも十分スイスイと走れてしまう。そしてちょっと尻をズラしてその気で走ろうと思った時も、ホーネットのように前方にグイッと体を入れるというイメージではなく、むしろ真横、ややもすればちょっと後方に腰を「落とす」という感覚で後輪のトラクションを捉えて乗れば、前後輪がビシッと揃ってオンザレールで駆け抜けられる。これがまためっぽう気持ちがいいのである!
CB1300SFのようなビッグネイキッドの余裕もあるし、遠くにある前輪はひい爺さんCB750Fの血筋も感じるし、軽さは完全に次世代ホーネット的だし「あぁ、CBの血筋がここに集まってきている!」と感動を覚えるほどだ。ちなみにワインディングを散々走った後にタイヤを見てみたら、リアはしっかりと端っこまで使っているのに対し、フロントはかなり余っていた(ホーネットだとフロントももっと使う)。後輪を軸に走らせるということが、あらゆる場面での安心感につながっているのだろう。
高速道路では「パワーなりのチカラ」
ホーネットの152ps(SPは158ps)に対して、CB1000Fは124ps。ワインディングでの動力性能は十分以上でこの数値を意識することはなかったが、高速道路となるとその違いにも気づく。
リッターバイクなのだから当然速い。1~3速はホーネットよりもローレシオ化されていることで加速は鋭く、合流車線から本線へと出ていくのに何の苦もない。試乗車にはオプションのクイックシフターが装備されていて、クラッチいらずでテキパキとシフトチェンジできる。しかもクイックシフターは反応を3段階に設定可能。「ソフト」とすれば軽い入力で確実なシフトチェンジが約束されていた。
4~6速はファイナルがロングに振ってあるため結果的にハイギアード化され巡航性能を追求。法規を遵守しながら走る分には、動力的には十分すぎる。ただ少々気になったのはトップギア6速で90km/h付近から微振動があること。腿の内側、ステップ周りにバイブレーションが伝わってくる。
ネイキッドスタイルで大アップハンなのだから防風性はそれなりだ。速度域が高まってくると上半身が帆のようになってきてしまい、加えてタンクやカバー類が滑るためニーグリップがしにくく、体がどんどん車体の後ろの方に押し流されてしまうイメージ。それゆえフロント荷重が心もとなくなってしまい「これ以上はやめておこう」と思うことに。
飛ばし屋さんは純正アクセサリーで用意されている、滑り止めのタンクサイドステッカー(8910円)を張るなどして、しっかり下半身をホールドできるような工夫が必要かもしれない。なお、賛否分かれている四角メーター周りの空力はかなり力を入れて取り組んだそうで、ライダーへの風のあたり方はもちろん、速度域があがった時のハンドリングへの影響も徹底的に作り込んであるそうだ。
せっかくのリッターバイクなのだから、追い越し加速を想定して各ギアでの加速も試してみる。高速道路ではホーネットよりもロングレシオとなる4速以上を使うことになり、パワーが抑えられていることもあって、瞬発力ではホーネットには及ばない。逆に言えばホーネットのように高速域でも続くアグレッシブさはなく、速度が高まるほどにマイルドに付き合いやすくなっていくとも言えるだろう。

その他、積載系アイテムやコンフォートシート、単品装着可能なビキニカウル、そしてセンタースタンドなど、オプションは非常に豊富(詳細はこちら)。さらに拡充の計画もあり、セパハンなどのハードパーツもあるとかないとか?!
パワー感に対する感想を求められたときに「えーと…パワーなりのチカラですね」とどこかの政治家のような返事をしてしまったのだが、まさにその通り、高速道路ではスペック上のパワーと実際の力感はリンクしていると感じた。もちろん、このパワーで足りないと思うことはまずないだろう。
ストリートではロングレシオ化されたギア比と、発生回転数を低く設定したトルクの絶妙な関係性に気づく。信号からの発進や追い越し加速といった場面では軽さと機動力が光り、CB1300SF以上の瞬発力を感じられるのだが、片側2車線以上の流れの速い幹線道路では6速固定で「ズビューッ!ズビューッ!」と走れる余裕もあり、そのワイドバンドさやラクチンさはまさに余裕たっぷりのビッグネイキッドの世界。
3000rpmあたりからでもアクセル一つでビューゥン!と四輪を置き去りにできる感覚はCB1300よりも300㏄も少ないとは思えない機動力で、太らせた常用域トルクとワイドなギアレシオ、そして車体の軽さが本当に上手にリンクしてビッグネイキッド的余裕や落ち着きを発揮してくれるのだ。細かなワインディングであれだけ夢中になれたのに、ツーリングペースではこんなに余裕を持たせてくれる特性には本当に惚れ惚れし、ワインディングやツーリングだけでなくストリートでも楽しめる万能性が確認できた。
確かな性能と強めの個性が共存するエンジン
完全に手放しで絶賛してきたハンドリングやブレーキ性能、そしてあらゆる場面で安心感を持って接することができる汎用性に対して、エンジンは個性強めな部分があった。
基本的にホーネットをベースにしているということは、CBR1000RR直系のエンジンである。ポテンシャルとしては190psオーバー、完全なるスーパースポーツユニットだ。3つのライディングモードを備えるあたりもモダンで、「スタンダード」モードに対してピックアップがシャープでスポーティな「スポーツ」と逆にマイルドな「レイン」、加えて自分の好みで設定できる「ユーザー」モードも2つプリセットすることができる。各モード共に最高出力は同じで、あくまで肌触りが違うというものであり、3つのモードに大差は感じられなかった。

ライディングモードは上のような3モード+2ユーザーモード。ちなみに出力特性が変化するPモードは、最もスポーティな3でもおとなしい1でもスロットル開け始めの反応はほぼ一緒。その先のグリップ開度に対するスロットルの開き方が異なるが、全開時の出力は1〜3全て同じだという。
そんなCBR由来のモダンなユニットをベースにネイキッドモデルに合わせて作り込むにあたり、吸気を絞って流速を上げたり、排気をイジッて個性を演出したりして常用域でのトルクフルさや扱いやすさを追求するのが一般的。同時に各メーカーやアイコンとするモデルを意識したキャラクターを作り込んでいくというのがネイキッドやネオレトロの作法だろう。
CB1000Fもまたこれに倣い、吸気ファンネル長をホーネットの90㎜から120㎜に長くするなどで6000rpm以下でのトルク感とスロットルレスポンスを向上。さらにファンネルの入り口径も左右2気筒ごとにそれぞれφ50㎜、φ40㎜と個別に設定するなどして独特の吸気サウンドを追求している。低回転域からしっかりとトルクが出る特性とローレシオ化された1~3速ギアは最初に書いた舗装林道性能追求において非常に有効で、スーパースポーツベースとは思えない、見事なネイキッドエンジンへと変貌している。

ホーネット比で吸気ファンネルをロング化したうえ、最小径も42mm→36mmへと縮小して6000rpm以下のレスポンスとトルク感を向上。さらに本文にあるように、入り口径も右側2気筒と左側2気筒で異径として鼓動感のある吸気音を演出。エアクリーナーボックス上面はスムージングされ、容量確保&吸気抵抗低減が図られている。
この特性はホーネット(CBR)の血筋と、CB1300SFの血筋の見事な融合だと感じた。非常に使いやすくフレキシブルなエンジン特性であり、街乗りからあらゆる速度域のワインディング、そして高速道路までとてもよくバランスされていると思うし多くのライダーも同じように感じるだろう。
またスロットルボディやエキパイの口径をホーネットと共通にすることや、燃料をレギュラーとせずホーネットと同じハイオク指定にすることで、ホーネットのエンジンを「ネイキッド用に低速低回転域に振った」のではなく、「ホーネットやCBRのポテンシャルはしっかりと維持したまま、ネイキッド用に低速低回転域にも性能を伸ばした」と開発陣は熱弁してくれ、そんな性能を確かに感じることができた。
一方で「それだけでは“パワーダウンしたホーネット”との印象を受ける場面もあるかもしれない…」というジレンマ、懸念から、開発陣はCB1000Fのエンジンに2つの個性を与えている。
①叔父さん「CB1100」の血筋
CB1000FはCBRに由来する超高性能エンジンだからこそ、フィーリングの部分で味を出すのが難しかったそう。そこで取り入れたのが、CB1100が採用していた気筒ごとにバルブタイミングをずらすカムシャフトだ。1、2番気筒と3、4番気筒でバルブの開閉タイミングをずらすことで、CB750フォアのようなバラバラッとした雑味が生まれた、あのCB1100のフィーリングを覚えている人も多いだろう。CB1100ではこの「位相カムシャフト(という正式名称があるわけではないが仮にそう呼ぶ)」を吸気カム側だけに採用していたが、水冷の高性能エンジンベースであるCB1000Fでは排気側にもこれを採用してフィーリングや音を追求した。

カムシャフトは吸気/排気ともに、3、4番気筒のバルブ開き始め/閉じ終わりを遅らせ、ややバラつき感のあるフィーリングに貢献。スーパースポーツ由来のエンジンの雰囲気がここまで旧車風になるのか! と驚かされる。CB1000Fエンジンの個性の源だ。
これによりアイドリングから排気音は「フォーン!」というものではなく「ゴリゴリッ」あるいは「バラバラッ!」といったもので、どこかモトGPマシン的なテイストも含まれ、トルク感あふれるサウンドとなっている。これはアクセルを開けていっても同様で、高回転域でも一般的な直4のように「カコーォォン‼」とはフケず「ガロローゥ!」とどこかアメ車テイストな豪快さを持つ。そう、すべての回転域でこの雑味が楽しみ続けられるのだ。
このテイストが与えられたのは、公道での様々なシーンで楽しさやライディングフィール、そして個性的な吸排気音を追求するため。ちなみにこの位相カムシャフト採用による性能の変化は、ごくわずかにパワーが落ちる場面もあるがほとんど影響はなく、そして燃費には影響なしとのこと。基本的に音とフィーリングを演出するというのが主眼である。

マフラーは3室構造で、位相カムで得られたパルス感を活かしつつ、高回転時は直4らしいサウンドを追求。隔壁や内部パイプの構成はもちろん、開けられた穴のサイズや位置など、細部に至るまでチューニングされている。
②キャブ車のような「タメ」
もう一つ与えられている個性は、アクセル開け始めの「タメ」である。この「タメ」が非常に難しい。車体ではエンジンの締結ボルトの強度を落としたという話があったが、あれもまた車体の「タメ」を演出するためだった。
エンジンの方の「タメ」は「キャブ車のような」と表現されるが、まぁキャブ車といっても様々な年式の車両があり、インジェクション化される直前、2000年前後の熟成されたキャブ車に「タメ」があったかどうかは筆者としては疑問に思うところ。ゆえに「キャブ車のような」とは言いたくはない。要はストリートファイター的なビンビンな反応ではなく、もっと余裕を持たせたアクセルの開け口ということだ。
CB1000Fではここにこだわりを持って開発。電子制御スロットルの設定を、右手の入力に対してやや遅れてスロットルボディのバタフライが開き始め、点火時期もわざと遅角させることでぼやかしている。これによりグモモモッとしたファジーな領域が生まれ、その「間」を経てから回転上昇が始まるのだ。この「間」は例えば停車している状態からの発進では長めで、パーシャルでクルージングしている状態から開け増すような場面では短め。さらにアクセルを大きく開けた場面では明確な加速の意思があるとみなしてさらに短く設定するなど、車速やアクセル開度など多くのセンサーから得た情報をもとに「間」の長さがバリアブルに変化する。
この設定がネオレトロモデルらしい「タメ」の演出なのだが、一方で開発陣も言っていたが、「タメ」が長すぎると「ダル」に感じてしまうという難しさもある。この「間」の設定は確かに個性ではある。特にのんびり走りたい人やビギナーにとっては適度な「間」あるいは「ダル」な反応があった方が安心という向きもあるだろう。一方で元気に走りたい人や上級者は積極的にアクセルを大きく開けて、この「間」をなるべく短くした方が楽しみやすいかもしれない。筆者としてはせっかく3つのパワーモードがあるのだから、例えばスポーツモードだけでは「間」を最小限とした、CB1300SFのような極スムーズで素直な設定にしてもよかったのでは? とは思った。
いずれにせよ、この開け口の「間」と、先ほどの位相カムシャフトのバラバラッとした雑味が複雑に絡み合い、叔父さんCB1100のフィーリングも強く感じさせてくれるのが印象的。CB1300SFとはずいぶん違った印象とはなるが、ホンダはこれを同社スポーツバイクラインナップの「進化する基準」であるCB(開発陣は“CB=Creative Benchmark”と解釈しているという)に対する最新の回答としている。

「進化する基準」の一例がスマホ連動機能を持つカラー液晶メーター。視認性良好でナビも表示できる先進性に万歳。アナログ二眼メーターにこだわる向きもあるが、ホルダーでスマホを後付けするぐらいなら、この四角メーターの方がスマートでいいのではないか。どうしてもイヤならメーターが隠れるSEを選ぶのも手。

左側スイッチはホーンとウインカースイッチの位置関係が他社と逆。今だに慣れず、今回も間違えてホーンを数回鳴らしてしまった。ホンダ内でも問題提起されているそうなので、筆者のように苦手な人は声を上げてください!

大型バイクでシングルホーンだと何だか残念だが、このダブルホーンの音色は本当に素晴らしく、気持ちがいいし高級感あるし、何より安全。CB-Fファンはホーンにメッキリングが欲しいと思うだろうが、そうするとホーンの存在感が大きくなりすぎ、全体のバランスが崩れるとデザイナーさんの弁。ホーン間の小さな部品はCB-Fのイメージで作り上げたパーツ。

LEDヘッドライトは数値上の光量に対して(特に雨天時などは)明るく感じられないこともあるが、CB1000Fはそれを払拭すべく徹底的に明るさを追求。ヘッドライトハウジングが大きめなのは大きなヒートシンクを収めるためなのだ。今回は試せなかったが、夜間走行でその実力を試してみたい。

ソフトタッチ表皮&ソフトウレタンを採用しつつ、ウレタン厚みも約33mmアップしたオプションのコンフォートシートは3万9710円。座り心地は上々で、タンデム部(こちらにもパターンが入る)もクッション豊富でツーリング派にはかなり嬉しい。ただしノーマルのシートも座面たっぷりで大変快適。シート高はホーネットの809㎜に対し795㎜だが、アップハンとの関係もあり数値以上にシートおよび重心位置は低く感じられ、安心感につながっている。

STDより19万8000円高(159万5000円)のCB1000F SE。一見高く見えるが、特別装備品(カウル、グリップヒーター、シフター、ラジエーターガード)をSTDにオプション装着すると合計17万9850円で、SEにはオプション設定のない専用カラーステッチシートが付くことを踏まえれば妥当な価格。カウルは空力もかなり力を入れたそうで、高速移動が多い人はこちらがいいかも。
ネオレトロの先にある「クリエイティブ・ベンチマーク」
筆者は今回、2日間にわたってこのCB1000Fに乗り込むことができた。初日は晴天の中のワインディングが中心、二日目は冷たい雨の中でのストリートが中心だったのだが、いずれのシチュエーションでも良きスタンダードとしての新生CBを感じることができた。
特に初日の細かなワインディングでの無双さにはまさに感動し、2日目は幹線道路での貫禄に惚れ込んだ。どんな場面でも特に印象に残るのは「軽さ」。ビッグネイキッドの万能性は大好きなのだが、そんなビッグネイキッドの良さをそのままに軽さを手に入れたCB1000Fは大変に魅力的。走りもいいし、何より取り回しが格段に楽なのだから、ガレージから出してきていざ乗ろう!というハードルが下がってオーナーは乗る機会が増えることだろう。
そして先ほどのエンジンの2つの個性。意図的に「間」を作り出すという手法は、ライダー入力に対して素直な反応を好む筆者個人的には特別感じ入ることはなかったのだが、位相カムシャフト採用については、ホンダならではのチャレンジ精神を見た気がした。
「ただのパワーダウンしたホーネットにはしたくなかった」という技術者。きっとこの位相カムシャフトを使わなくても、潤沢なトルクで素晴らしいネイキッド向けのエンジンを作り上げることは容易だったはずなのに、それでは良しとせずその先を追求するのがホンダらしく、今やスタンダードとなった「ネオレトロ」の一歩先を模索してくれていると感じる。
こんなことをやってのけるホンダなのだから、今後は同爆のカムシャフトなんていうのも出てくるかもしれないし、逆にホーネットのカムシャフトを使ってモアパワーとよりスムーズな「正統派直4」としたバージョンもあり得るかもしれない。性能一辺倒の時代ではないからこそ、確かな技術に支えられた面白い着眼点がさらに出てくるのではないか、などと期待させてくれた。
CB1000Fが、CB1300SFが担ってきたフラッグシップとしてのCBの立ち位置、「進化する基準」としての立ち位置に落ち着くかどうかはわからない。筆者としてはそのポジションを務めるには少々個性が強すぎるような気もする。一方で世間の反応は上々で受注状況は好調、年間販売目標の5000台に対し、すでに1600台の成約を受けているという。
開発陣も30代後半が多いが、予約している人もその年齢層が一定数いるというのだから、ひい爺さんCB750Fを直接知らない世代からも受け入れられているということだ。スーパーフォアブランドが30年で築き上げてきたものが、CB1000Fという次世代へと引き継がれていくのをまずは歓迎し、見守りたい。
ホンダCB1000F・主要諸元 ([ ]内はSE)
- 全長×全幅×全高:2135mm×835mm×1125mm [1170mm]
- ホイールベース:1455mm
- シート高:795mm
- 車重:214kg[217kg]
- エンジン:水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ
- 排気量:999cc
- 最高出力:124PS(91kW)/9000rpm
- 最大トルク:10.5kg-m(103Nm)/8000rpm
- 燃料タンク容量:16L
- 変速機:6段リターン
- ブレーキ:F=Wディスク R=ディスク
- タイヤ:F=120/70ZR17 R=180/55ZR17
- キャスター/トレール:25°00′/98mm
- 価格:139万9700円[159万5000円]
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欲しい…しかし、今の愛車であるCB750F(RC04)にそれなりにカスタム費用をつぎ込んだ。なので、手放すという選択に悩む。でも昭和人間だから、キャブ車のほうが合ってるかもねー