「クロスプレーン・コンセプト=CP」に基づいた直列3気筒888ccエンジン「CP3」を搭載し、「意のままに操れる悦び」をテーマとして開発されたヤマハのネイキッドスポーツモデル「MT-09」。その「MT-09」の前後サスペンション、フロントブレーキをアップグレードして、サーキット走行に便利な機能も搭載した充実装備のモデルが「MT-09SP」だ。

文:小川浩康 写真:関野 温

KYB製フロントサス、オーリンズ製リヤサス、ブレンボ製フロントキャリパーを標準装備

「MT-09」をベースに、KYB製フロントサスペンション、オーリンズ製リヤサスペンション、ブレンボ製フロントブレーキキャリパーなどを標準装備している「MT-09SP」。カラーは画像のブルーイッシュホワイトメタリック2のみとなる。

ヤマハの「クロスプレーン・コンセプト」は、燃焼室で生み出される燃焼トルクを効率よく引き出すことを狙ったエンジン開発コンセプト。その「クロスプレーン・コンセプト」に基づいた直列3気筒エンジン「CP3」(初登場時は846cc)を搭載し、2014年に国内発売されたネイキッドスポーツが「MT-09」だ。

2016年にトラクションコントロールを搭載、2017年にはマイナーチェンジを行ない、アシスト&スリッパークラッチ、クイックシフトシステム、フロントサスの圧側減衰調整などを装備した。翌2018年に「MT-09」の装備をより充実させた「MT-09SP」が初登場。減衰力調整付きKYB製フロントサスペンション、バネレートと減衰力を最適化したオーリンズ製リヤサスペンション、塗り分け塗装フューエルタンク、ダブルステッチシートなどを標準装備した。

2021年には初のフルモデルチェンジ。エンジンは新設計で排気量を888ccにアップし、フレームも新設計のアルミダイキャスト製を採用して約4kgの軽量化。車体姿勢などを検知する「IMU=Inertial Measurement Unit」は新開発で、より自然なマシン制御に貢献している。「MT-09SP」はフロントサスのインナーチューブに「DLCコーティング」が施され、ストロークがよりスムーズになった。

2024年にサスセッティング、タンク形状を変更してライディングポジションを改善。エンジン特性を変更できる「YRC(Yamaha Ride Control)」、クルーズコントロール、5インチフルカラーTFTメーターなど装備を充実。「MT-09SP」は前後サスペンションのバネレートと減衰力特性を見直してリセッティング。フロントブレーキにはブレンボ製「Stylema」モノブロックキャリパーを装備。メーターにはサーキット走行向け表示モードが追加され、「YRC」の制御メニューには「EBM(Engine Brake Management)」と、リヤABSのOFF機能が追加された。「MT-09SP」はベースモデル「MT-09」の市街地走行での扱いやすさを損なうことなく、エンジン特性と前後サスペンションのセッティング幅が広げられていて、サーキット走行も存分に楽しめる仕上がりとなっているのが大きな特徴だ。ちなみにベースモデル「MT-09」は125万4000円、AT機能を搭載した「MT-09 Y-AMT」が136万4000円、「MT-09SP」が144万1000円で、シリーズ中のハイエンドモデルとなっている。

LEDヘッドランプは小型で厚みがなく、MTシリーズ伝統のマス集中化とショートオーバーハングに貢献している。

上側を赤、下側をスモークとした上下分割レンズを採用したテールランプ。急ブレーキを感知すると前後のハザードが点滅する。

速度、回転計、燃料計などを目視しやすく表示する5インチTFTディスプレイ。白地(昼間)と黒地(夜間)に変更できる。

エンジン回転数を上下方向で表し、スロットルの動きを視覚化した表示テーマも選択可能。機能性重視の表示と同じく、地色を変更可能。

スマホアプリ「Y-Connect」と連携することで、電話着信、メール受信などを表示。スマホ側にはライディングログも残せる。また「Garmin StreetCross」と連携すると、ディスプレイ上でナビゲーション機能が利用できる。

「MT-09SP」独自の機能として、サーキット走行を想定した「TRACKモード」を搭載。TRACK(サーキット)に合わせた各種セッティングを4パターン設定できる。ベースモデルよりもセッティング幅が広がり、サスセッティングと合わせて、ライダーの好みにより細かく合わせ込める。

「YZF-R1」との繋がりを感じさせるシルバーとブラックに塗り分けられたタンクも「MT-09SP」専用。給油口のメッシュ開口部は吸気サウンドをライダーに伝える「AAG=アコースティック・アンプリファイア・グリル」。

積極的にフロント荷重をかけやすく、リーンイン・リーンアウトもしやすい自由度の高いライディングポジションに貢献するシート。クッション性も良好。

シート下にはUSB Type-Cソケットを装備。電熱ウエアや電子機器などへの給電が可能で、街乗りやツーリング時の利便性や快適性を高める。

「MT-09SP」専用装備としてスマートキーシステムを採用し、キーを取り出すことなくエンジン始動ができる。電源ON、ハンドルロック解除、燃料タンクキャップのロック・解除にも対応。

フロントブレーキキャリパーは「MT-09」のキャリパーピストンより大径化しつつ、軽量高剛性を両立したブレンボ製「Stylema」を装備。強力な制動力をスムーズに発揮し、ブレーキコントロール性を向上している。

シフトペダルの動きをセンサーが検知すると、ECU演算により出力を補正。ギヤにかかるトルクを瞬間的にキャンセルし、スムーズなシフト操作を実現する「クイックシフトシステム」を標準装備。加速時のシフトダウン、減速時のシフトアップにも対応。

ブレーキペダルとフットレストはアルミ鍛造、ブラケットはアルミプレス成型のセパレートタイプを採用し、高剛性と軽量化を両立。ステップでのライディングコントロール性の向上に寄与している。

MT-09SPの足着き性をチェック

ライダーは身長172cm、シート高は825mm。ヒザの曲がりに窮屈さがなく、上半身がやや前傾して、自然とフロント荷重しやすいポジションが決まる。

両足を着こうとすると、カカトが少し浮いた状態となる。しかし、ニーグリップ部のタンクがスリムで足を下ろしやすく、重心も高く感じないので足着き性に不安はない。

セッティング幅の広がりが、走り込む楽しさを増している

前後サスの減衰力調整の段階数、エンジン特性と車体挙動についての設定項目が増えている「MT-09SP」。走りの質感が上がるだけではなく、走り込んでセッティングを詰めていくことも存分に楽しめる。

「MT-09シリーズ」のエンジン特性は「YRC」によって、「SPORT/STREET/RAIN」の3モードへ変更できる。さらに、スロットルレスポンスを4段階に変化させる「PWR=パワーデリバリーモード」、後輪の空転を検知すると介入度を3段階+OFFに設定できる「TCS=トラクションコントロールシステム」、後輪の横滑りを検知して出力を3段階補正+OFF設定できる「SCS=スライドコントロールシステム」、発進や加速時の前輪の浮き上がりを検知して出力を3段階補正+OFF設定できる「LIF=リフトコントロールシステム」、過剰なエンジンブレーキによる後輪のロックを制御する「BSR=バックスリップレギュレータ」の設定変更が可能で、それぞれの設定は「CUSTOM1/2」の2パターンに保存ができ、エンジン特性は計5モードから選択できる。

さらに「MT-09SP」専用装備として、サーキット走行を想定した「TRACKモード」を搭載。先述の設定項目に加えて、クイックシフト上下方向のON/OFF設定ができる「QSS=クイックシフトシステム」、車体がバンクしている途中の横滑りを検知するとブレーキ圧力を制御する「BC=ブレーキコントロール」、スロットルオフやシフトダウン時のエンジンブレーキの強さを制御する「EBM=エンジンブレーキマネージメント」、「ABSリヤOFF」と全9項目の設定が可能となっている。また「TRACKモード」はそうした設定変更を「TRACK1/2/3/4」の4パターンに保存できる。

さらに、フロントサスペンションの減衰力調整は、「MT-09」の伸び側11段→「MT-09SP」26段、圧側11段→低速18段・高速5.5段と大幅に増え、「MT-09」は右が伸び側・左が圧側のセパレートファンクションに対し、「MT-09SP」は左右それぞれで伸び側・圧側の減衰力調整が可能となっている。またリヤサスペンションの減衰力調整は、「MT-09」の伸び側2.5回転→「MT-09SP」伸び側30段、圧側調整なし→20段、プリロード量は6mm→8mmとなっている。「MT-09SP」のオーリンズ製リヤサスペンションの設定変更は工具不要で行なえる。

「MT-09SP」はエンジンとサスペンションの特性をきめ細かく設定でき、ライダーの好みに合わせた乗り味により近づけられるのが大きな特徴となっている。これだけセッティング幅が広いと、ベストセッティングを探るのには時間を要するだろう。その半面、「MT-09SP」はベースモデル以上に乗り込む楽しさがあるとも言え、セッティング変更で乗り味の変化を存分に味わえる。

「TRACKモード」の設定画面。9項目でセッティング変更ができ、計4パターンの設定を保存できる。「MT-09SP」の専用装備だ。

フォーク上部で伸び側26段の減衰力調整が行なえる。質感の高いフォークキャップには「MT-09SP」の刻印入り。

快適性も高く、長く連れ添いたいバイクだ

リラックスできるライディングポジションがとりやすく、スムーズな乗り心地もあって街乗りもしやすい。ツーリングでの快適性も高く、オールマイティに使える。

筆者は「XSR900 GP」「MT-09 Y-AMT」「TRACER9 GT+ Y-AMT」の3台の「CP3」搭載モデルに試乗し、各車のライディングポジションや、一般的なMTとヤマハ独自の「Y-AMT」の違いなどで、それぞれの乗り味が異なっていることを体感してきた。けれども、低回転から厚みのあるトルクが立ち上がり、中高回転までスムーズな「CP3」のエンジン特性自体は、各車で大きく変わっていないという印象も抱いている。

今回の試乗車「MT-09SP」のアイドリングは、メーター目視で1200~1300rpm。車体をしっかりと加速させる実用的なトルクは「SPORTモード」が2500rpm~、「STREETモード」が3000rpm~、「RAINモード」が3500rpm~と、それぞれのモードでスロットル開度が異なっている。また、「SPORTモード」はスロットル開けはじめからレスポンスがシャープで、ハイスロットルのような感じで回転上昇もクイック。トルクにも力強さがあり、低回転からドンと押し出されるような加速性能を発揮し、「MT-09SP」の「速さ」をいちばん体感できるモードになっている。
「STREETモード」はレスポンスがシャープ過ぎずダルさもなく、スロットル操作に対して回転上昇もスムーズで加速力が分かりやすい。トルクも厚く、市街地ではストレスのない加速力を発揮し、オールラウンドでニュートラルな扱いやすさがある。
「RAINモード」はレスポンスがマイルドになり、回転上昇もゆっくりとなる。トルクの押し出し感も薄くなり、加速力もマイルドだが、排気量に余裕があるので市街地走行でストレスを感じる遅さはない。マシン挙動も穏やかで、雨天時や状態の悪い路面での走行ではいちばん安心できるモードだ。そうしたスロットル開閉時のトルク変動と、それによるマシン挙動(ギクシャクした挙動)のバランスを考慮すると、これまで試乗した「CP3」搭載モデルでは「STREETモード」がベストに思えた。

しかし、「MT-09SP」では「SPORTモード」を選択することが多かった。状態のいい舗装路ではサスペンションの初期辺りでストロークしている感じが伝わってきつつ、マシンの挙動変化が少ないフラットな乗り心地を実現。荒れた舗装路では衝撃を着実に吸収し、大きめのギャップなどでは多少衝撃が身体に伝わるものの底突きはせず、ストロークの収束も早く感じられた。前後サスペンションはさまざまな路面でフラットなマシン姿勢をキープするセッティングになっていて、スロットルを開閉した際のトルク変動にもしっかり対応し、ギクシャクしたマシン挙動がほぼ感じられなかった。「SPORTモード」の圧倒的な加速力でもフラットな乗り心地を両立している「MT-09SP」は、スポーツ性能と快適性能のバランスが「CP3」搭載モデルの中で頭一つ抜けているように思えた。そしてこのバランスのよさに大きく貢献しているのは、KYB製フロントサスペンションとオーリンズ製リヤサスペンションの作動性(ストロークと衝撃吸収性)だろう。さらにブレンボ製「Stylema」ブレーキキャリパーがその加速力を受け止める制動力を発揮し、その制動力もブレーキレバー操作でダイレクトにコントロールしやすくなっている。

上体が少し前傾するライディングポジションに窮屈さはなく、リラックスした姿勢で軽快なハンドリング操作も行なえる。乗り心地はフラットで、クイックシフトにクルーズコントロールも装備し、街乗りでの利便性とツーリングでの快適性も兼ね備えている。上体をさらに前傾させればフロントにしっかりと荷重することができ、ワインディングやサーキットで狙ったラインをトレースしたスポーツライディングも存分に楽しめる。軽快な取りまわし、利便性、快適性、スポーツ性を高いレベルで併せ持つ「MT-09SP」は、幅広いシーンで走りの楽しさが感じられ、乗り手の要望に応えてくれる懐の深さもある。オールラウンドで扱いやすく、長く付き合える1台だ。

素早い燃焼で高いトルク性能を発揮する「クロスプレーン・コンセプト」に基づいた直列3気筒エンジン。クセはなく、扱いやすさが感じられる特性だ。

スイングアームはバフ掛けされ、クリア塗装を施した専用仕様。足元を引き締め、上位モデルらしいクオリティを表現している。

ヤマハMT-09SP主要諸元

・全長×全幅×全高:2090×820×1145mm
・ホイールベース:1430mm
・車重:194kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列3気筒888cc
・最高出力:120PS/10000rpm
・最大トルク:9.5kgf・m/7000rpm
・燃料タンク容量:14L
・変速機:6速リターン
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=シングルディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=180/55-17
・価格:144万1000円

【画像】足まわりに専用装備を持つ「ヤマハMT-09SP」 (22枚)

この記事にいいねする


コメントを残す

ヤマハ MT-09の価格情報

ヤマハ MT-09

ヤマハ MT-09

新車 183

価格種別

中古車 80

本体

価格帯 110~144.1万円

130.28万円

諸費用

価格帯 7.9~11.95万円

6.84万円

本体価格

諸費用

本体

97.32万円

価格帯 57.2~148.5万円

諸費用

7.16万円

価格帯 5.61~8.95万円


乗り出し価格

価格帯 117.9~156.05万円

137.13万円

新車を探す

乗り出し価格


乗り出し価格

104.49万円

価格帯 66.15~154.11万円

中古車を探す

!価格は全国平均値(税込)です。

新車・中古車を探す