ヤマハはMT-09系の888cc3気筒エンジンを専用アルミフレームに搭載したスーパースポーツ「YZF-R9 ABS」を10月30日に発売する。2024年のミラノショーで発表以来、国内発売が待ち望まれていたモデルで、600ccスーパースポーツのYZF-R6に匹敵する性能を有する本格的なスポーツモデルだ。価格は149万6000円で、ボディカラーは3色を設定。国内の年間販売計画は300台となっている。
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本格スーパースポーツながら快適性も考慮

ヤマハのスーパースポーツファンが待ち焦がれた機種がついに国内発売される。MT-09系の3気筒エンジンを搭載し、今年からはスーパースポーツ世界選手権(WSS)にも参戦を開始しているYZF-R9だ。
フラッグシップであるYZF-R1とフレンドリーなYZF-R7という、2台のスーパースポーツ(以下SS)の間に新たなステップを置くというねらいで企画されたYZF-R9は、車体まわりや電子制御系など、R7よりもかなり本格的なSSスペックを持つのが特徴。
その戦闘力は非常に高く、ヤマハの公式資料では「ミドル最強のトラックパフォーマンス」とまで謳われている。開発者によれば600ccSSのYZF-R6よりも扱いやすく性能を引き出しやすいため、中級レベルのライダーならばむしろR6よりも速いラップタイムを刻めるという(開発責任者はヤマハMotoGPマシンのプロジェクトリーダーも務めた人物)。
とはいえR6のようなカリカリのSSではなく、着座位置を前方としてハンドルを近めとし、ステップもやや低めとするなど、そのライポジは快適性も考慮したもの。本格的なSSに憧れつつも、ツーリングなど様々な用途に使いたいユーザーをターゲットとする点もR9の特徴だ。
エンジンを補完する新設計フレーム
エンジンはECUセッティングこそ専用化されるものの、120psの最高出力はMT-09と共通。ミドルSSとしても不足のないパワーであり、 ならば専用チューニングは施さずコストを優先するという判断だが、あくまでもストリートスポーツである09のエンジンは前後長が長く、伴ってホイールベースも長くなりがち。SSに最適とは言い難い。
そのネガを補うべく新設計されたのがR9専用のアルミデルタボックスフレーム。MT-09系よりもキャスターを2度も立てるなど、よりスポーティなディメンションを採用し、さらに部分的には大胆に剛性を抜く(ヘッドパイプ直後の大穴などに注目)など、MotoGPマシンにも近い最新の剛性理論を投入。内部を中空構造にできる重力鋳造を採用することで、単体重量はヤマハの歴代SS最軽量となる9.7kgを実現している。

MT-09のアルミダイキャストフレームに対し、剛性はねじり18%、縦37%、横16%アップ。シートレールやスイングアームはMT-09と基本的に共通だが、後者はエンドピースを延長して後輪の固定位置を後ろに下げ、前輪荷重の増加に貢献している。
この車体に装着される足回りは前後ともKYB製で、左右に伸/圧の減衰力発生機構を振り分けたフロントフォークはYZF-R1と共通、リヤはKYBが特許を持つ、極低速域での減衰力発生機構を投入した新作だ。ともに低速/高速の圧側減衰力調整を持つ2WAYタイプで、リヤショックは車高調整機構まで装備。
ちなみにホイールは近年のヤマハが推すスピンフォージドホイールではなく、YZF-R6と共通という鋳造5本スポーク。これは09系よりもスピード領域が高くなるR9には、より剛性の高いホイールが必要という判断によるものだ。
ビルトインウイング&ヤマハ最良の空力性能
もうひとつ、R9を語るのに欠かせないのが空力性能。風洞実験を繰り返すことでヤマハSS史上最良のCD・A値(空気抵抗係数✕全面投影面積の数値)を達成しており、抵抗となるウイングレットを装備しながらもYZF-R1やR6を上回る空力性能を実現している。
そのウイングレットは“ポン付け”な2025年型R1とは異なるビルトインタイプで、これは開発当初から設計要件に織り込まれていたからこそのデザイン。ストリートの速度域では横風の影響などを考慮してあまり効かさず、150km/hを超すレーシングスピード領域でダウンフォースが効き始める設定。
また、カウルサイドに排熱用の大きな穴を開けていないのは、ラジエターの熱気を直接ライダーに当てないため。先述したとおり快適性にも配慮されているのだ。
電子制御に関してはMT-09系を踏襲。ライディングモードはプリセットが3種に、カスタムモードを2つ設定。トラコンやパワーモード、スライド&リフトコントロール、クイックシフター、ローンチコントロール、エンジンブレーキマネージメント、ブレーキコントロール、バックスリップレギュレーター、リヤABSオフなどが設定可能だ。
さらに無料アプリの「Y-TRAC Rev(10/14リリース予定」をスマホにダウンロードすると、ラップタイム表示やピットからの指示をメーターに表示可能なバーチャルピットボードが利用可能となり、車体のCANデータに基づく走行データもスマホやタブレットで確認できる。
価格やスペックはナイスな落とし所?
YZF-R9概要を説明したところで、発表された価格をMT-09系の各車と比較してみよう。
- MT-09(STD)=125万4000円
- XSR900=132万円〜135万3000円
- XSR900 GP=143万円
- MT-09 SP=144万1000円
- YZF-R9=149万6000円
オーリンズ装備のSPより5.5万円高く、ギリギリ140万円台という価格設定は、豪華装備のトレーサー系を除けば09系の最高価格。フルカウルを装備し、さらにフレームは新規開発。しかもその製法に09系のダイキャストより生産性に劣り(=製造に時間が掛かる)、コスト高となる重力鋳造を採用した割には抑えられている…と見るべきか。
次に国産他メーカーのミドルSSとも比較してみよう。
- ホンダCBR600RR=157万3000円〜(599cc/121ps/車重193kg/軸距1370mm)
- ヤマハYZF-R9=149万6000円(888cc/120ps/車重195kg/軸距1420mm)
- カワサキZX-6R=159万5000円(636cc/122ps/車重199kg/軸距1400mm)
排気量こそ3車3様ながら、出力/車重に大差がないのが興味深い。ただしR9が最高出力を10000rpmで発生するのに対し、CBRは14250rpm、ZX-6Rは13000rpmとかなり高回転型。さらに最大トルクもCBRの6.4kg-m/11500rpm、ZX-6Rの7.0kg-m/11000rpmに対し、R9は9.5kg-mを7000rpmで発生する。高回転でパワーを発揮するCBRに対し、豊かな低中速トルクが武器のR9、CBR寄りながら中間的な立ち位置の6Rという図式が成り立ちそうだ。
ただし、価格面ではR9に約10万円のアドバンテージがある。これはエンジンを専用設計ではなく、量産スポーツのMT-09と共用化した効果だろう。気になるのは年間販売目標が300台と少ないこと。確実に入手したいのなら、あまり迷っている時間はなさそうだ。
YZF-R9・カラーバリエーション
カラーリングは3色を展開。ヤマハワークスカラーのブルーに定番のマットダークグレー、そして初代YZF-R1の白×赤カラーをイメージしたというホワイトとなる。
YZF-R9・主要諸元
・全長×全幅×全高:2070×705×1180mm
・ホイールベース:1420mm
・シート高:830mm
・車重:195kg
・エンジン:水冷4ストローク並列3気筒 DOHC4バルブ 888cc
・最高出力:120PS(88kW)/10000rpm
・最大トルク:9.5kg-m(93Nm)/7000rpm
・燃料タンク容量:14L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17 R=180/55ZR17
・キャスター/トレール:22°35′/94mm
・価格:149万6000円
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300台ってやる気ねーな
あなたが、何台買うかで変わります。