伝説のチャンピオンがホンダCB1000Fに一番乗り! 10/5にホンダ熊本製作所で開催された「ホンダホームカミング2025」にスペシャルゲストとして来日したフレディ・スペンサー氏が、その前日に隣接するHSR九州でCB1000Fをテストライド。その印象をメディアに語った!
⚫︎写真:ホンダ/編集部
ファスト・フレディ、令和の「エフ」を駆る!
1983年と1985年(こちらは250とのダブルタイトル)の世界GP500ccクラスのチャンピオンであるフレディ・スペンサー氏。GP参戦前の1982年にはアメリカのデイトナ100マイルレースでCB750F改を駆り、見事優勝を飾るなど、ホンダCBとの深い縁もよく知られている。
1985年のGPダブルタイトルから40周年、そしてCB750Fの再来と言えるCB1000Fの発売を控え、ホンダは熊本製作所で開催している「ホンダ ホームカミング」のスペシャルゲストとしてスペンサー氏を招待。10月5日の同イベントにはフレディファンが大集結し、氏の変わらぬ人気を印象付けるとともに大きな盛り上がりを見せた(イベントの様子は追ってレポートする)。
そのスペンサー氏はイベントの前日、熊本製作所に隣接するサーキット・HSR九州で正式発表前のCB1000Fのテストライドも行った。今年63歳になる氏は先導付きでまずは3周、その後は単独で3周し、後半はかなりペースアップしながら感触をじっくり確かめ、さらにその印象をメディアに語ってくれた。
大きなバイクでは出すのが難しい「軽さ」がある
Q:まずはCB1000Fに初めて乗った感想を教えてください。
フレディ・スペンサー(以下FS):とにかく、すごく良かった。バイクに乗っている感覚がすごく気持ちいいんだ。僕はHRCなどで何年もバイクのテストライディングをしてきたけど、必ず意識していることが3つある。それはフィーリングとアジリティ、そしてスタビリティなんだけど、(その経験からすると)大きなバイクで軽さを出すのはすごく難しい。けれど、このバイクからはその「軽さ」がすごく伝わってくるんだ。
僕は今までに乗った全てのバイクのデータが頭の中にある。1982年のデイトナで勝った、ゼッケン19番のCB750Fもね。全てのバイクの記憶があるからこそ、どんなバイクでも乗った時にその差や違いが感覚で分かる。今回は残念ながらたくさんラップはできなかったけど、CB1000Fの軽さっていうのはすごく感じたよ。ベリーライトだね。ヘルメットで見えなかっただろうけど、すごくニコニコしながら走ってたんだ。
Q:このCB1000Fは、貴方がデイトナで優勝したゼッケン19番のCB750Fを現代に蘇らせたバイクと言われています。
FS:本当にそうだと思う。ゼッケン19番は僕にとって最も美しいスーパーバイクだけれど、最初にCB1000Fを見た時に、昔ながらのレトロなバイクと、現代との最高のコラボレーションだと感じたよ。
あのゼッケン19番は当時では考えられないぐらいの、本当に当時のGPマシンぐらいのパワーがあった。1960年代のシボレー・カマロやポンティアックGTOといった、僕の父親世代のアメリカンマッスルカーを彷彿させるくらいにね。そんなすごいバイクが、レトロ感と現代のスタイリッシュさとコラボして現代に蘇った。素晴らしいことだと思うよ。
Q:ゼッケン19番のCB750Fは、貴方にとってどんな存在ですか?
FS:自分を象徴するものだね。小さい頃からホンダに憧れていた自分が、ホンダと契約を結んで初めて乗ったバイクであり、僕の情熱の全てがそこに託されている。ホンダがこういうバイクを開発する、その初期に携わり、スーパーバイクで勝って、GP500でも勝ってワールドチャンピオンも取った。ホンダが上昇していく最初の時点に携わることができたのは、僕にとってすごく大きなことなんだ。体の一部のようなバイクだよ。
Q:CB1000Fには、そんなCB750FのどんなDNAが受け継がれていると感じましたか?
FS:パワーやフィーリングといったエンジンのキャラクターだね。僕は本当に長い間ホンダに乗っていて、ホンダのバイクをすごく良く知っているけど、そのDNAをとても感じるよ。乗っていて楽しいし、今日のようなレーストラックでもすごく楽しいバイクだと思う。
Q:当時からは40年以上の歳月が経っていますが、今のバイクと昔のバイクを比べると、どこが一番進化していますか?
FS:まずはスタビリティだね。そしてサスペンションの感覚が違う。昔のバイクはソフトに走らせないとフィーリングが感じ取れなかった。そうしないとバイクが安定を失い、すごく動いてしまうんだ。だからライダーは、その動いてしまう部分とグリップ力との間でチャレンジして走らせるという、高い技術を求められていた。
でも今のバイクはすごく安定性が高くて乗りやすいし、フィードバックも分かりやすい。僕はそれを「forgiving(許されている、許容する、寛容な、といった意味)」って表現するんだ。そうだね…。一定の線があるとしようか。その線を超えるとバイクが一気に安定性を失う。限界までは行けるけど、それを超えるとコントロールできなくなってしまう。それが昔のバイクなんだ。500ccの2ストロークなんか、そのラインまで行ったらふっ飛んじゃうよ(笑)。
でも今のバイクは、リミットまで行ってもある程度フィードバックがあって、限界よりもちょっとだけ先に行ける。そういうバイクに対して僕はforgivingって言葉を使うんだ。限界を超えてもなんとかなる、もう少し先まで行けるバイクが欲しいって、ライダーだった時にはいつもエンジニアと話してたよ。
Q:CB1000Fはそういうバイクになっていますか?
FS:ああ。大きな差はやっぱりそこなんだ。今回はそんなに速く走らせたわけじゃないけど、それでもバイクの動きは安定していて、感覚が全部伝わってくる。サスペンションもタイヤも全て性能が上がっているから、自分が限界に達しているかも分かってるし、それをちょっと超えても余裕がある。ちょっと走っただけでもアジリティがすごくいいし、forgivingがあるバイクだと感じたよ。
Q:走行性能ではない部分の近代感、例えばメーターが四角い液晶タイプであるとか、タンクが以前よりも大きかったりとか、外見的にニュージェネレーションになっている部分にはどういった印象を受けますか?
FS:僕は昔のものをベースにモダンに変えるって、いいと思うんだよね。強くブレーキングするとウインカーが点滅するところ(=エマージェンシーストップシグナル)とか、ABSもそう。進化している分、走っていて昔のバイクよりも情報が豊富に入ってくる。レトロの古さとモダンなテクノロジーとの融合が素晴らしいし、とても新鮮だったよ。エンジニアは最高の仕事をしたんじゃないかな。

テスト後、CB1000Fの開発責任者である原本貴之さん(左端)と、ホンダ大型FUNモデルの開発を統括する坂本順一さん(スペンサー氏の左隣)にインプレッションを伝える。「すごく気に入ったよ。アメリカで乗りたいね!」
余談:「スペンサーカラー」ってご存知?
Q:話は変わりますが、今でもあなたとゼッケン19番のCB750Fはすごく人気があって、日本ではこの色が「スペンサーカラー」と呼ばれています。ご存じですか?
FS:ああ、聞いたことはあるよ。ありがたいね。
Q:人気があるので色々なバイクがこの色で販売されたのですが、その中にはこんなバイクもありました(2005年式のモンキー50スペシャルの写真を見せる)。
FS:僕、これ持ってるよ、モンキー!
Q:本当ですか?!
FS:アメリカの自宅にあるよ。それに、僕が一番最初にレースしたのもこれだよ。1965年かな、僕が4歳のとき。ミニトレイル50(※モンキーのアメリカ名)と言って、リアサスペンションがないのでハンドリングが難しかったけどね!

スペンサー氏も所有しているという2005年式のモンキー(50)スペシャル。カタログにはゼッケン19のCB750Fの写真も使われている。他にもスペンサーカラーはCB400/1300SFやCB750(RC42)などが採用している。
テスト当日のスペンサーさん
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fatフレディ
>スペンサーレプリカカラーのヘルメットを被るスペンサーさん。
いやいやw 本人が被ってるんだからレプリカじゃなくてホンモノだからw w
ホンモノは現役当時アライがレースのために提供していたヤツだから
それを模して現代に一般向けで作られたのはレプリカで合ってるんじゃないの?
活躍当時のスペンサーは、神経質でインタビューなんかも少ないイメージがあった。手首のケガのあと復帰してもイベントドタキャンなどあり、人格的に未成熟なのかな、と思わせた。今思えば、トップを走れなくなっても現役中はプレッシャーと戦い続けていたんだろうと思う。解放された今、朗らかで良い人になっているなと。。