写真:長谷川徹

“クラシック”を名乗る理由がここにある

この記事のタイトル写真を見た時に、改めて「なんて美しいバイクなんだろう」と思った。同時にこれこそが現代に生きる本物のクラシックだとも思った。撮影中もその佇まいの良さやクロームに映り込む景色を楽しんだが、写真での雰囲気の良さを知ると、また一段と気分が上がる。

「クラシックという名前を使うことは、これまでの歴史の集大成であり、その歴史を象徴するものです。クラシック650は、今新車で手に入る最もクラシックバイクらしいバイクです。そう感じさせるのは『本物らしさ』があるからです。クラシックに空冷エンジンは必須ですし、前19、後18インチも欠かせません。

例えばこのバイクに四角いメーターが装着されていたらガッカリしますよね。コストダウンのためにクロームパーツを減らすこともできますが、やはりクロームが正しいのです。スイッチやキーリンダーなど細かい部分のメッキはそのためです。このスタイリング全体からストーリー性とオーセンティックさを感じていただけると嬉しいですね」とプロダクトマネージャーのグレン・コーベットさんは語る。

開発の背景を知ると、クラシック650はロイヤルエンフィールドが生み出した工芸品のようにも見えてくる。それだけ細部にこだわった1台なのだ。一目でわかる気品の高さと大胆さ、さらに現代のバイクとは思えない流れるように繋がる各部のディテールの美しさに奥行きを感じる。空冷エンジンのフィンの奥に見える景色や、シート下とフレームのクリアランス、タンクのハンドストライプのラインなど、計算されたディテールが『本物らしさ』を伝えてくる。また、左右どちらから見ても絵になるスタイリングも素晴らしい。

今の時代にエンジンのフィンの奥に景色を見ることができるのは、とても珍しい。シート下とフレームのクリアランスも計算されたもの。

19インチナロータイヤとパラレルツインエンジンを搭載する細身の車体が完璧なバランスを見せる。

センタースタンドも標準装備。後輪も細く、左右2本出しのマフラーも雰囲気がある。

日本でのローンチのために来日した、クラシック650プロダクトマネージャーのグレン・コーベットさん。イギリスのテックセンターで開発を手がけ、エンジンの熟成に貢献した。

パワーやトルクの数値よりもライダーが感じるフィーリングを重視したエンジン

ロイヤルエンフィールドは年間100万台以上のバイクを生産するメーカーだ。小排気量を持たずにこの台数を生産するメーカーは珍しく、その大量生産こそがメッキパーツの多用や、質感の高さ、様々なカラーバリエーション、そして買いやすい価格を実現している。現代においてこのクオリティのバイクにこの価格で乗れることはとても幸せなことだと思う。

そしてそれは見た目だけの話に止まらない。クラシック650に搭載される648cc空冷エンジンは、まさに名機と呼ぶに相応しいエンジンで、乗り味がとても良いのだ。

跨るとその車体は648ccのバイクにしては大柄。さらに重量もあるため、取り回しにはコツやキャリアが必要だ。しかし、それが重厚さと佇まいの良さ、さらに存在感の高さに繋がっている。エンジンは、ブリッピングすると『適度な重さ=空冷ならではのタメ』を伴って回転を上昇させる。「ブロローン」そのエキゾーストノートは大きくないが、心地よさとクラシックバイクらしさを伴う。

様々な650シリーズでこのフィーリングを体感しているが、試乗するたびに良いエンジンであることを実感できる。節度の高いミッションを1速入れ、少し大きめにスロットルを開けて走り出した瞬間から、その鼓動間と躍動感がライダーを虜にする。

165cm/68kgの筆者が跨ったポジション。ハンドル、ステップはとても自然な位置にあり、意識せずにリラックスできる。

165cm/68kgの筆者がシート高800mmのクラシック650に跨った足つき。車体が大きく、シート幅もあるため足つきは良くないものの、極低速でもバランスがとりやすく、不安は少ない。

市街地でも軽快感の高い走りを披露。低中速でのエンジンの鼓動感が明確で、気持ちがいい。

 

「このエンジンは燃調や点火を何度も見直しながら、進化しています。シミュレーションというよりは様々な部署のスタッフが試乗し、意見を出し合ったりしながら開発しているのです。例えば私だったらプロジェクトマネージャーとして意見を出します。私は常にカスタマーの声を聞いていますから、彼らの声も反映させます。そしてビジネスとしての意見も出すのです。

それが良い音やフィーリングを与えます。パワーやトルクといった数値は重要ではありません。それらがライダーにどのように伝わるかが大切なのです。ロイヤルエンフィールドのスタッフには情熱的なバイク好きがたくさんいます。私も含め彼らは、時には一人のカスタマーとして意見をあげますが、それが心から感じた意見になり、頭の中で考えただけの意見とは異なるのです」とグレンさん。

270°クランクを採用する空冷648ccエンジンは、ライダーの感性に訴えかけるフィーリングがあり、47psとは思えない加速と52.3Nmとは思えないトラクションを披露してくれ、この数値に現れないつくり込みは見事としか言えない。市街地ではドコドコとしたフィーリングを持ち、高速道路などで中高回転を使うと軽く回り出す。特にナラシを終えて距離を重ねるほどに、軽く回り出すような印象だ。

また、ミッションのタッチがとてもよく、ギヤチェンジがとても気持ちいい。それほど丁寧な操作をしなくても、ショックが少なくスムーズに決まるのである。

最高出力は47ps/7250rpm、最大トルクは52.3Nm/5650rpm。見た目はクラシックだが、中身は今時の270度クランクを採用。

ヘッドやシリンダーにエンジンを冷やすための深いフィンを刻む。エンジンのケースカバーはクリアのかかっていないアルミ地肌仕上げ。磨かないと曇ってしまうが、磨く楽しさを堪能したい。

灯火類はLED。ヘッドライト上部のタイガーアイがロイヤルエンフィールドのクラシックシリーズの特徴だ。

ヘッドライトケースがメーターパネルになったコクピットまわり。メーター右サイドは簡易ナビのトリッパー。

ハンドルクランプもアルミ鋳物のバフ仕上げ。メッキとは異なる柔らかな質感が良い。

ブラック×クロームの組み合わせがクラシカルな雰囲気を盛り上げる。

タンクのゴールドラインは手書き。同じ一族が何世代にも渡って独自のレシピで継続。これはロイヤルエンフィールドにしかできないとても貴重で大切な伝統なのだ。

シートは上質。分厚くて乗り心地も良い。タンデムシートを外してシングルシート仕様にしても絵になる。

サイドカバーをループ状に囲むフレーム。エンジンを低い位置に搭載することができ、スタイリングとハンドリングを両立できるシャシーだ。

クラシックバイクに欠かせない、前19/後18インチの黄金比

クラシック650は、すでに登場しているスーパーメテオ650とショットガン650と同系列のエンジンとフレームを採用したバイク。この車体はコンチネンタルGT650やベア650のダブルクレードルフレームよりも、エンジンを低く搭載できるのが特徴だ。もちろんサスペンションなどは3車とも異なるが、車両のキャラクターを決定づけているのはホイールサイズにある。

各車のホイールサイズは以下の通り。
クラシック650は、前19/後18インチ。
スーパーメテオ650は、前19/後17インチ。
ショットガン650は、前18/後16インチ。

この中で、僕が一番しっくりくるのがクラシック650だった。市街地の低速域でも軽快感があるのは後輪が大きいからで、直立付近から前輪のステアするフィーリングがとても良い。峠では、ショットガンほどクイックではないものの、ライダーを急かさない穏やかさがあり、僕の感性にすっと馴染んでいく。本物の英国クラシックバイクは、もっと軽く華奢で重厚感はないもの、このライダーに馴染む感覚がどこかクラシックバイクらしさを感じさせるのだ。

クロームに映り込む景色も美しく、どこに置いても景色に馴染むのはオーセンティックなスタイリングの美点。またクロームは夜のネオンが映り込むとまた別の表情を見せてくれるのもいい。

クラシック650、そしてクラシック350にゴアンクラシック350が出揃い、ロイヤルエンフィールドのクラシック構成は盤石になった。3車ともに124年の歴史を現代の解釈で鮮明に甦らせている。ロイヤルエンフィールドらしい世界観が『クラシック』の名前に集約されている。

フロント19インチ、リヤ18インチは昔ながらのクラシックスタイルに欠かせないホイールサイズ。

リヤの18インチは、650シリーズの中で最も腰高なスタイルを実現。灯火類はクラシカルなデザインだが中身はLED。

クラッチ。ブレーキともにレバーは調整式。

デジタルメーター内には、時計やギヤインジケーターを装備。

キーシリンダーもクローム加工。塗装にすればコストは下げられるが、高級感にこだわった。

スイッチボックスもメッキ。キーシリンダー同様のこだわりだ。

速度に限らず軽快感があり、すぐにライダーとバイクの一体感を得ることができるクラシック650。

クラシック650のカラーバリエーションを見てみよう

Black Chrome(ブラック・クローム) 99万8800円

Teal(ティール) 96万9100円

Vallam Red(ヴァラム‧レッド) 94万9300円

Bruntingthorpe Blue(ブランティングソープ‧ブルー) 94万9300円

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