ホンダ「VT250」=4サイクルのホンダが威信を賭けたVツイン / 前編=【カタログは時代を映すバックミラー 第9回】
VT250F
3,700
0
2
共有
リンクをコピー
X
Facebook
保存
【衝撃を与えたRZ250】
1980年、ホンダとヤマハの出荷競争(いわゆるHY戦争)が激しくなってきました。
そのような中、ヤマハからレーシングマシンTZ250の技術を踏襲したスーパースポーツマシンRZ250が発売されました。
ヤマハの250ccのロードスポーツには、空冷2サイクル2気筒のRD250がありましたが、RZ250は新開発の水冷エンジンを搭載し、モノクロスサスペンションなどの先進技術を満載していたのです。
この時点でのホンダ250ccロードスポーツは、スーパーホークがラインナップしていました。
1980年 ヤマハRZ250 水冷2サイクル2気筒 最高出力35PS 354,000円
1980年 ホンダ スーパーホーク 空冷4サイクル2気筒 最高出力26PS 368,000円
RZ250は、それまでのRD250に比べ59,000円も高い価格設定でしたが、レーシングマシンのようなスタイリングと高性能スペックは若者たちを魅了し、ヒットモデルとなりました。
ホンダは、劣勢となった250ccのロードスポーツカテゴリーの奪還を目指して開発したのが、水冷4サイクルV型2気筒エンジンを搭載したVT250Fでした。
1980年当時、ホンダは世界選手権ロードレース(WGP)500ccクラスに4サイクルエンジンのNR500で、2サイクル勢に挑戦していました。
2サイクルも4サイクルも同じ排気量で戦うレギュレーションでしたが、ホンダは4サイクルにこだわり革新的な長円ピストンのエンジンを開発し、レースでは不利と言われた4サイクルで戦っていました。
このような状況ですから、RZ250に挑むのは4サイクルマシンとなったのは、自然の流れだったと思われます。
1982年6月に、革新的な水冷4サイクルV型2気筒エンジンを搭載したVT250Fが発売されました。
当時のカタログで、VT250Fの魅力を紹介させていただきます。
※カタログは個人所有のため、汚れなどはご容赦ください。こちらは、16ページもののカタログで、ホンダ社内では本カタ(本格的なカタログの意)と呼んでいました。対して、ページ数の少ないものは簡カタ(簡略したカタログの意)と呼んで区別していました。
1982年5月発行 VT250Fの本カタログの表紙
表4のシーンは後ろから撮影したもの
NRレーサーの血を引く、水冷90度V型2気筒DOHC8バルブエンジンの説明があります
スタイリングカット
250スポーツ車、世界初の水冷90度Vツインエンジンを誇らしく説明
クラス初の油圧クラッチや6速クロスミッションのメカニズムなどを紹介
プロリンクサスペンションやインボードディスクのフロントブレーキなどの先進技術を紹介
GPレーサーに採用されたフロント16インチタイヤや、ジュラルミン鍛造セパレートハンドルなど紹介
VT250F専用のライダースーツやヘルメットも用意されていました
こちらは簡カタ6ページものです。
1982年8月発行 VT250Fのカタログ表紙 本カタとは写真やコピーが異なります
本カタと同じ写真が使われています VT250Fの決めカットです
走りのカットは、本カタと同じものです
エンジンやプロリンクサスペンションの説明ページ
フロント16インチタイヤなどの専用足回りを中心に紹介
アクセサリーと諸元ページ エンジン性能曲線と走行性能曲線で高性能ぶりが分かります
大人気でベストセラーになったVT
VT250Fは、RZ250と同じ最高出力35PSを発揮。4サイクルならではの低中回転域で扱いやすく、女性ユーザーにも支持されて一躍250ccのベストセラーモデルとなりました。
翌1983年には、フルカウルを装備したVT250F インテグラをモデル追加して、幅広いユーザーを獲得しました。
発売から2年後の1984年2月、早くもフルモデルチェンジを図りました。
エンジン各パーツの軽量化や吸気効率化などで最高出力を40PSまで高めました。
ハーフカウルを装備するなどスタイリングを一新し、スポーツランからツーリングまでの幅広いシーンで一層扱いやすいトータル性能の向上を図りました。
こちらは、1985年発行のカタログです。 カラーバリエーションが変更されました
新設計の角型断面のダブルクレードルフレームの構成が良く分かります。タイヤサイズは、フロントの16インチはそのままに、リアを18インチから17インチに変更しました
エンジン各パーツの写真や吸気系統をイラストで紹介し高性能エンジンをPRしています
ホイールは新デザインのコムスターを採用。空力に優れたハーフカウルやコックピットなどを紹介
カラーバリエーションは4色と豊富な設定。価格は初代に比べ5万円高の449,000円
そして、1984年9月にVT250Zをシリーズに加え発売しました。
このVT250Zは、カウルの無いシンプルなネイキッドモデルとして登場しました。
VT250Zは、その後のVT250シリーズにとって、重要なポジションとなっていきます。
1984年9月発売 VT250Z
1985年4月、VT250シリーズが販売累計10万台を達成し、3年連続軽二輪クラスでベストセラーを記念したスペシャルモデルが2車種発売されました。VT250シリーズが、いかに多くのユーザーに支持されていたのかが分かります。
VT250F リミテッドエディション
VT250Fインテグラ ウイングスペシャルエディション
VT250シリーズは、250ccのロードスポーツユーザーを拡大しましたが、レーサーレプリカと呼ばれる2サイクルモデルや4サイクル4気筒モデルの登場により、ラインナップにもおおきな影響を受けたのです。
ギャラリーへ (25枚)
