1990年代末から2000年代初頭、ストリートトラッカーなどと呼ばれたオフロード系バイクをストリート向けにカスタムしたバイクが街中に溢れた。エアクリーナーボックスを取り外してパワーフィルターを取り付け、シート下の部品を極力コンパクトににまとめて「スカスカ」にした「スカチューン」と呼ばれるカスタム手法が流行。そのストリートトラッカーブームの中心にあったのは、ヤマハのTWシリーズであった。
若者たちの起こしたブームがメーカーを動かした
1987年にヤマハが発売したTW200は、コンパクトなオフロード系の車体に極太のオフロードタイヤを履き、空冷SOHC2バルブ単気筒196ccエンジンを搭載。車名の「TW」は小道などを表す「Trailway」を意味し、オフロード走行に特化したモデルであった。1987年と言えばレーサーレプリカブームの真っ只中であり、レーサーレプリカは250ccモデルでも45PSを発生していた。そんな中、最高出力16PSの変わった形をしたオフロードバイクは若者からは見向きもされず、日本では一部の愛好家だけが乗るモデルであった。
そんなTWに対する風向きが変わったのは、1990年代の後半だ。レーサーレプリカブームが終焉を迎え、ネイキッドブームを経てファッション業界のアメカジブームとリンクしたアメリカンブーム、ハーレーブームと時代が移り変わっていく中、一部の若者がオフロードバイクをベースにしたカスタムバイクを通勤などの足に使いだしたのである。その中でもダートトラッカーレプリカであったFTR250はシート高が低く、アメリカンテイストが強かったことからか急激に人気が上昇。しかし、FTR250は販売当時は不人気車であり、すでに生産中止となっていたため入手が困難であった。そこで次に若者たちが目をつけたのが、フォルムがFTRに近く、現行モデルで価格も安価なTW200だった。
若者たちはシンプルな構造のTW200をベースに思い思いのパーツを組み込み、ストリートテイスト溢れるカスタムへと変貌させていった。カスタムの定番はヘッドライトの丸型化であり本来アメリカンバイク用であったベーツタイプヘッドライトなどが、カスタムパーツショップでは飛ぶように売れた。さらにショップが先にも触れた後に「スカチューン」と呼ばれるカスタムを生み出し、大手のパーツメーカーもバッテリーレスキットやフェンダーレスキットなどが発売。ヤマハも負けじとTW200に丸型ヘッドライトを最初から装備した「TW200E」を発売し、2000年に放送された「ビューティフルライフ」というドラマで木村拓哉がカスタムされたTW200に乗ったことでそれまでバイクに興味がなかった層まで巻き込んでTWブームは最高潮を迎えることになる。
このTWブームは他のバイクメーカーにも大きな影響を与え、ホンダはFTRを「FTR223」としてリメイク、スズキからは「グラストラッカー」や「バンバン200」、カワサキからも「250TR」といったライバル車が続々登場した。
TWシリーズの最後を飾る限定モデル
TW200は1998年に丸ライトのTW200Eがラインナップされ、2000年のモデルチェンジで角目のいわゆるTW200がラインナップから消えた。TW200Eだけとなったことで名称も「TW200」に一本化され、フロントブレーキがディスク化され、舗装路向けのタイヤを採用するなどストリート向けに各部が見直された。ルックス的にもカラフルなフューエルタンクに対してシートカウルをブラックとしたり、ブラックタンクモデルはホイールまでブラックアウトするなどユーザーの好みを適切に取り入れて、ストリートバイクの完成系とも言える仕上がりを見せた。また、TW200の特徴のひとつであった空気が薄い高地などで燃料供給を補正する高地補正機能付きのキャブレターが廃止され、一般的な負圧式キャブレターへと変更されている。2001年にホンダの「FTR223」がデビューしたことは当然TW200の売り上げに影響を与えた。その対策としてヤマハは、車体は基本的にTW200のものを継承しつつ、セロー225系のエンジンを搭載した「TW225」を2002年に投入した。
今回撮影させていただいたのは2007年モデルとして発売された、TWシリーズ20周年記念車となる「TW225E 20th Anniversary Special Edition」。白くペイントされたフレームと、ペイント仕上げのフロントフェンダー、サイドカバー、リアフェンダーといった外装パーツが与えられる。また、ホイールにもピンストライプが入れられるなど、非常にスタイリッシュな仕上がりになっている。カラーはこの「ビビッドオレンジメタリック2」の他に、「ベリーダークバイオレットメタリック1」が用意されていた。
新しいエンジンは空冷SOHC2バルブ単気筒223ccで、最高出力18PS/7500rpm、最大トルク18N・m/6000rpmを発生。最高出力、最大トルク共にアップしつつ、発生回転数を低くすることでより扱いやすく街中でのパワフルな走りが可能となった。
エンジン以外にもサイドカバーとテールカウルのデザイン変更やマフラー形状の変更、リアブレーキドラムの大径化とそれに伴うリアハブの変更などが行なわれた。ストリートの王者であったTWシリーズは、2007年モデルを最後に平成18年の排出ガス規制によって惜しまれつつ生産中止となった。
TW225E 20th Anniversary Special Edition主要諸元(2007)
・全長×全幅×全高:2025×820×1110mm
・ホイールベース:1330mm
・シート高:790mm
・車両重量:127kg
・エンジン:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒223cc
・最高出力:13kW(18PS)/7500rpm
・最大トルク:18N・m(1.84kgm)/6000rpm
・変速機:5段リターン
・燃料タンク容量:7L
・ブレーキ:F=ディスク、R=機械式リーディングトレーリング
・タイヤ:F=130/80-18、R=180/80-14
・価格:39万9000円(当時価格)
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