スーパースポーツのエンジン×クルーザーが織りなすラグジュアリーかつスピーディな世界!

他のメーカーがスーパースポーツのエンジンを搭載するクルーザーを作るだろうか?いや、絶対にないだろう……。フランスで開催された国際試乗会で、筆者(小川勤)はXディアベルV4の存在感と速さに圧倒された。

ポジションは足を前に投げ出すフォワードステップのクルーザースタイルだが、スロットルを開けるとパニガーレV4譲りのエンジンが吠える。ライダーが望めば、どこまでも応える振る舞いには驚くしかない。まずスロットルを開け続けることは不可能だが、クルーザーであるXディアベルV4に躊躇なくこのエンジンを搭載してしまうドゥカティは、改めて面白いメーカーだなぁと思う。

クルーザーでありつつもまるでスポーツバイクのような佇まいを見せるXディアベルV4。333万5000円。

軽快にバンクして、鋭く加速。他のドゥカティとのツーリングでもついていけなくなる心配はない。バンク角も十分だ。

 

パニガーレV4系のエンジンをボアアップし、中速寄りにチューンした1158ccのグランツーリスモエンジンは、168ps/10750rpm、12.8kgm/7500rpmを発揮。爆発間隔や逆回転クランクはパニガーレV4同様で、その味付けはとてもスポーティだ。

XディアベルV4は、先代のXディアベルからのモデルチェンジ。2016年以来のフルモデルチェンジで、車名が示す通りエンジンはVツインからV4になり、フレームはスチールからアルミモノコックになった。車体は6kgの軽量化を実現。リヤサスペンションのストロークは35mm伸ばし、コーナリング性能と乗り心地を追求した。

車体は大柄だが、ドゥカティらしい軽量な作り。Xディアベルはベルトドライブだったが、XディアベルV4はチェーンドライブ。

身長165cmの筆者(小川勤)がXディアベルV4に跨ったポジション。上半身は楽だが、足が伸び切ってしまう。長時間乗っていると足の付け根に疲労感が出る。

身長165cm、体重68kgの筆者(小川勤)がシート高770mmのXディアベルV4に跨った足つき。安心感は抜群で、クルーザーとしては軽い229kgの重量も安心感に貢献。

小柄なライダーはオプションのミッドコントロールステップの装着がおすすめ。ミッドステップはいわゆる普通のネイキッド的なポジションを約束してくれる。

こちらは、ブラックラヴァ。一見ブラックだが、光の当たり方でエッジ部分がパープルっぽく見える。

クルーザーにも関わらず本格電子制御を搭載!

実際に目の前に見るXディアベルV4は、たまらなくエレガントだ。その妖艶さやゴージャスな佇まいは、ラインナップの中でも随一。カラーリングも凝っていて、バーニングレッドとブラックラヴァの2色を用意。どちらも光の当たり方で表情を変え、写真では伝わりづらい色っぽさを醸している。

ロングホイールベースに極太のリヤタイヤを組み合わせ、車体はそれなりに大柄だ。ただ、重量は229kg(燃料除く)に抑えられ、見た目よりも取り回しは簡単。ただ、身長165cmの僕にとってステップ位置はどうしても前すぎで、足が伸びきってしまう。小柄なライダーはオプションのミッドステップを選ぶのが無難だろう。

鍵はスマートキー。ライディングモードは「ウェット」「アーバン」「ツーリング」「スポーツ」が用意され、その中から「ツーリング」を選んで走り出す。V4サウンドはとてもジェントル。走り出した瞬間から運動性の良さがわかり、ひとつ目のカーブから楽しい感覚はまさにドゥカティ。フランスのカンヌ郊外の街は石畳や小さな路地がたくさんある。しかし、そんなシーンでも大きさや重さを感じさせない。

1158ccのグランツーリスモエンジンを搭載。中速寄りのセットだが、168hp/10750rpm、12.8kgm/7500rpmを発揮。


ライディングモードは「ウェット」「アーバン」「ツーリング」「スポーツ」の4種。トラクションコントロール、コーナリングABS、クルーズコントロール、ウィリーコントロール、ローンチコントロールなどを標準装備する。ボタンひとつで様々なバイクに変身させることが可能だ。

彫刻のように絞り込まれた巨大なボディは、1620mmのロングホイールベース、240サイズの極太リヤタイヤを持つ。ただその車格を感じさせない軽快なハンドリングを持つ。

ワインディングで本領を発揮するスピードクルーザー

短い高速道路では100km/h巡行を試みるが、その時の最適なギヤは5速。6速だと回転が低すぎて少しギクシャクするのだ。いつでもしっかりと加速するドライバビリティを確保したいなら、4000回転は回しておきたいところ。強いていうとXディアベルV4は、一般的なクルーザーのように低い回転でドロドロと走るのは苦手だ。

ただ、峠では驚くべきポテンシャルを披露。印象的なのは、サスペンションやブレーキのフィーリング。装着されている部品を見てもわかるが、そのレスポンスの良さはスポーツバイクに近く、大きな車体を軽々と曲げることが可能なのだ。

ドゥカティの中でも少数派になってきた片持ちスイングアームを採用。

倒立フロントフォークはφ50mmのフルジャスタブル。ブレーキはブレンボ製。キャリパーはモノブロック。ディスク径はφ330mm。足まわりだけを見たらまるでスポーツバイクだ。

 

「ツーリング」モードでも速さに不満はないが、せっかくなので「スポーツ」モードもテスト。するとグンとレスポンスが上がり、V4エンジン本来の力を披露。高速セクションでは良いが、ヘアピンが連続するシーンでは僕には少し過激すぎるので、「ツーリング」モードを常用することにした。

しかし走るほどに驚かされるのは、240サイズの極太リヤタイヤや1620mmの長いホイールベースを感じさせないほど軽く、自由に旋回していくこと。ある程度は想像していたが、その運動性の高さはクルーザーのものではないのだ。これはリヤサスペンションのストロークを伸ばしたことが影響しており、クルーザーというとロー&ロングな印象が強いが、XディアベルV4にローな印象はなく、乗り心地もとても良かった。

走るほどに「スポーツクルーザー」、「スピードクルーザー」と呼びたくなる。確かに今時の大排気量クルーザーはどれも速い。しかし、XディアベルV4の速さからは確実にMotoGPやWSBKの血統を感じるのだ。それは紛れもなくドゥカティであり、他メーカーのクルーザーにはありえない圧倒的な個性の塊だった。

サイレンサーエンドは4本の排気口をデザイン。V4エンジンを強調する。

XディアベルV4を象徴するアングル。エレガントなスタリリングにイタリアンの上手さを感じる。

XディアベルV4は、ワインディングを生き生きと走るクルーザーだ。

ドゥカティにしかできないスーパースピードクルーザーは求めればどこまでも速さを披露!【ドゥカティ XディアベルV4 海外試乗インプレ】ギャラリーへ (15枚)

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コメント一覧
  1. オサム より:

    以前からドゥカティのXディアベルやディアベル関連の記事を拝見し、気になっていたことがありますので数少ないXディアベル乗りとしてコメントさせていただきます。
    「ディアベル」は2011年頃だったと思いますがドゥカティのクルーザーモデルとして登場したバイクで、「Xディアベル」のほうは2016年に登場しましたがディアベルとは別物(中身がほとんど違います)のバイクになります。そして逆に、この「Xディアベル」をベースにしたモデルとして「ディアベル1260、ディアベル1260S」という新しいディアベルが登場します。そしてご存じのように「ディアベルV4」というフルモデルチェンジに至りました。
    「Xディアベル」のほうはマイナーチェンジを経て、今回の「XディアベルV4」というフルモデルチェンジに至ったのですが、こちらの記事では過去にも「Xディアベル」と「ディアベル」の関係性が間違った内容で書かれていることがありました。(そちらの記事のほうが間違いを指摘したい気持ちは強いのですが・・・)
    ちなみに今回記されています「Xディアベル1260S」という名前のバイクはありません。「ディアベル」と「Xディアベル」がごちゃ混ぜになってしまっています・・・。わざわざコメントすることでもないのですが、私の愛しているバイクなので気になってしまいまして・・・(笑)
    記事はいつも楽しく拝見しており、参考になりますのでこれからも応援いたします。

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