2025年7月は、ヤマハ発動機の設立70周年にあたります。そこで、ヤマハが初めて開発した4サイクルエンジンモデル「650 XS1」と、その激動の10年を当時のカタログと共に紹介しましょう。

ヤマハ第1号のYA-1はレースで大活躍

1955年7月1日、ヤマハ発動機株式会社が設立されました。
第1号の二輪製品は、2サイクル125cc単気筒エンジンを搭載したYA-1でした。

YA-1は、設立直後の7月10日に行われた第3回富士登山レースで優勝。
同年11月に開催された第1回浅間高原レース(全日本オートバイ耐久レース)は、日本最大の二輪レースとして、多くのメーカーが社の威信と技術力をかけて参戦しました。

YA-1は、125ccウルトラライトクラスで1位から4位まで独占する快挙を果たし、ヤマハの名を全国に轟かせたのです。

1955年 YA-1 (撮影:ヤマハコミュニケーションプラザ)

1955年 YA-1 浅間レース優勝車(復元車)(撮影:ヤマハコミュニケーションプラザ)

ヤマハの躍進は目覚ましく、1961年にはホンダ、スズキに続いてロードレース世界選手権にデビュー。1964年に念願の250ccで世界チャンピオンを獲得しました。

一方、量産車の先進技術としては、1964年に画期的な分離給油方式のオートルーブをYA-6に採用しました。この技術によって、混合ガソリンを必要とした2サイクル車の利便性や信頼性が格段に向上したのです。

1964年 YA-6 分離給油のオートルーブを初採用

ヤマハは、2サイクル車のラインナップを拡充し、1967年にはヤマハで最大排気量の350R1を加えました。

1968年10月発行の総合カタログ

オンロードは350R1、オフロードではトレール250DT1がヒット。

ロードスポーツの350R1をフラッグシップに、1968年春に国内販売したトレール250DT1がたちまちヒットモデルになりました。

1968年、二輪業界に衝撃が走る

1960年代後期になると、アメリカでは将来に向けた排出ガス規制の動きがあり、二輪車においては、2サイクルエンジンよりも4サイクルエンジンの方が、排出ガス規制には有利と見られていました。

ヤマハにとって、大型モデルを開発するには、4サイクルエンジンをゼロから研究しなければならないという大きな課題がありました。

1968年は、大きなニュースがありました。3月、スズキから2サイクル車としては国産最大排気量のT500が発売されました。"2サイクルのスズキ" をアピールする自信作でした。

そして、10月に開催された第15回東京モーターショーで、ホンダCB750FOURのプロトタイプが公開されました。4サイクルOHC 4気筒750ccという高性能で革新的な大排気量車の登場に、二輪業界には衝撃が走りました。

1968年 ホンダ CB750FOUR プロトタイプ

翌1969年8月、ホンダ ドリームCB750FOURが国内販売をスタート。

1か月後には、カワサキから2サイクル3気筒500ccの500-SSマッハⅢが発売されました。

高性能な大排気量モデルは、たちまち若者たちの憧れの存在になりました。

そのような中、同年に開催された第16回東京モーターショーに、ヤマハが満を持してXS1-650を初公開して1970年1月に発売することを予告したのです。

1969年10月発行 総合カタログ XS1のメーター部や走りの写真を紹介しています。

XS1-650 45年1月発売と予告をしています。

発売前のため、XS1の諸元はあくまで推定。最高速度は185kmでした。

XS1の諸元表は(推定)としながら、最高速度185km/h以上、総排気量654cc、最高出力53PSと紹介されています。性能第一主義とは一線を画す数値です。

ヤマハのフラッグシップモデルとして、初の4サイクルOHC 2気筒エンジンを搭載した650ccのスポーツバイクは、東京モーターショー出品時から名称を変え「ヤマハスポーツ 650 XS1」として1970年に誕生しました。

このカタログは、1969年12月に発行されたものです。

カタログ表紙

表4の諸元表

ヤマハスポーツ 650 XS1として1910年にデビューを果たしました。

バーチカルエンジンと端正なスタイリングは、ビッグバイクファンに支持されました。
サイドカバーのエンブレムはXS-650としています。

ヤマハはこれまでにも高性能な自動車用4stエンジンの製作実績をを持っていました。

二輪車用の4サイクルエンジンは初めてでしたが、トヨタのレーシングカーや2000GT用の
高性能な4サイクルエンジンを手掛けた実績を高らかに紹介したページです。

エアスクープ付ツインカムのフロントブレーキなどの各部紹介。

XS1のセールスポイントである新開発の650ccバーチカルツインの4サイクルエンジンをアピール。

早くもマイナーチェンジで車名を変更

1970年10月には早くもマイナーチェンジが施され、車名は「ヤマハスポーツ XS650」に変更されました。

主な変更点は、車体色をキャンディーグリーンからキャンディーオレンジに変更。セリアーニ式フロントフォークの採用などで、主要諸元に変更はありません。

車名の変更は、ヤマハのスポーツシリーズの50ccから650ccまでを統一感のある車名にした施策の一環でした。

1970年10月発行のカタログ

表4は写真1枚のあっさりした表現

フロントブレーキは、エアスクープ付ツインカムタイプで変更は無し。

フロントブレーキは、エアスクープ付ツインカムタイプで変更は無かったのですが、各部紹介の写真には、これまでとは異なる写真が掲載されています。ヤマハニュースの資料を見る限り、カタログのブレーキの写真は間違いの可能性があります。

1971年は、フロントにディスクブレーキを採用したヤマハスポーツ XS 650-Eが発売されました。各社の大型モデルにはディスクブレーキ装着タイプが続々と登場しましたので、ヤマハとしては、フラッグシップのXS650からフロントブレーキのディスク化を図っていきます。

1971年7月発行のカタログ

表4はワインディングの遠景とマン島TTレース制覇の告知がありました。

XS650-Eのカタログでは、タンデムランの楽しさを訴求しています。

ディスクブレーキをはじめ、質感や装備の充実を図った各部を徹底的に紹介。

誕生から1年半でこれほどの熟成を図った背景には、他社のビッグバイクの進化のスピードが速いことが挙げられると思います。

XS650からTX650へと継承

1972年、ヤマハは初の750ccモデル「TX750」を発売しました。4サイクルOHC 2気筒エンジンをスリムな車体に搭載し、他社の多気筒ナナハンに対抗した独自路線でした。

そして1973年3月、新開発の4サイクルDOHC 4バルブ2気筒エンジンを搭載した「TX500」を4サイクルラインナップに加えました。

こうした戦略から、XS650は大幅なモデルチェンジを受け、車名を「ヤマハスポーツ TX650」として1973年10月に登場しました。

1973年10月発行のカタログ

ヘルメットはフルフェイスタイプに変わりました。

バーチカルツインエンジン搭載のネオクラシックな大型車として、多気筒路線の他社に対して明確な意思表示をしました。

タンクは12.5リットルから15リットルへと大型化。

エンジンは、キャブレターやエキゾーストマフラーなどの変更により、鼓動感や独特な味わいを
追求。フレームは新規開発により剛性を高めるなど、総合性能を向上させています。

TX650は、2年後の1975年9月に大幅な改良を受けます。

騒音規制や排出ガス低減の対応と、さらなる操縦安定性の向上が図られました。

1975年9月発行のカタログ

表4ではスペックと性能曲線を掲載しています。

エキゾーストマフラーを連結式とし、静粛性を向上させました。

エンジンは、連結式のツインキャブレターや、連結式としたエキゾーストマフラーなどの採用によって、より静粛性に優れた仕様としました。フロントブレーキキャリバーの取付位置の変更などにより、操縦安定性向上に寄与しています。

XS650スペシャルとTX650の終焉

1978年3月、バーチカルツイン650ccのエンジンは、アメリカンスタイルのXS650スペシャルに搭載され新たな活躍の場を得ました。伝統的なこのエンジンは、最高出力や加速を重視したものではないため、性能第一主義が濃いロードスポーツカテゴリーでは地味な存在に
なりがちでした。

XS650スペシャルの誕生によって、バーチカルツインの鼓動感やゆったりとしたライディングに適した乗り味が広く支持されることになりました。

1978年 XS650スペシャル

TX650は、熟成を重ねながら1980年を最後に販売に終止符が打たれました。

1980年 TX650 最終モデル

ヤマハ初の4サイクルエンジン搭載の650XS1は、1970年から1980年の激動の10年の中で普遍的なモーターサイクルの美しさと乗りこなす楽しみを拡げました。

時代を超えて、現在もXS1シリーズを愛好する多くのファンがいることが、これを証明していると思います。

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