取材協力:レッドバロン

TWやFTRといった軽量級のバイクが街中を走り回り、それに乗ることが若者のステイタスであったストリートバイクブーム。その最中にヤマハから発売されたトリッカー XG250は、新しいコンセプトでそのストリートバイクの世界に投入された1台だ。

ストリートバイクの新しい形を模索したヤマハ

トリッカーが登場した2004年はいわゆるストリートバイクブームの最中にあり、テレビドラマで人気タレントが乗ったことで爆発的な人気となったTWがシーンの主役であった。そんなTWシリーズが絶好調のヤマハが、新たな仕掛けとして用意したのがこのトリッカーだったと言えるだろう。

フロント19インチ、リア16インチのホイールサイズを持ち、オフロードバイク+トライアルバイクのようなデザインを持つ。

後期型から7.2Lへとタンク容量は増えたが、ほとんどの部品がフレームの幅に収まるようなスリムなデザインは失われなかった。

トリッカーの車名は「トリック」という言葉から来ており、スケートボードやBMXのように自在に操ってトリックを決める、つまり今で言うXゲーム的なバイクをイメージしており、コンセプトは「フリーライドバイク」であった。バイクの世界でそうした乗り方に近いのはオフロードバイクやトライアルバイクであり、トリッカーの全体的なデザインはオフロードバイクとトライアルバイクの中間と言えるものであった。

軽量な車体とトルク特性に優れたシングルエンジンの組み合わせで、思い通りに振り回せる運動性の高さが実現されている。

トリッカーには新設計のフレームとエンジンが与えられていたのだが、このフレームとエンジンはその後デビューしたセロー250のベースとなっている。実際の開発においてどちらが先にあったのかは分からないが、出た順番だけで言えばトリッカーはセロー250のベースとなったバイクと言える。セローシリーズはオフロードバイクのベストセラーモデルであり、225から250へのモデルチェンジにおいてはそのデザインやトリッカーを色眼鏡で見るベテラン層からさまざまな意見が出たのもまた真実だ。

セロー250はトリッカーとフレームやエンジンの基本を共用する。先に世に出たのがトリッカーなので、セロー250はトリッカーベースと言うことができる。

完成度の高いエンジンとフレームはセローと共用

トリッカーのデザインについては先にも触れたが、オフロードバイク+トライアルバイクをベースに近未来的なエッセンスを加えたものだ。フレームは新設計の別体ダウンチューブ式セミダブルクレードルフレームで、タンクやシートながほぼこのフレームの幅に収まるスリムなデザインを採用している。開発陣がサイズ感にこだわったといい、意のままに操る楽しさを追求した全長1980mm、ホイールベース1330mm、シート高790mmとコンパクトにまとめられ、初期モデルの車両重量は120kgと軽量だ。

ポジションはアップライトで、ステップは体軸よりも少し前にあり、立ち上がったり中腰の状態でバイクを振り回しやすい。

171cmのライダーが跨って両足を着いた状態。シート高が790mmと低く、車体がスリムなので両足がかかとまでしっかり着く。

パワーユニットには低中速重視で軽快でトルクフルな走行フィーリングを実現した、新設計の空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒249ccエンジンを搭載。このエンジンは最高出力21PS/7500rpm、最大トルク2.1kgm/6500rpmを発揮し、過渡時のツキの良さやスロットル操作に対するリニアリティ、トルク感などを重視したものとなっている。2008年モデルでフューエルインジェクション化され、6Lだった燃料タンクの容量を7.2Lへと拡大するなどの変更を受ける。このフューエルインジェクションモデルは、最高出力18PS/7500rpm、最大トルク1.9kgm/6500rpmへと若干ではあるがスペックダウンしている。

フレームとエンジンは新設計されたもので、エンジンとフレーム各パイプをコンパクトにまとめることで、全体プロフィールの小型化とマスの集中化を実現している。

エンジンは空冷4ストローク単気筒249ccで、フューエルインジェクションモデルは最高出力18PS/7500rpm、最大トルク1.9kgm/6500rpmを発生する。

マフラーはアップタイプで、車体右側に出されている。リアキャリアはオプションで、本来はグラブバーのみが装備されている。

専用デザインの小ぶりなヘッドライトと、スリムなフューエルタンクがトリッカー独特の顔つきを生み出している。

タコメーターは装備されず、スピードメーター+インジケーターボックスという構成になるシンプルで視認性の高いメーター周り。

左側のスイッチボックスには、ヘッドライトのハイロー切り替え、ウインカー、ホーンなどのスイッチが取り付けられる。

スロットルホルダーと別体となる右のスイッチボックスには、キルスイッチとスタータースイッチが取り付けられる。

ホイールサイズはフロント19、リア16インチで、スポークタイプを採用。サスペンションはフロントに180mmストロークの35mm径正立フロントフォーク、リアはホイールトラベル172mmのボトムリンク式 リアサスペンションが採用されている。

フロントホイールは19インチで、アルマイト仕上げのアルミリムが採用されている。

フロントフォークは正立タイプで、フロントブレーキは220mm径のディスクローターと2ポットキャリパーの組み合わせとなる。

スイングアームはスチール製で、ボトムリンク式のリアサスペンションと組み合わさせる。

リアホイールサイズは16インチで、ブレーキキャリパーには樹脂製のガードが取り付けられている。

意外なまでのロングセラーモデルとなったトリッカー

トリッカーは本来の目的であったストリートでの主役にはなれなかったが、その扱いやすさから幅広い層に愛されてロングセラーモデルとなった。2017年に一度生産が中止されたが、2019年に排出ガス規制に対応したモデルとして復活し、2020年モデルまで生産されている。

トリッカーには2001年の東京モーターショーに展示されたコンセプトモデルがあり、その先進的なデザインとコンセプトはバイクの新しいカテゴリーを切り開く存在として大きな注目を集めた。しかし、実際に発売されたモデルはコンセプトモデルとあまりにもかけ離れてしまい、残念な印象を持たれてしまった。これはよくある事例ではあるが、コンセプトモデルのインパクトが大きすぎた故の悲劇と言えるだろう。

ただ、ヤマハはトリッカープロという市販車のトリッカーをベースに、倒立フォークを装備したり専用外装によってコンセプトモデルのデザインに近づけたコンセプトモデルも発表している。今、改めて見てもトリッカープロは非常に魅力的で、これに近い外装パーツだけでも発売されていればトリッカーはストリートの主役にもなれたかもしれない。

コンセプトモデルの「トリッカープロ」は、倒立フォークやセンター出しのマフラーなど攻めた装備を持つ。各部はシンプルに仕上げられ、トリッカーの開発コンセプトにより近づけられたモデルとなっていた。

トリッカー XG250主要諸元(2010)

・全長×全幅×全高:1980×800×1145mm

・ホイールベース:1330mm

・シート高:790mm

・車両重量:125kg

・エンジン:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒249cc

・最高出力:14kW(18PS)/7500rpm

・最大トルク:19N・m(1.9kgm)/6500rpm
・変速機:5段リターン

・燃料タンク容量:7.2L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=80/100-19、R=120/90-16

豊富な品揃え! 新車から絶版車まで、5万台以上の在庫を誇るレッドバロン

中古バイク専門店と思われがちなレッドバロンだが、国内・海外メーカーの新車から希少なビンテージ車まで、常時約5万台のバイクを在庫。年間販売台数はなんと11万台に上るのだから驚きである。店舗には実際に見て、触って、跨れるバイクが多数あり、もしお気に入りのバイクが見つからずとも、全国の在庫から希望の1台を探してもらえるのだ。何軒もお店を回る手間なく、納得してバイクを選べるのが魅力となっている。全国300店舗を誇る直営店が営業中だ。

レッドバロン店舗一覧:https://www.redbaron.co.jp/shop/

ストリートの主役にはなれなかったが、その素性の良さからロングセラーとなったトリッカー (19枚)

この記事にいいねする


コメントを残す