2024年のEICMAで発表されたカワサキの「Ninja 1100SX」と「Ninja 1100SX SE」の、日本での販売が好調である。日本専用の装備も備えられ、走りからユーティリティまで進化した新型Ninjaに実際に触れてみた。

カワサキのスポーツモデルに与えられる「Ninja」という名

カワサキの「Ninja」というネーミングは、「GPZ900R」の対米輸出用に付けられたペットネームであった。この名前を一躍有名にしたのは映画「トップガン」であり、世界中にその名を知られるようになり、カワサキのスポーツオンロードバイクには基本的にこの「Ninja」という名前が付けられるようになっていった。

「GPZ900R」は今で言うスポーツツアラーカテゴリーのバイクであり、「GPZ1000RX」、「ZX-10」、「ZZ-R1100」、「ZZ-R1200」、「ZZ-R1400」と進化していった。派生モデルとしてスーパースポーツモデルである「Ninja ZX-9R」が1994年に発売され、その後「Ninja ZX-10R」へとスーパースポーツ系モデルにもNinjaの名前が継承されていくことになる。

今回紹介する「Ninja 1100SX」シリーズは、2011年に登場した「Ninja 1000」(※欧州などでは「Z1000SX」として販売)を元にする第三のNinjaシリーズと言える流れにあるモデルだ。「Ninja 1000」は、ストリートファイターモデルである「Z1000」の3代目となるD型にフルカウルを装着したモデルであり、ストリートファイターの動力性能とツアラーとしての性能を新しいカテゴリーのNinjaとして登場した。

「Ninja 1000」は2020年モデルで「Ninja 1000SX」へとフルモデルチェンジし、各種装備を充実させるとともによりツアラーとしての性格を強めたモデルとなった。そして、2024年のEICMAでその発展モデルとなる「Ninja 1100SX」と、その上級バージョンとなる「Ninja 1100SX SE」がデビューした。

スタンダードモデルとなる「Ninja1100SX」には、この「メタリックカーボングレー × メタリックディアブロブラック」と「パールブリザードホワイト × パールメテオグレー」の2色が用意される。

アッパーグレードモデルとなる「Ninja1100SX SE」のカラーリングは、「エメラルドブレイズドグリーン × メタリックディアブロブラック」のみとなる。

リア周りが絞り込まれたデザインで、マッシブな印象を受ける。全体的なデザインは「Ninja1000SX」から大きく変更されていない。

オプションのパニアケースを取り付けた「Ninja1100SX SE」。このパニアケースはマウントキットなどを必要とせずに取り付けられる。

新しいエンジンを得て、より熟成されたNinja

今回カワサキモータースさんのご厚意によって、「Ninja 1100SX」と「Ninja 1100SX SE」の2車種を同時に取材する機会をいただいたので、各部の比較や簡単であるが乗り比べたインプレッションをお届けしよう。

「Ninja 1100SX」と「Ninja 1100SX SE」最大の変更点は、排気量が「Ninja 1000SX」の1143ccから1099ccへとアップされたことだろう。「Ninja 1000SX」のボア×ストロークが77×56mmだったのに対し、「Ninja 1100SX」では77×59mmとロングストローク化して排気量を56ccアップ。最高出力は「Ninja1000SX」の104kW(141PS)/10000rpmに対して「Ninja 1100SX」は100kW(136PS)/9000rpmと若干ダウンしているが、発生回転数が1000rpm下げられている。対する最大トルクは「Ninja 1000SX」の111N・m(11.3kgm)/8000rpmに対して「Ninja 1100SX」は113N・m(11.5kgm)/7600rpmと若干アップすると共に、より低回転で発生するようになっている。

ロングストローク化によって1099ccの排気量を持つ新しいエンジンは、ユーロ5+排出ガス規制にも対応している。

このエンジンに組み合わされるミッションは5速が1.238から1.217へ、6速が1.107から1.068へとロング化することで最適化されている。その他、アシスト&スリッパークラッチや1500rpmから使えるKQS(カワサキクイックシフター)、KTRC(カワサキトラクションコントロール)なども装備している。

スタンダード、SE共に最高出力は100kW(136PS)/9000rpm、最大トルクは113N・m(11.5kgm)/7600rpmとなっている。

メーターには4.3インチのカラーTFT液晶を採用し、各種情報の表示はもちろん、スマートフォンとの連携などより快適なライディングに寄与する。また、USB-Cタイプのソケットがハンドル左側に装備されており、日本仕様にはドライブレコーダーやETC2.0などが標準装備されるなどユーテリティ面での充実が図られている。

メーターには4.3インチのTFT液晶スクリーンが採用されており、視認性の高いデザインで必要な情報をライダーに確実に伝える。

ハンドル左側に設けられたUSB-TypeCのソケット。カバーが取り付けられており、防水対策もしっかりとされている。

日本仕様の特別装備となるドライブレコーダーは、ミツバサンコーワ社製のGPS機能付きだ。

ツアラーであるNinja1100SXシリーズには不可欠とも言えるETC2.0も標準装備となる。

シャープなデザインのヘッドライトは、先代モデルのデザインを受け継ぐ。

ニーグリップ部が大きく絞り込まれたフューエルタンクは、19Lの容量が確保されている。

メーター操作用のスイッチ類などが取り付けたられたハンドル左側。操作系は「Ninja1000SX」から大きく変更されていない。

ハンドル右側はキル+スタータースイッチのみが取り付けられている。

シートは前後の段差が大きく取られたセパレートタイプ。タンデムシートもしっかりと厚みがあり、乗り心地が確保されている。

テールライトやウインカーはLEDタイプ。テールライトはカウルにビルトインされることで、リア周りのデザインをシンプルにしている。

マフラーは「Ninja1000SX」と同様に右1本出しとなり、ユーロ5+排出ガス規制をクリアしている。

スイングアームはアルミ製で、タイヤはブリヂストン製の「BATTLAX HYPERSPORT S23」を履く。

上級グレード「SE」には、ブレンボとオーリンズが奢られる

「Ninja 1100SX」と「Ninja 1100SX SE」の大きな違いは足回りである。まずフロント周りだが、フロントフォークは「Ninja 1100SX」、「Ninja 1100SX SE」共に41mm径フルアジャスタブルタイプ倒立フォークを装備する。ブレーキは「Ninja 1100SX」がKawasakiロゴ入りのラジアルマウントモノブロック対向4ピストン+300mm径デュアルセミフローティングディスクなのに対して、「Ninja1100SX SE」にはブレンボ製M4.32モノブロックタイプラジアルマウント対向4ピストンキャリパー+300mm径ブレンボ製デュアルセミフローティングディスクが装備される。

「Ninja1100SX」のフロント周り。ブレーキは「Kawasaki」ロゴの入ったラジアルマウントモノブロック対向4ピストンが装着される。

「Ninja1100SX SE」のブレーキには、ブレンボ製のM4.32モノブロックタイプラジアルマウント対向4ピストンキャリパー+300mm径ブレンボ製デュアルセミフローティングディスクが装着される。

リアサスペンションは「Ninja1100SX」がフルアジャスタブルタイプのホリゾンタルバックリンク、「Ninja1100SX SE」にはフルアジャスタブルタイプのホリゾンタルバックリンクは同様だが、ÖHLINS製のS46ガスショックが奢られている。

リアサスペンションはスタンダードの「Ninja1100SX」でも、フルアジャスタブルタイプが装着されている。

「Ninja1100SX SE」のリアサスペンションには、フルアジャスタブルタイプのÖHLINS製のS46ガスショックが装着される。

最後に、短時間ではあるが試乗することができたので、あくまでも一般ライダーの視点からその印象を少し記述しておこう。

ライディングポジションは多少前傾になる程度のリラックスできるもので、街中からツーリングまで幅広いニーズに対応できる。走り出して最初に感じるのは、車体の大きさに似合わずハンドリングが軽快で、乗ってしまえば重さを感じないことだ。排気量アップされた新しいエンジンは、スロットルレスポンスが非常に緩やかで全域においてシルキーな乗り味だ。そして、豊かなトルク感でのんびり流せるのはもちろん、峠でもキビキビ走るのである程度のスポーツ走行もできた。「Ninja 1100SX SE」に関しては、ブレンボ+ÖHLINSという豪華な足回りのおかげもあり、初めての乗車でも一切不安を感じない安定性を発揮。特にリアのオーリンズサスペンションの効果は大きく、ギャップなどを通過する際にスタンダードとの違いを大きく感じることができた。

「Ninja1100SX SE」でも全く不満は出ないレベルの走行性能を持つ。新しいエンジンはシルキーかつトルクフルだ。

乗り比べてしまうと「Ninja1100SX SE」のÖHLINS製サスペンションによって、走りに「高級感」がプラスされていることを感じる。

身長171cmのライダーが跨った状態。軽く前傾する感じだが、膝の曲がりを含めてリラックスした印象を受ける。

身長171cmのライダーが両足を着くと爪先立ちとなるが、片足であれはしっかり着くことができるので停車時の不安は無いはずだ。

「Ninja 1000」シリーズは「おじさんが選ぶバイク」などと揶揄されたりもするのだが、それはさまざまなバイクを乗りついてきたベテランによる究極の選択なのではないだろうか。それほどこの新しい「Ninja 1100SX」と「Ninja 1100SX SE」の完成度は高く、あらゆるニーズに対応できる懐の深さを感じさせてくれるバイクであった。

新しいNinja1100SXシリーズは、日常使いからロングツーリングまで幅広いニーズを満たす稀有なバイクであると言えるだろう。

Ninja 1100SX/Ninja 1100SX SE主要諸元(2025)

・全長×全幅×全高:2100×805×1190(※ハイポジション時1225)mm

・ホイールベース:1440mm

・シート高:820mm

・車両重量:236kg/235kg

・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒1099cc

・最高出力:100kW(136PS)/9000rpm

・最大トルク:113N・m(11.5kgm)/7600rpm
・変速機:6段リターン

・燃料タンク容量:19L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=120/70-17、R=190/50-17
・価格:177万1000円/198万円(税込価格)

新エンジンとユーティリティの充実で進化した、「Ninja 1100SX」&「Ninja 1100SX SE」に初試乗! (27枚)

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