4月に行われたJAIA試乗会にて、KTMのフラッグシップモデル「1390 SUPER DUKE R EVO」に試乗。“THE BEAST”というニックネーム通りのモンスターマシンだということは聞いていたが、自分がそれを実感することになるとは思っていなかった。その感想をお伝えしていきたい。

衝動を掻き立てるフェイスマスクに興奮! 走り出す前から血液が沸騰しそうな圧倒的なデザイン

「1390 SUPER DUKE R EVO」は2013年にデビューした「1290 SUPER DUKE R」を継ぐKTMのフラッグシップモデル。SSモデルを旗艦に置くメーカーが多い中、KTMはこの“野獣”という名のストリートファイターをトップに据えた。

1390に進化するにあたって排気量は1301ccから1350ccへ、最高出力は従来型の180PSから190PSへと向上し、燃料抜き半乾燥重量は200kgを誇るなどパワーウエイトレシオはほとんど1:1。これは車両の加速性能を示す指標で、エンジンの出力を車両の重量で割った値のことだ。数値だけ見ても、明らかなモンスターマシンであることが伺える。

そしてそれを体現する圧倒的なインパクトを与えるデザイン。エンジンを覆うように独特な取り回しが与えられたオレンジ色のトレリスフレームや、大蛇の如くうねるぶっ太いエキゾーストパイプが見る者を圧倒する。そしてなんといってもフェイスデザインが特徴的で、縦2灯のヘッドライトを囲うようにデイタイムライニングライトを配置。極限まで肉抜きされたその“顔”は、まさに理性を持たない野獣のような迫力を放つ。人によっては「昆虫のようだ」と思うかもしれないが、個人的には得体の知れない地球外生命体を彷彿とさせる。

圧倒的な存在感を放つ「1390 SUPER DUKE R EVO」。見た目だけでもモンスターマシンと分かる

リア周りも迫力満点。乗る前から気圧されてしまう。サイレンサーは純正ではなく、REMUS製を装備

まるで地球上のモノとは思えない特徴的なフロントフェイス

V型(L型)75° 2気筒1350ccエンジンと、それを取り巻くエキゾーストパイプがもはや異形とも言える

跨ってみると、身体との隙間が全くできないほどタンクが近い。これはシート高が834mmと高いこともあり、筆者の身長(171cm)でもかなり前側に座らないと安定した足つきが確保できないためだ。シートも前方に向かって斜めに配されているため、自然と前傾にならざるを得ないポジションとなる。隆起した筋肉にも見えるマッシブなタンクが17.5Lという大容量なことも要因だろう。走り出す前から臨戦態勢のようなアグレッションを車体から感じた。

身長171cm、体重65kgの筆者が両足ツンツン。車重は200kgあるので、多少恐怖心を感じる

片足でもつま先。ポジションは見ての通り前傾で、まさにストリートファイターといった出で立ち

フロントブレーキには当然の如くブレンボ製ラジアルマウントシリンダーを装備

クラッチ側もブレンボ製油圧式ラジアルシリンダーである

メーターは5インチTFTカラーディスプレイを装備。モタードのように幅広のハンドルバーは高い剛性を持つ

ブレーキランプ単体の装備はなく、ウィンカーユニットと一体化されている

フロントブレーキはブレンボ製4ポットキャリパーを装備、フロントサスは「SAT(セミアクティブサスペンション)」で自動調整機能を持つ

スイングアームは片持ち式を採用。リアタイヤは幅200mmと極太である

圧倒的な暴力性と電子制御による知性を感じる“機械獣”だ!

“THE BEAST”と呼ばれるほどのモンスターマシン。エンジンをかけるだけでも冷や汗をかく感覚を持つ。多少緊張しつつもエンジンをかけると、獣の咆哮のような野太いエンジン音とエキゾーストノートを響かせた。

走行モードは5つから選択可能で、最初はデフォルトである「STREET」モードで試乗。フルパワーではあるもののスロットルレスポンスが安定している“らしい”のだが、少しスロットルを開けただけでも強烈なトルクで車体が前へ押し出される。搭乗者の“進みたい”という意志よりも、マシンが前に出る力の方が強いイメージだ。

デフォルトモードであっても走行中は予断を許すことができず、少しでもスロットルを開けすぎてしまえば吹っ飛んでしまうほどの加速力である。筆者はVブースト付きのVmax1200に乗っているのだが、例えるならば“常にVブーストを発動させている”かのような加速なのだ。体感したことのない人からしたら「何言ってるんだ?」と思うだろうが、車体にしがみつかなければ命の危険を感じるレベル、といえば伝わるだろうか。

そんなVブースト顔負の「1390 SUPER DUKE R EVO」でストレートで加速すると一瞬にして景色が変わり、身体を持っていかれないように必死にニーグリップの力を入れることになった。パワーウェイトレシオ1:1の世界を実感すると同時に、有り余るパワーを感じることができる。

圧倒的な加速力で緊張感のある走りが楽しめる

とはいえ、そこまでのモンスターマシンであるのにも関わらずあまり恐怖心を感じなかったのは、ダブルディスク4ピストンブレンボキャリパー、WP製の前後電子サスペンション「SAT」という豪華な足回りのおかげだ。「SAT」とはセミアクティブサスペンションのことで、路面からの入力に応じて減衰力を自動で制御し、乗り心地と操縦安定性のバランスを保つサスペンションシステムである。これらのおかげで暴力的な加速からのブレーキングでも車体が安定し、恐怖心を和らげてくれるのだ。

電子サスペンション「SAT」により、どのシーンでも車体をリカバリーしてくれた

そしてサーキット走行時に使用する「TRACK」モードを選択。これに関しては流石に恐怖心が勝り一瞬しか使用しなかったのだが、まさに“異次元の加速力”を体感した。「STREET」よりもスロットルレスポンスが鋭くなり、少しでもスロットルを開ければ爆発的な加速を見せてくれる。とてもではないが、「TRACK」や「PERFORMANCE」といった加速重視のモードは公道での使用はオススメできないと感じた。それほどに強烈である。

1390 SUPER DUKE R EVOを勧めるとしたらどんな人?

これに関してはもうズバリ、どんなシーンでもスポーティな走りがしたい人と言うほかない。単に排気量が大きくパワフルだとか、速いだとかという話ではなく、とにかく“圧倒的な加速”が体感できる特性を持つからだ。ストリートファイター特有の扱いやすいポジションや、盛り込まれた電子制御による安定感も併せ持っており、どんな道でもスポーティな走りを楽しむことができるだろう。

ただし、高速道路を含めて公道で「1390 SUPER DUKE R EVO」のポテンシャルを最大限引き出すことはまず不可能。今回試乗したコースもサーキットではないので、あくまで“片鱗”を見たに過ぎないのだが、一度ハマれば確実に車両の真の走りを体感したくなるハズ。まさにKTMのスローガンでもある「READY TO RACE」を体現する機体で、サーキット走行を趣味としているライダーには是非一度は体感いただきたいモンスターマシンであった。

とにかく走りに“刺激”を求める全てのライダーにオススメ! ただしスロットルの開けすぎには十分に注意したい

1390 SUPER DUKE R EVO(2024) 主要諸元

・ホイールベース:1491mm
・シート高:834mm
・車両重量:200kg※燃料抜き
・エンジン:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ 1350
・最高出力:140kW(190PS)
・最大トルク:145Nm(14.79kg-m)
・変速機:6段リターン
・燃料タンク容量:17.5L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70R17、R=200/55R17
・価格:¥2,834,000(税込)

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    このテのバイク、存在意義がよくわからない・・・
    一般道では開けることが出来ず恐怖とストレスが溜まり
    ならばとサーキットへ持っていけば乗りづらくてSSモデルの方が楽しい。

    猛獣を飼ってるんだという自己満足を満たすだけのバイク?

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