4月に行われたJAIA試乗会にて、ドゥカティの「スクランブラー Icon」に試乗。なんとなく「初心者には不向きなバイクなんだろうな」と勝手に想像していたが、良い意味で期待を裏切られた。その感想を元バイク屋営業の視点からお伝えしていきたい。

シート高795mm、車両重量180kg前後で誰が乗ってもフレンドリーな仕様!

ドゥカティの現行800ccスクランブラーシリーズの原型が誕生したのは2014年のこと。その後モデルチェンジを経つつ、803cc空冷L型2気筒デスモドロミック2バルブエンジンを搭載する現在の「スクランブラー」の形となった。エンジン、フレームを見直した結果、装備重量で4kgの軽量化、さらにフルLED化を果たしている。

今回試乗した「スクランブラー Icon」は、現行スクランブラー800シリーズのいわばベーシック版。ポストヘリテージ色を強めた「スクランブラー Full Throttle」やカフェレーサー色を強めた「NIGHTSHIFT」、ブラックスタイルである「Icon dark」など多数のファミリーを抱える。全てにおいて言える特徴としては非常にファッショナブルという点で、自身のライフスタイルやセンスに合わせて“自分らしい一台”を選ぶことができるのだ。

スクランブラー Icon イエロー。デザイン性が非常に高く、一目でドゥカティと分かる独自性も併せ持つ

車体に比べてファットな180タイヤがスクランブラーらしさを強調。ナンバーステーとフェンダーが一体となっている

さて、そんなスクランブラー800シリーズのベーシック版「スクランブラー Icon」だが、最初の印象は「そうは言うもののスクランブラーでしょ? 足つきの悪さで乗れる人も限られてしまうのでは?」という感想。そもそも800ccという大きな排気量が“扱いやすさ”とは無縁の存在だという思い込みもあり、ファッショナブルで若いライダーに支持を得そうなものの、バイクに乗り始めの初心者向にはオススメしづらいと思っていたのだ。

しかし実際に跨ってみるとそんな固定概念が一気に吹き飛んでしまった。まず跨るだけで体感できるほどの圧倒的な軽さに驚いたのだが、もっと驚いたのはその足つきの良さ。身長171cmで少し厚めのライディングシューズを履いている筆者の踵がほんの少し浮く程度なのだ。もちろん片足ならべったりで、十分膝が曲げられる余裕もある。

身長171cmの筆者が両足の踵がほんの少し浮く程度。ポジションもアップライトで非常に楽な姿勢だ

片足ならば足裏べったりの状態。車重が軽量のため、風にあおられても全く不安はない

シート高は795mmがノーマルなのだが、780mmのローシートも用意されており、より足つきに不安が残る人であればローシートという選択肢もある。加えてこの軽さ。燃料無しの半乾燥重量で176kgと、250cc並みの車重を実現しているのだ。これならば初心者でも怖いと感じない程度だろうし、女性にも強くオススメできる。

同車といえばのトレードマークであるXデザイン採用のヘッドライト

タンクのスクランブラーロゴがシンプルながら高級感を演出している

ヘッドライト同様、Xマークがあしらわれたシート

空冷L型ツインのデザインも唯一無二

シンプルかつ短い円筒サイレンサーがレーシーなイメージを与えている

4.3インチTFTメーターは小ぶりながら見やすい。ライドモードやシフトインジケーター、ガソリン残量といった知りたい情報のみをまとめたシンプル構造だ

シングルディスクにブレンボキャリパーを装備。スポーク風のキャストホイールもスクランブラーらしさを演出している

全域でトルクフルな扱いやすさ! ヒラヒラと曲がり、ストレートの力強さも楽しめる一台

今回は1周数百メートルほどの小さなコースで試乗。少し長めのストレートやスラロームができるパイロンエリア、Uターンエリアが各2か所ずつ用意されていた。まずエンジンをかけてすぐ実感したのは、空冷L型2気筒の心地よいパルス感。アイドリングの段階で803ccの力強さを十分感じることができ、走り出す前からワクワクとしてしまう。

スロットル操作無しの半クラッチでも十分車体が進み、軽い車重と803ccという大排気量の恩恵を実感。スロットルを少しづつ開け、低速域での走行も想像通り非常にトルクフルだ。最高出力は73ps@8,250rpm、最大トルクは65.2 Nm@ 7,000rpmと意外に回す系の印象だが、軽快な車両には十二分なトルクなのだろう。

ストレートに進入してスロットルを大きく開けると、最初の印象とは異なる軽快な走りを見せてくれる。もちろん最初から軽快ではあったのだが、やはりよく回るエンジンで軽々と前に出ていく印象なのだ。トルクフルでありながら、走り始めるとそのトルクを感じさせない軽快さが非常に取っつきやすい。

ストレートでは軽快に回り、低速時にはトルクフルな走りでUターンも楽々

そしてスラロームだが、予想通りヒラヒラと軽快に曲がってくれる。幅広かつ大きく手前側にセットされたハンドルバーの操作性はバツグンで、24°という鋭いキャスター角、KYB製倒立フォークが織りなす旋回性の高さが魅力的だった。もちろんUターン時にもその恩恵は大きく、車体をあまりバンクさせずとも進みたい方向へ素直に進む。トルクフルかつ軽快な乗り味は街乗りからワインディングまで幅広く楽しむことができるだろう。

大胆に手前側へセットされたハンドルバー。剛性も高く、車体からのフィードバッグをクリアに感じることができる

スクランブラー Iconを勧めるとしたらどんな人?

今回「スクランブラー Icon」に乗って感じたのは、圧倒的な軽さと足つき、そして極限の扱いやすさだ。正直ここまで取っつきやすくフレンドリーなバイクだとは思っていなかったので、筆者がドゥカティに感じていた“とにかく走りに特化した”イメージが大きく変わることになった。

結論、元バイク屋営業が「スクランブラー Icon」を勧めるとしたら、初めての大型でとにかく乗りやすい車種を考えている人となる。最初の大型バイク、というものは人によって敷居が高く、「本当に乗れるのだろうか・・・」と不安を抱く人も少なくない。しかし「スクランブラー Icon」ならば、今まで乗っていた中排気量クラスと同じ感覚で乗れてしまうだろう。もちろん最初から大型免許を取得した人にも強くオススメできるし、「足つきや取り回しに不安が残る…」という人にも取っつきやすい。信じられないかもしれないが、250ccクラスの感覚で楽しめる点が最大の特徴と言える。

かといって、エンジン自体は800ccの出力。レースでも実際に使われるデスモドロミック機構も搭載しているため、純粋に走りが楽しみたいライダーも満足できるはずだ。

ファッショナブルで扱いやすく、乗っていて素直に楽しいと思えるバイクが欲しかった人や、気軽にライディングが楽しみたい全てのライダーにオススメしたい。

非常にフレンドリーでずっと乗っていたくなる特性を持つ「スクランブラー Icon」

スクランブラー Icon(2025) 主要諸元

・ホイールベース:1449 mm
・シート高:795mm
・車両重量:176kg
・エンジン:空冷4ストロークV型2気筒 803cc
・最高出力:53.6kW(73PS)/8250rpm
・最大トルク:65.2N・m/7000rpm
・変速機:6段リターン
・燃料タンク容量:14.5L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/80-18、R=180/55-17
・価格:133万3000円~

【元バイク屋営業インプレ】まるで250cc並みのフレンドリーさ! L型ツイン803ccエンジン搭載のドゥカティ「スクランブラー Icon」を試乗 ギャラリーへ (17枚)

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コメント一覧
  1. あま より:

    最近のバイクのデザイナーは、リアフェンダーやテールカウルを長くしたら4ぬ病気か何かに罹ってるのか?

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