本格オフロード志向のヤマハ テネレ700が2025年型で初のビッグチェンジを敢行。電子制御スロットルの導入により走行モード&トラコンを追加したほか、外装やサスも刷新した。3月31日の国内発売が迫る中、大阪MCショーの実車を元に変更点と別売アクセサリーを解説しよう。

電子制御が一挙充実、ライディングの自由度もさらに高まった

2019年のデビュー以来、ライバルのアドベンチャーバイクより本格指向のモデルとして知られるヤマハのテネレ700。MT-07ベースの270度クランク並列2気筒688ccエンジンを専用フレームに搭載し、前21&後18インチワイヤースポークホイールで足元を固める。

2025年型では初めてのビッグマイナーチェンジを実施。MT-07と同様に電子制御スロットルを導入したほか、新型のサスや外装、メーターなど変更点は多岐に渡る。日本仕様は3月31日、145万2000円で発売される。

2025年型Ténéré (テネレ)700。2019年の登場以来、初の大型変更を受け、外装を一新している。日本仕様は3色設定で、展示車はブルー。1996年型のYZとWRレーサーを皮切りに多様なモデルに採用されている伝統的なカラーだ。他にマットグレーとライトグレーが選べる。

LEDヘッドライトは従来の丸4眼に対し、横長の4灯に。最新のYZF-R9やR3などを思わせるクールなイメージに。新採用された内部のY字型マウントも鮮烈だ。

燃料キャップをフラットなタイプに変更し、タンク形状も見直して天面を低く抑えたことで、ライダーがより動きやすくなった。ニーグリップ部分はスリム化され、よりホールドしやすい形状に。

シートは前後分割式から一体型のフラットタイプに変更。ラリーモデルを意識した設計で、ライディングの自由度が増した。

電スロで走行モード&トラコンを導入、内部パーツも熟成した

688ccのCP2(クロスプレーン並列2気筒)は、エンジンを共有する新型MT-07と同様に電子制御スロットルを採用した。これによりライディングモードを獲得。「スポーツ」と穏やかな特性の「エクスプローラー」という2モードを選択できるようになった。

トラクションコントロールも未搭載だったが、新型では電スロの採用によりオンオフ可能なトラコンも追加されている。

さらに吸気ダクトをショート化することで低回転トルクを太らせ、一段とオフ走行での戦闘力をアップ。最新排ガス規制に対応しつつ、最高出力73ps/9000rpm、最大トルク6.9kg-m/6500rpmを堅持している。

また、スムーズなギヤ変更を実現するためのギヤボックス内部を改良。1~3速までのドッグ穴とツメの数を5→6枚に増やしてショックを軽減した。4~6速はドッグの角度を変更し、スロットル開閉時の挙動をスムーズにしている。

270度クランクの688cc並列2気筒は、クラッチのプッシュレバー位置などを後ろに移動。さらにカバーも変更し、ブーツに当たりにくい構造とした。展示車はアクセサリーのスキッドプレート(5万5000円)を装着。標準プレートより保護範囲が広く、厚みを4mmにアップしている。

別売アクセサリーのラジエターガード(2万7500円)は軽量&高強度なアルミ素材に耐久性を向上させるコーティング済み。車名ロゴも入る。さらにアップ&ダウン対応クイックシフター(2万900円)と、振動を抑えて乗り心地を向上させるパフォーマンスダンパー(3万6300円)を装着。

サスはフロントのイニシャル調整が可能に、リヤはリモコンアジャスター搭載

専用の鋼管ダブルクレードルフレームは従来型を継承するが、耐久性を向上させるため、サイレンサーブラケットに補強を追加。またユーザーからの要望を受け、サイドスタンドスイッチを再設計した。

サスも新型だ。従来は非装備だったフロントフォークのイニシャル調整機能を新搭載。フォークトップに、従来からの伸&圧側減衰力調整機構に加え、15mmの調整が可能なイニシャルアジャスターを設置した。

リヤはセッティングとリンク機構を変更。ラリーマシンの技術を還元したプログレッシブリンケージは従来型と同じ 200mmのホイールトラベルを維持しつつ、サスストロークが増加した。

また、リヤは元々フルアジャスタブルだったが、リザーバータンク付きに変更。イニシャルアジャスターも別体式となり、より調整がイージーになっている。

車重は従来から3kg増の208kgにアップ。最低地上高240mmやホイールベース1595mmなどのディメンションは変わらない。

φ43mm倒立フォークは、210mmのストローク量を確保。ブレーキはブレンボ製2ポットにφ282mmの軽量ウェーブディスクを装着する。タイヤはオンオフ兼用のピレリ社製SCORPION RALLY STR。

リヤはブレンボ1ポットキャリパーとφ245mmウェーブディスクの組み合わせ。ブレーキペダルは位置の微調整が可能だ。スイングアームはアルミの重力鋳造により軽量で良好な剛性バランスを実現している。

専用の6.3インチ液晶メーター搭載、スマホ接続も可能だ

テネレ700の特徴だったラリーマシン風の縦長5インチカラーTFTメーターは、新設計の6.3インチに変更。新たにアプリを通じてターンバイターンナビなど多数の機能が利用可能になった。

メーターの刷新に伴い、ジョイスティック付きのスイッチボックスも導入。直感的に各種操作ができるようになった。

メーターは「Explorer」「Street」のデザインテーマを設定できるのは従来どおり。メーター右横のUSB-C充電ソケットも継続採用される。

縦長5インチカラーTFTメーターは、6.3インチに拡大。メーター左側のABS切り替えスイッチで前後オンオフ、リヤのみオフ設定が可能だ。右側に防水キャップ付きのUSB-Cソケットも備える。

縦型メーターにより視線移動が少ない。コクピットはブラックアウトされ、精悍なイメージだ。

ハンドル右手元にライディングモードの切り替えスイッチを採用。

左側スイッチボックスは新型。5方向に操作できるジョイスティックを採用したほか、ウインカーの3回点滅機構や自動キャンセル機能も追加された。

シート高を下げるアクセサリーやパッケージ車もアリ

オフ車らしくシート高は875mm、最低地上高は240mmと高いが、別売で約15mm座面を下げられるローシート(3万3000円)と、シート高を約15mm下げるローダウンリンク(1万9800円)が用意される。

さらにこの2つを装備したアクセサリーパッケージ「テネレ700 Low」(147万4000円)の販売も予定している。価格は車両本体より+2万2000円に収まっており、パーツを後付けするより断然オトク。シート高がどれほど下がるかは不明だが、845mm程度にダウンできるか。いずれにせよ足着き性で躊躇している人には朗報だ。

Ténéré700(2025)主要諸元

・全長×全幅×全高:2370×935×1455mm
・ホイールベース:1595mm
・シート高:875mm
・車重:208kg
・エンジン:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 688cc
・最高出力:73PS/9000rpm
・最大トルク:6.9kg-m/6500rpm
・燃料タンク容量:16L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=90/90-21(チューブタイプ)、R=150/70R18(チューブタイプ)

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