
ビモータがEOCMA2023で発表したクロスオーバーモデル「TERA(テラ)」が、大阪モーターサイクルショーのカワサキブースに展示されている。ハブセンターステアリング機構を持ったフレームにH2由来のスーパーチャージドエンジンを搭載した、この超弩級とも言える「TERA」の各部をチェックしていく。
ビモータがこだわる「ハブセンターステアリング」
ビモータは1990年にフロントにハブセンターステアリング機構を採用した「テージ1D」を発表し、その先進的な機構とデザインは大きな話題となった。1993年にはヤマハからもハブステアリング機構を採用した「GTS1000」が発売されたが、結局このステアリング機構が根付くことはなかった。ビモータが再びこのステアリング機構を採用したモデルを発表したのは2019年のEICMAで、「TESI H2」と名付けられたこのバイクはカワサキのH2用スーパーチャージドエンジンを搭載していた。
今回、日本で初公開された「TERA」はビモータとしては珍しいクロスオーバーモデルで、快適性を求めたシートや、グリップヒーター、USB電源ソケット、パニアケースなどおよそビモータらしくない装備が用意されている。
「TERA」のフレームは「TESI H2」のフレームを進化させた新設計のもので、エンジンをストレスメンバーとして削り出しのアルミによって構成されている。実車で確認すると、フレームを構成するアルミ製部品は非常に高い精度で美しく仕上げられており、外装部品を兼ねたシートレールは内部にリブ加工が施されている。ボディパーツの素材には基本的にカーボンが使用されており、そのコントラストがビモータ独自の機能美を生み出している。
ステアリングシステムは片側35°という大きな切れ角を持つのだが、ハンドルがブレーキキャリパーの上に取り付けられているリンクを介してよりダイレクトにフロントホイールと接続されたことによって実現されている。これによってハンドルの切れ角が少ないというハブセンターステアリング機構が克服され、より汎用性の高い車体となっている。
前後のスイングアームはブラックアルマイト仕上げとされ、ブラックでペイントされたホイールやエンジンとエンジンから足回りにかけてを引き締める。サスペンションは「TESI H2」と同様に前後のショックユニットがシート下に並べて配置されており、撮影車のサスペンションは前後とも標準のオーリンズ製TTX36が装着されていたが、オプションでマルゾッキ製の電子制御サスペンションが用意されている。このルゾッキ製の電子制御サスペンションを装着すると、標準のオーリンズ製のフロント114mm/リヤ135mmというホイールトラベルが、フロント145mm /リア165mmへと拡大する。
カワサキの技術を投入し、進化したビモータ
パワーユニットはカワサキのH2系で、電子制御系も基本的に継承している。スーパーチャージャー付きの水冷DOHC4バルブ直列4気筒ユニットは、998ccの排気量から最高出力147.1kW(200PS)/11000rpm、最大トルク137N・m(13.9kgm)/8500rpmというスペック。
電子制御は3モードのKTRIC(カワサキトラクションコントロール)やクルーズコントロール、エンジンやシャーシの電子制御を統括してスムーズなコーナリングを実現するKCMF(カワサキコーナリングマネージメントファンクション)、上下対応のKQS(カワサキクイックシフター)など最新のものが与えられ、安全かつ速く走ることが可能となっている。
ビモータがカワサキの傘下となったことで、カワサキのあらゆる技術を投入することが可能となり、ビモータのシャーシ技術と合わさってこの「TERA」のようなモデルを生み出すことが可能になった。これはビモータのような小規模メーカーが、今後もバイクを作り続けていくためには必要なことと言えるだろう。今回「TERA」がカワサキブースに展示されたということは、「KB4」のようにカワサキディーラーで販売されるということだろう。価格や販売台数についてはまだ情報がないが、ビモータのバイクは今後より身近になるはずだ。
TERA主要諸元(2025)
・ホイールベース:1445mm
・シート高:820±30mm
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒998cc+スーパーチャージャー
・最高出力:147.1kW(200PS)/11000rpm
・最大トルク:137N・m(13.9kgm)/8500rpm
・燃料タンク容量:22L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/80-17、R=190/55-17
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