ユーロ5+対応のモデルチェンジが行なわれないことが発表されている「YZF-R1」シリーズは、国内向け公道モデルとしては2025年モデルが最終型となるはずだ。そのため、発売前にも関わらず既に入手困難とも言われている。大阪モーターサイクルショーにおいて、発売直前の上級グレード「YZF-R1M ABS」を中心に各部をチェックしていく。

最新の電子制御で200PSを手なづける

2025年型「YZF-R1」シリーズの最大の特徴と言えるのは、ヤマハファクトリーレーシングモトGPチームからの技術的フィードバックに基づいて設計・開発されたというフロントのウイングレットだ。このウイングレットはカーボン製で、「YZF-R1M ABS」はフロントカウルとシートカウルがカーボンで製作されている。ヘッドライトは”R”デザインのアイコンとなる LED デュアルヘッドランプを採用し、フロントウインカーをミラーにビルトインするなどしてスポーティなデザインに仕立てられる。

カーボン製の外装を纏う「YZF-R1M ABS」は、ウイングレットの装着でよりレーシングマシンへと近づいている。

テールライトがシートカウルにビルトインされるなどしてコンパクトにまとめられ、リアビューはレーシーな雰囲気を醸し出す。

スタンダードモデルの「YZF-R1 ABS」の方が、ブレンボ製のブレーキシステムの採用など2024年モデルからの変更点が多い。

新設されたウイングレットはカーボン製で、「YZF-R1M ABS」はカウルもカーボン製となる。LEDのポジションライトとヘッドライトは、”R”デザインのアイコンと言える。

「YZF-R1 ABS」に 装着されるウイングレットもカーボン製で、カウルと素材が異なっているためより存在感を大きく感じる。

「YZF-R1M ABS」のタンク前方にはシリアルナンバーが入る。サスペンションはガスによって0.6MPa加圧され、キャビテーションを防いでいる。

「YZF-R1 ABS」のフロントブレーキマスターは、キャリパーと同じくブレンボ製がセットされる。

メーターはデジタル表示で、スピードやタコメーターの他に、モード設定や各種パラメーターが表示される。

ニーグリップ部が深く絞り込まれたフューエルタンクはアルミ製で、容量は17Lとなる。

エンジンは「YZF-R1M ABS」、「YZF-R1 ABS」で基本的には同じスペックとなる。定評のあるクロスプレーンクランクシャフトの4気筒で、最高出力200PS(147kW)/13,500rpm、最大トルク11.5kg-m(113Nm)/11,500rpmを発生する。ピストンには裏面にボックス形状の“ボックスブリッジ”を設けることで剛性を維持しつつ軽量化を果たした鍛造タイプを採用し、破断分割式チタンコンロッドと組み合わせることでロス馬力を低減している。

エンジンはクロスプレーンクランクを採用したDOHC4バルブ直列4気筒で、997ccの排気量から147kW(200PS)/13500rpmという最高出力を発生する。

チタン材を採用することで軽量化されたエキゾーストシステムは、4→2→1集合のミッドシップとすることで排気効率の確保とマス集中化を両立。スロットルバルブの駆動にはスロットルケーブルやプーリーを廃したYCC-T(ヤマハ電子制御スロットル=Yamaha Chip Controlled Throttle)を装備することで自然かつダイレクトな操作感を実現している。

チタンを使用したエキゾーストシステムは車体の中央付近にまとめられることで、マスの集中化に寄与している。

このエンジンを支えているのが、レースからのフィードバックを受けた最新の電子制御だ。走行シーンや路面状況などに合わせてエンジンレスポンスや出力特性を制御するYRC(YAMAHA Ride Control)が装備され、出荷時には1~4の各PWRに適したその他の各制御モードが推奨設定されているが、好みや走行環境に応じて各制御モードを自由に組み合わせることができる。また、あらゆる走行シーンにおいてLCS(ローンチコントロールシステム)、TCS(トラクションコントロールシステム)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)、QSS(クイックシフトシステム)、BC(ブレーキコントロール)、EBM(エンジンブレーキマネージメント)の各制御を連動させることで、意のままのライディングを可能としている。

「YZF-R1M ABS」はÖHLINS製のERSを装備

フレームはヤマハの伝家の宝刀と言えるアルミ製デルタボックスフレームで、高剛性でありながら、縦・横・ねじりの最適バランスに調整し、アルミ製スイングアームとの組み合わせで俊敏かつ安定感のあるハンドリングを実現している。

さらに、「YZF-R1M ABS」には前後サスペンションを統合制御するÖHLINS製のERS(エレクトロニックレーシングサスペンション)が搭載され、各センサー情報に基づいて前後サスペンションの伸・圧減衰力を統合制御。このサスペンションシステムはフロントアクスルブラケット部にガスシリンダーを装備して0.6MPa加圧することで、キャビテーションの発生を抑制して高負荷時でも安定した減衰力を発揮することが可能となっている。

「YZF-R1M ABS」のÖHLINS製リアショックユニットはフロントと共に電子制御され、常に走行状態に最適な減衰力が設定される。

2025年型「YZF-R1 ABS」のフロントブレーキにはブレンボ製のモノブロックキャリパー「Stylema®」が新採用されているが、「YZF-R1M」のブレーキシステムは2024年型を踏襲。ホイールは軽量なマグネシウム鋳造で、表面に静電塗装を施すことで優れた強度・耐蝕性を備えている。また、リアタイヤのサイズは「YZF-R1」が190/55-17なのに対して、「YZF-R1M」では200/55/17へとサイズアップされている。

「YZF-R1M ABS」にはÖHLINS製のERS倒立フロントフォークを装備。ブレーキはブレンボではなく、従来型が踏襲されている。

「YZF-R1 ABS」はフロントフォークがKYB製となり、ブレンボ製のモノブロックキャリパー「Stylema®」が装着される。

この2025年型「YZF-R1M ABS」は2025年3月31日に税込328万9000円で、「YZF-R1 ABS」は2025年5月30日に253万円で発売される予定なのだが、事前予約で完売状態との話が聞こえてきている。せっかくモーターサイクルショーに展示されるのだから、欲しい人全員が手に入れられるように増やして欲しいところ。ヤマハさん、ぜひお願いします!

YZF-R1M ABS主要諸元(2025)

※【】内はSTD
・全長×全幅×全高:2055×690×1165mm

・ホイールベース:1405mm

・シート高:860【855】mm

・車両重量:203【201】kg

・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒997cc

・最高出力:147kW(200PS)/13500rpm

・最大トルク:113N・m(11.5kgm)/11500rpm
・変速機:6段リターン

・燃料タンク容量:17L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=120/70-17、R=200/55-17【F=120/70R17M/C、R=190/55R17M/C】
・価格:328万9000円【253万円】(税込)

【大阪MCショー速報】発売前なのにもう手に入らない? 最後の「YZF-R1M ABS」の実車をチェックする (14枚)

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