オンロードはもちろん、オフロードでも高い走破性を持つことで、世界的に人気の高いアドベンチャーモデル。ロングツーリングなどで、道を選ばない高い安定性や快適性が魅力ですが、一方で、こうしたモデルたちは比較的シート高が高いため、身長が低いライダーなどにとっては、足着き性の悪さが悩みのタネといえます。ライダーによっては、停車時に片足でもつま先がツンツンとなり、例えば、信号待ちなどで停まる際、「立ちゴケするのでは?」といった不安を持つ人も多いでしょう。
その対策として、メーカーによってはローダウン・サスやローシートなどもオプションで用意されています。でも、せっかくの高性能を存分に味わうには、やはり本来の仕様のままで乗りたい。そんなライダーに最適なのが、電子制御サスペンションを搭載し、停車時に自動で車高を下げてくれるモデルです。
ここでは、BMWやハーレーダビッドソン、ドゥカティやトライアンフなど、海外メーカーが採用する自動ローダウン機構付きの最新アドベンチャーモデルをピックアップ。また、ヤマハ「トレーサー9GT」の2025年新型に採用された新機能についても紹介します。

BMW R1300GS/アドベンチャー

まずは、BMWのバイクブランド「BMWモトラッド」がリリースする「R1300GS」と「R1300GSアドベンチャー」。1980年に登場した初代モデル「R80G/S」以来、40年以上もの歴史を誇るGSシリーズの最高峰といえるこれら2モデルには、「アダプティブ車高制御」という機能が採用されています。

2023年に国内導入したのがR1300GSです。パワートレインには、BMW伝統の水平対向2気筒、通称ボクサーエンジンを採用。排気量は従来モデル「R1250GS」の1254ccに対し1300ccへアップさせるなどで、最高出力を136PSから145PSへ大幅に増大。エンジンを負荷分担に利用する板金シェル構造の新型フレームや、最新の電子制御式ダイナミックサスペンション「DSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)」などの採用により、様々なシーンで高い安定性や快適性を実現しています。

ラインアップには、スタンダードの「R1300GS」、スポーツ仕様の「GSスポーツ」、ロングツーリングで快適な装備を持つ「ツーリング」といった3タイプを用意。また、ツーリングには、クラッチ操作とギアチェンジを自動化することで、シフト操作が不要な「ASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)」仕様車も設定しています。なお、価格(税込み)は285万円〜です。

また、2024年に国内導入した最新モデルがR1300GSアドベンチャー。従来モデルよりコンパクトになった完全新設計の1300cc・ボクサーエンジンを搭載。大容量30Lの燃料タンクや、最新の電子制制御スペペンション「DSA」などを採用することで、よりアドベンチャー的要素を強化したモデルです。

ラインアップには、ロングツーリングに最適な「ツーリング」とスポーツ仕様の「GSスポーツ」を用意。また、ツーリングには、シフト操作が不要な「ASA」仕様車も設定し、価格(税込み)は333万5000円〜です。

そんなR1300GSやR1300GSアドベンチャーに採用するのが、「アダプティブ車高制御」という機能です。これは、停車時や低速走行時に、前後サスペンションに備わった機構の油圧を抜くことで、シート高を30㎜下げ足着き性を向上させるというもの。また、走行速度が上がるとシート高は標準に戻り、走行安定性や快適性を高次元で実現するというシステムです。

最新型のR1300GSアドベンチャーでは、この機構をGSスポーツに設定。また、ツーリング仕様とツーリングASA仕様には、シート高(サスペンション長)をさらに20mm下げる「アダプティブ車高制御コンフォート」を採用しています。

これにより、各モデルのシート高は、たとえば、「アダプティブ車高制御」付きのGSスポーツの場合で、選択可能なハイ/ローシートの標準時が870/890mmなのに対し、停車時・低速走行は840/860mmに変更。また、「アダプティブ車高制御コンフォート」付きのツーリングやツーリングASAでは、選択可能なハイ/ローシートの標準時850/870mmに対し、停車時などは820/840mmになるように設定されています。

一方、R1300GSには、GSスポーツとツーリングに設定。たとえば、ツーリングのシート高は、標準で850mmなのに対し、停車時などには820mmへ下がることで、足着きや取り回し性などを向上させます。

これら2モデルは、車体が元々大柄なだけでなく、車両重量もR1300GSで237kg、R1300GSアドベンチャーでは269kgとかなり重い設定です。そのため、シート高を下げるこうした機構は、体格が小柄なライダーなどには、かなり大きな安心感を生むといえますね。

ハーレーダビッドソン・パンアメリカ1250ST/スペシャル

ハーレーダビッドソンのアドベンチャーモデル「パンアメリカ1250スペシャル」と、2025年最新モデル「パンアメリカ1250 ST」には、「アダプティブライドハイト」というシステムが採用されています。

ハーレーダビッドソンが手掛ける初のアドベンチャーモデルとして2021年に登場したのが「パンアメリカ1250スペシャル」。エンジンには、排気量1252ccの「エボリューションマックス(Revolution Max)」を搭載し、150馬力もの出力と柔軟なパワーバンドとのマッチングで、オンロードからオフロードまで、幅広いシーンでライディングを楽しめる特性を実現しています。

また、ショーワ製のセミアクティブ電子制御サスペンションや、好みや状況に応じ選べる5つのライドモード(スポーツ、ロード、レイン、オフロード、オフロードプラス)など、最新の電子制御システムも採用。TFTカラータッチスクリーンを採用したメーターなど、利便性の高い装備も魅力です。

一方、最新型のパンアメリカ1250STは、よりオンロードでのパフォーマンスを高めた仕様です。パンアメリカ1250スペシャルがフロント19インチ、リア17インチのブロックパターンタイヤを採用するのに対し、前後17インチのスポーツ系タイヤを採用。新型ロアシートの採用でシート高は825mmに低減し、着き性も向上(パンアメリカ1250スペシャルはローシート850mm/ハイシート875mm)。クラッチレバーの操作なしでシフトチェンジを可能とするクイックシフターも装備するなど、まさにオンロードでの走破性や快適性などを重視した装備が特徴です。

そんな2モデルに採用されているのが、「アダプティブライドハイト」という機能。これも、いわゆる車高の自動調整機能で、停車時にシート高を低げて、足着き性を向上させるもの。また、走り出して速度が上がってくると、サスペンションへのウエイト入力を連続感知しながら前負荷を調整。サスペンションサグ(サスペンションの沈み込み量)を一定に保つことで、安定した走行を実現します。

なお、両モデルの価格は、パンアメリカ1250スペシャルの2024年モデルで258万6800円〜。STとスペシャルの2025年モデルについては2025年3月以降の発表予定です(2025年3月16日現在で未公表)。

ドゥカティ・ムルティストラーダV4S/V4ラリー

20年以上の歴史を誇るドゥカティのアドベンチャーモデルが「ムルティストラーダ」シリーズ。937cc・L型2気筒の「V2」シリーズと、1158cc・90度V型4気筒を搭載する「V4」シリーズを擁しますが、V4シリーズの2025年最新モデル「ムルティストラーダV4S」には、「車高自動低下装置」と「イージーリフト機構」が追加されました。

ムルティストラーダV4の上級バージョンとして、2020年に登場したのがV4S。車体前後に搭載するレーダーにより、高速道路などで一定車間を自動で保ちながら前車を追従する「アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)」や、セミアクティブ・サスペンションなど、数々の最新装備を採用。長距離ツーリングなどの快適性を高次元で追求しているモデルだといえます。

その2025年モデルに採用されたのが、「車高自動低下装置」。これは、速度が10km/h未満に下がると車高をすばやく降下させることにより、ライダーの足つき性と安全性を向上させる機能です。車高は、速度が50km/hを超えると標準位置に戻るため、本来のパフォーマンスを発揮することが可能。なお、このシステムでは、負荷に応じて最大30mmまで車高を低下させることができます。

また、「イージーリフト機構」とは、イグニッションをオンにしたときに、セミアクティブ・ユニットのバルブを約3分間完全に開くことによって、サスペンションの減衰力を制御するというものです。これにより、フロントおよびリアのサスペンションが柔らかくなり、車高を低下。サイドスタンドを払ってバイクを引き起こす労力を軽減する効果を生むといいます。

ちなみに、ドゥカティで同様の機能を搭載したのは、ムルティストラーダV4のラリー・バージョン「ムルティストラーダV4ラリー」の方が先です。

大容量30Lの燃料タンクや新型のフロント・スクリーンなど、より長距離ツーリングに最適な装備を持つのがV4ラリー。200mmのストローク量を持つセミアクティブ電子制御サスペンション「DSS EVOシステム」や、オフロード走行専用のパワーモードを備えた「エンデューロ・ライディングモード」などにより、悪路での高いコントロール性も追求しているモデルです。

そんなV4ラリーでは、停止時または低速走行時に、バイクの車高を自動で下げることで、シート高を870mm〜890mの範囲で可変させることができます。停車時などに足着き性が高くなり、サイドスタンドを払ってバイクを引き起こす労力も低減。幅広い体格のライダーに使い勝手の良さなどを提供します。

なお、両モデルの価格(税込み)は、ムルティストラーダV4Sが337万7000円〜、ムルティストラーダV4ラリーが360万9000円〜です。

トライアンフ・タイガー1200シリーズ

トライアンフの「タイガー1200」シリーズにも、車高調整の機能が備わっています。

独自のTプレーン・クランクを採用した1160cc・3気筒エンジンを搭載し、低回転から高回転まで、扱いやすいパワー特性を持つのがタイガー1200シリーズ。ラインアップには、オンロード指向とオフロード指向といった2つのライン、全4タイプを設定します。

フロント19インチ、リヤ18インチのアルミ製キャストホイールを装備したオンロード系には、20Lの燃料タンクを装備する「タイガー1200GTプロ」と、30L燃料タンク仕様の「タイガー1200GTエクスプローラー」を用意。

一方、フロント21インチ、リヤ18インチのチューブレス・スポークホイールを装備したオフロード系には、20Lの燃料タンクを持つ「タイガー1200ラリープロ」、30L燃料タンクを備える「タイガー1200ラリーエクスプローラー」を設定しています。

このシリーズは、2021年のモデルチェンジ時にショーワ製セミアクティブサスペンションを採用していますが、2023年8月には、それをアップデートして新機能の「アクティブ プリロード リダクション機能」を追加しました。

これは、従来からの自動電子プリロードアジャストメント機構に加え、速度が65km/h以下になるとリヤサスペンションのプリロードを自動で低減。リヤサスの硬さがさほど必要ない速度域での乗り心地などを向上する効果を生み出します。

また、停車時には、ライダーとパッセンジャーの体重、およびラゲッジの重さに合わせて、シート高を自動で最大20mm下げる機能も搭載。足着き性が改善することで、ライダーにより大きな安心感と自信を提供してくれます。

さらに、この機能は、速度65km/h以下でスイッチキューブにある「Home」ボタンを1秒間押すだけで、システムのオン/オフ切り替えも可能。好みや状況に応じた使い分けができるようになっています。

加えて、付属のシートはシート高を2段階に調整可能。GTファミリー(GTプロとGTエクスプローラー)は850mmと870mm、ラリー・ファミリー(ラリープロ、ラリーエクスプローラー)は875mmと895mmといった2種類のシート高が設定されています。

また、オプションのローシートをセットすれば、シート位置はさらに20mm低減。これらにより、最低シート高はGTファミリーで830mm、ラリー・ファミリーでは855mmとなっており、幅広い体格のライダーに対応しています。

なお、各タイプの価格(税込み)は以下の通りです。

タイガー1200GTプロ:243万5000円〜
タイガー1200GTエクスプローラー:263万5000円〜
タイガー1200ラリープロ:259万5000円〜
タイガー1200ラリーエクスプローラー:278万5000円〜

国産車ではトレーサー9GTの新機能に注目

以上が、現時点で停車時などに車高を自動で下げる機能を持つ海外製アドベンチャーバイクたちです。一方、国産では、同様の機能はまだないようですが、ヤマハのスポーツツアラー「トレーサー9GT」の2025年モデルに、ちょっと注目の機能が追加されています。

このモデルには、KYB社と共同開発による電子制御サスペンションの「KADS」を装備。IMUが検知した車体姿勢とその時の加速度、サスペンションのストロークスピード、ブレーキの液圧といった変化に応じて、減衰力を自動的に調整する機能を持っています。

そして、最新の2025年モデルでは、そのサスペンションにメインキーをオンにした際、30秒間減衰力を低下させて車両の取り回しを支援する制御を追加。自動で車高を下げる機能ではないですが、減衰力を低下させれば、サスペンションが沈み込みやすくなるのは確かです。あくまで私見ですが、おそらくドゥカティ・ムルティストラーダV4Sなどが採用するイージーリフト機構に近い効果を得られるのではないでしょうか。

ちなみに、まだ正式発表はありませんが、日本では2025年夏以降の発売を予定しているトレーサー9GTの上級モデル「トレーサー9GT+」にも、欧州仕様車には同様の機能が採用されています。その点は、おそらくスタンダード仕様と同様に、国内仕様のトレーサー9GT+にも採用されることが予想できます。

なお、新型トレーサー9GTは2025年4月15日に発売予定で、価格(税込み)は159万5000円です。

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