バック・トゥー・ザ・フューチャーやマッドマックス、ブレードランナーなど、今なお愛されるさまざまな名作SFが生まれた1980年代。望みが失われつつある荒廃した世界を舞台とした作品もあったが、そこには共通して人々をワクワクさせるテクノロジーやアイテム、未来への憧憬に足る情景が描かれていた。大友克洋監督の「AKIRA」に登場する「金田のバイク」も、そんな未来を象徴するフィクションのひとつだ。そんなエポックメイキングな一台のエッセンスを汲みつつも、独自性を打ち出した一台が新たに登場した。
トロン「ライトサイクル」を思わせるシンプルデザイン
それがアキラの世界観に影響を受けて作られたという、「Ichiban electric motorcycle(以下Ichiban)」だ。名前からして日本へのリスペクトを感じるが、それもそのはずで、デザインにおける美学として日本の侘び寂びに通じる「Kanso(簡素)」を念頭に置いているのだとか。金田のバイクというよりは、レゴのようなシンプルさを打ち出していることからも、その片鱗が感じられる。むしろ外観からすると、金田のバイクのモチーフとなった映画「トロン」の「ライトサイクル」に近くなっているような…。エッジを効かせつつデザインを整理した結果、先祖返りしたというのは面白い。
実はこのIchiban、もともとは実車として計画されたものではなかったという。デザイナーがInstagramにさまざまなコンセプトデザインをアップしていたところ、中でもIchibanが大バズり。Twitter(現X)でも、たった1か月で200万ビューを達成したというから、注目具合は凄まじい。「欲しい」「実車は?」といった反応の多さから製造が決まったというわけだ。
かわいいガワ(外観)して本格スポーツ
現状はまだ生産に向けた準備中だというが、公開されているスペックはかなり本格的だ。まず注目したいのが金田のバイクへの愛を感じずにはいられない、計45kWを発揮するモーター2基による両輪駆動だということ。しかも、0-100km/hの加速は3.5秒にもなるという。これは、エンジン車のリッタークラスに匹敵するほどの数字だ。加えて、電動バイクでは珍しいマニュアルモードも専用トランスミッションで実現し、ABSはもちろんのことトラクションコントロールまで完備するとのこと。かわいらしく見える外観からは、とても想像できないスポーティさだ。航続距離250kmに、30分充電で70%まで回復という、普段の足として十二分に使えるスペックにまで高められている。
”ゴジラ”でかっ飛ばせ!!
もっとも、Ichibanの魅力といえる機能はこれだけじゃない。それが一番の目玉である、10秒だけ使用可能な「GODZILLA MODE(ゴジラモード)」だ。ゴジラのように放射能火炎的なビームをライトから照射するスーパー攻撃モード…というわけではなく、モーターの出力を一時的に向上させるもの。カワサキのNinja eシリーズでいうところの、eBoostに相当する機能だ。もっともNinja eシリーズのモーター出力が9kWであったことを考えると、ゴジラーモード時のIchibanが発揮する加速力はとんでもないことになりそう。ゴジラのように前へ前へと進んでいく車体を操る楽しさが味わえそうだ。オーバーヒートを防ぐため、一時的なパワーアップにとどまるというところも、遊び心をくすぐる。
パワフルな走り、シンプルでカッコいいデザイン、そしてゴジラモードのぶっ飛び体験が味わえるIchibanだが、2025年3月時点ではまだ発売日も価格も未定。公式サイトでメールアドレスを登録しておくと、進捗やインフォメーションがあるときにニュースレターが貰えるので、気になる方はチェックしておこう。気が早すぎるかもしれないが、国内への導入にも期待!