超軽量&コンパクトなエンジンが異次元のスポーツバイクを生み出す

スペインで開催されたパニガーレV2Sのワールドローンチに向かう際に、羽田空港のカウンターでスーツケースを預けると17kgだった。その中にはレーシングスーツやヘルメットなど、サーキットを走るための装具が入っている。フルモデルチェンジを果たした2025年モデルのパニガーレV2Sは、前モデルからこのスーツケースと同じ重量を削減しているのか……と、図らずも試乗前から新モデルに思いを馳せることになった。

僕は2024年10月末にイタリアのドゥカティ本社を訪問。その時にドゥカティのVツインエンジン史上最軽量&最小となる『V2』と命名されたNEWエンジンの発表があったのだが、その『V2』を搭載した初のバイクが今回試乗するパニガーレV2Sとなる。前モデルから、エンジン単体では−9.5kg、車体トータルでは−17kgを実現している。

「速さよりも軽さと扱いやすさにフォーカスしたエンジンが必要でした」とドゥカティのエンジニアは言うが、正直、そのために犠牲(?)になったものも多い。新旧のパニガーレV2同士のエンジンを比較すると、前モデルは955cc、155ps、NEWモデルは890cc、120psで、パワーは35psダウン。また、エンジンのバルブ開閉機構であるデスモドローミックの廃止を悲しむ古くからのファンも多かった。

犠牲(?)と書いたのは、僕も本国のスタッフの話を聞くまでは「ついにデスモが…、35psものパワーが…」と思っていたからだ。「デスモドローミックを廃することには何も抵抗がありませんでした。それよりもエンジンが軽く小さくなることやメンテナンスサイクルの低減、カスタマーのコストが抑えられることにメリットがあります」とドゥカティのクラウディオ・ドメニカーリCEO。クラウディオさんの言葉を聞き、本社でドゥカティの開発プロセスを見るほどに、ドゥカティの決断に期待が高まると同時に、早く乗ってみたい気持ちになっていった。

そして迎えた今回の海外試乗。パニガーレV2Sで1本目の走行を終えると、犠牲になっているものなど何もないことを確信。それどころか「パニガーレV2Sはどれだけ多くの人をスポーツライディングに目覚めさせるだろう」という期待が大きくなった。890ccの質量を感じさせない圧倒的な軽快感はまさに異次元。こんなに多くの人に勧めやすいドゥカティのスーパーバイクは初めてかもしれない。

実重量以上に軽く感じるドゥカティらしいハンドリング

走るほどにパニガーレV2Sの魅力に引き込まれていく。軽さがもたらすメリットは計り知れない。驚くのは177.6kg(ガソリンレス)という実際の重量よりもハンドリングを軽く感じるところだ。パニガーレV4譲りのストリップ姿を見るとそれも納得できるはず。

ドゥカティは昔から幅の狭いエンジンを作るメーカーだ。コストがかかっても並列ツインでなくVツインを、並列4気筒でなくV4エンジンを作るのは高い運動性を追求するため。もちろん前面投影面積を減らせるから空力も良くなる。そしてそのエンジンをフレームのメイン剛体として考え、近年はその発想や手法がどんどん大胆になってきている。

穴だらけのモノコックフレームは4kgほどに収まり、コンパクトかつしなやか。また、エンジンの外側を覆うフレームがないため車体は猛烈にスリムになる。−17kgの実現は、走行中のサスペンションにかかる負荷を減らせるため、サスペンションをソフトにできるメリットもある。これらが実重量以上に軽いハンドリングを生み出す要因だ。

今回の試乗会場となったのは、2024年10月に完成したばかりのセビリアサーキット。全長4.23kmのテクニカルコースで、最高速はパニガーレV2Sの5速で235km/hほど。4速全開で切り返す高速コーナーがあるかと思えば、最終セクションは2&3速で6回も忙しく切り返すテクニカルパート。パニガーレV2Sはその全てで軽快で、さらに難しさを感じさせることもなかった。

ライダーを疲れさせにくい、優しくて楽しいキャラクター

コースとバイクに馴染んでいくと楽しさは倍増していく。ドゥカティのスーパーバイクはこれまで、走らせ方がピンポイントなところがあった。ブレーキング直後のパートでしっかりと向きを変えないと旋回&立ち上がりに結びつけにくく、旋回中にスロットルを微開してしまうとラインが膨み、ブレーキを触ると車体が起きてしまう。それは難しいけれどチャレンジのしがいがあり、上手く操作できた時は抜群に気持ちの良いコーナリングを見せてくれるのである。

しかし、NEWパニガーレV2Sはそこまでシビアな走りを求めない。まず、ブレーキングで良く止まる。路面追従性の高いシャシーとオーリンズ製サスペンション、そしてコントローラブルなブレンボ製ブレーキは、ピッチングモーションを掴みやすく、曲がるきっかけがわかりやすい。直感的にバイクの動きに追従しやすく、向き変えが決まりやすいのだ。

さらに旋回に移行してもパニガーレV2Sが積極的に綺麗なラインに乗りたがる印象で、例えラインを外しても大きくリズムを失うことがなく、リカバリーもしやすい。しかもその全てがライダーのフィジカルに負担をかけずに操作でき、15分走行しても汗をかくこともほとんどないのは、本当に驚きでしかなかった。

250ccや400ccのように切り返しが決まる運動性の高さ

セビリアサーキット後半の6回の切り返しは、テクニックも体力もいるシーン。ただ、このシチュエーションこそがパニガーレV2Sのハイライトだった。

それはまるで250ccや400ccのような振る舞いで、左右の切り返しも思い切った操作が可能。890ccとは思えないほどのコンパクトな軌跡を描き(これはもちろんスリックタイヤだからできる一面もあるが)、その美しいコーナリングの連続は、まさに恍惚の境地。いつもでも切り返しが続けばいいのにと思ったほどだ。

電子制御もしっかりとライダーをサポート。今回はスリックタイヤのためトラクションコントロールは介入しなかったが、シフトアップ&ダウンに対応するクイックシフターは丁寧な操作を心がける必要はあるが、とても滑らかに作動。加減速の双方でトラクションが途切れにくく、ドゥカティVツイン特有の気持ちよさを味わせてくれた。

試乗会終盤、ペースを落として3速や4速の3000〜4000rpmといった低い回転からスロットルを開けてみても、エンジンはしっかりとトラクションすることを確認。同時に技術説明時の「サーキットでは最高の興奮を。一般道では最大限の楽しみを」「最大トルクの70%が3000rpmで生み出され、3500〜1万1000rpmの間で最大トルクの80%を下回ることはない」というフレーズが思い浮かぶ。

海外のジャーナリストは「アジャイル(機敏)」というニュアンスをよく使っていた。他にも「ライト、イージー、セーフティ」という言葉がピットを飛び交った。そして、皆が本当に楽しそうだったのも印象的だった。

「ドゥカティの新しい章の始まり」。V2エンジン発表時に聞いたその意気込みに大きな期待をしていたが、実際にパニガーレV2Sに試乗し、その期待は確信へと変わった。この新しいパニガーレV2Sの喜びを、日本でも多くの方に体験してみてほしいと願う。

パニガーレV2Sの日本お披露目は4月19日開催の『DUCATI DAY 2025』

4月19日(土)、千葉県木更津市のポルシェ・エクスペリエンスセンター東京で『DUCATI DAY 2025』が開催される。ドゥカティスティが全国から集うイベントで様々なコンテンツを用意。ここでNEWパニガーレV2Sが日本初お披露目となる。入場料は無料(要事前申込)。

ドゥカティのパニガーレV2S 海外試乗 インプレ

ドゥカティ パニガーレV2/V2S[2025]主要諸元

・ホイールベース:1465mm
・シート高:837mm
・車両重量(燃料を除く):179kg/177.6kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブV型2気筒890cc
・最高出力:88kW(120PS)/10750rpm
・最大トルク:93.3N・m(9.5kgm)/8250rpm
・変速機:6段リターン
・燃料タンク容量:15L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=190/55-17
・価格:211万9000円/240万8000円(税込)

250cc並みの軽快感!? 前モデル比−17kgの衝撃【ドゥカティ パニガーレV2S 海外試乗インプレ】ギャラリーへ (22枚)

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    ドカティSBKの間口を広げる1台であることは間違いないでしょう。でも今の愛車(959)から乗り換えたいとはあまり思わない。狭いスィートスポットのなかでちょいと難しいのを乗りこなすのも魅力だから。959なんかはすごく乗りやすいと思うんだけど、これよりさらにフレンドリーでありながらドカティSBKの味を楽しめるなんて凄いよなぁ。
    乗ってみたら欲しくなるかもしれない😅
    とにかく見た目はどハマりです。

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