
「パニガーレV4/V4 s」からスタートした第三世代のパニガーレシリーズに、新開発された「V2」エンジンを搭載した「パニガーレV2/V2 S」がラインナップされた。伝統の90°2気筒エンジンを搭載するパニガーレV2シリーズは、今後のドゥカティ製スポーツバイクの基本となるだろう。
目次
ドゥカティのこれからを担う、「V2」エンジン
ドゥカティの生誕地であり本拠地である「ボルゴパニガーレ」に由来する、「パニガーレ」という車名がドゥカティの歴史に姿を現したのは2012年のことである。ツインエンジン時代に登場した第一世代のパニガーレは、アルミ製のモノコックフレームに新設計のスーパークアドロエンジンを搭載していた。2018年に4気筒の「デスモセディチストラダーレ」エンジンを搭載した「パニガーレV4」が登場して第二世代となり、2020年に登場した2気筒エンジン搭載モデルは「パニガーレV2」と呼ばれるようになる。
2024年に「パニガーレV4」がフルモデルチェンジ、パニガーレは第三世代となった。そして2024年11月にドゥカティの伝統であるデスモドロミック機構を採用せず、通常のバルブスプリング方式を採用した新しい2気筒エンジン「V2」が発表された。ドゥカティはこの「V2」エンジンを搭載した新型モデルを次々に発表し、新型「パニガーレV2」もこのエンジンを搭載して登場。このエンジンはドゥカティの新しい時代を象徴するものとなった。
ゼッケン93を付けた「パニガーレV2 S」をライディングするマルク・マルケス。サーキットでのトレーニングでも使用しているという。
新しいデザイン、そしてエンジンを得て進化
新型となった「パニガーレV2」は新型の「V2」エンジンを、アルミモノコックフレームと両持ちスイングアームを組み合わせた車体に搭載。デザインも全く新しくなり、完全な新型車として登場した。グレードはスタンダードの「パニガーレV2」と、オーリンズ製の前後サスペンションを装備した「パニガーレV2 S」との2グレード展開となる。
デザインは先に発表された新型「パニガーレV4」と同じ流れにあるが、よりコンパクトで洗練されたスタイルにまとめられている。アグレッシブとエレガントさを融合させたデザインは、フロントへの負荷を軽減しつつ「V2」エンジンのコンパクトさを際立たせるものとなっている。
スタイリッシュという言葉で表現するのが最適な、美しいボディデザイン。「パニガーレV4」のデザインを踏襲しているが、フロントのウイングレットを持たない。
V4ではエンジンの下に収められていたエキゾーストがシート下に突き出す。迫力という意味ではV2の方に軍配があがるか。
燃料タンクは人間工学に基づいたレイアウトが採用することで、ブレーキング時やコーナリング時のサポートを最適化。ステアリングヘッドに取り付けられた鍛造アルミ製のハンドルバーは手首に負担のかからない高さに設定され、フットペグの位置も膝への負担を軽減するように設定されるなど、ポジションは体への負担の軽減が考慮されている。
速さと美しさを両立させた「パニガーレV2」のスケッチ。ほぼこのスケッチのまま立体化されている。
「V2」エンジンは先にも触れたようにデスモドロミック機構を採用せず、通常のバルブスプリング方式を採用。排気量は890ccで、最高出力は88kW(120PS)/10750rpm、最大トルクは93.3N・m(9.5kgm)/8250rpmとなる。先代モデルが搭載していた「スーパークアドロ」エンジンは排気量955ccで、最高出力は114kW(155PS)/10750rpm、最大トルクは104N・m(10.6kgm)/9000rpmであったので、パワーで言えば26kW(35PS)もダウンしている。しかし、「V2」エンジンは「スーパークアドロ」よりもエンジン単体で9.5kgも軽く、車両全体ではは200kgから179kg(V2 Sは177.6kg)と21kgも軽量化されている。実際、前モデルからわずか0.2秒差でヴァレルンガを周回しており、ストレートスピード以外のあらゆる状況 (ブレーキング、コーナー進入、コーナリング、トラクション)で優れていることがデータで証明されている。
エンジンをメンバーとする、アルミモノコックシャーシ
新しいシャーシはフレームとエアボックスを兼ねるモノコック構造を採用し、エンジンをストレスメンバーとする。スイングアームはエンジンに直接取り付けられおり、先代の片持ちタイプから両持ちタイプへと変更され、大きく開けられた穴で強度や捻れ剛性が最適化されている。
ストリップを見ると、モノコックという意味がよく分かる。エンジンを中心にフロント側にエアボックスを兼ねたフロントフレームが存在し、スイングアームはエンジンに直接取り付けられている。
サスペンションは前後フルアジャスタブルタイプで、ライダーの好みや走行シーンに合わせてセットアップすることが可能。「パニガーレV2」はマルゾッキ製フロントフォークとKYB製リアショックを組み合わせ、「パニガーレV2 S」にはオーリンズ製NIX-30フォーク、43mm径ステム、オーリンズ製リアショックが装着される。
ブレーキはサーキットでは強力な制動力を発揮し、公道では優れたコントロール性を発揮するブレンボ製で、フロントはM50モノブロック4ポットキャリパー+320mm径ローター、リアは2ポットキャリパー+245mm径ディスクローターの組み合わせとなる。
両持ちタイプとなったスイングアームはエンジンに直接取り付けられ、V4と同様に大きく肉抜きすることで強度や捻れ剛性を最適化。
最新の電子装備を備え、サーキットランにも対応
コクピットには5インチのフルカラーTFTディスプレイが装着され、メーターや警告灯などの情報を集約して表示。「ロード・インフォ・モード」、「ロード・プロ・インフォ・モード」、「トラック・インフォ・モード」の3つのモードを持ち、左のスイッチボックスに取り付けられたジョイスティックで操作することが可能。Bluetoothによってスマートフォンと連動させることで、音楽を再生したり、ターンバイターンナビゲーターを使用することが可能となる。
コックピットに装着される5インチのフルカラーTFTディスプレイ。「ロード・インフォ・モード」は、公道走行に必要なすべての情報を見やすく表示する。
ライディングモードは「レース」、「スポーツ」、「ロード」、「ウェット」の4つが用意されており、ライディングコンディションにバイクを適応させることが可能。また、各ライディングモードには、パフォーマンスとコントロールの介入レベルがあらかじめ設定されているが、ユーザーの好みに合わせてそれをカスタマイズすることもできる。さらに、ABS、ウィリーコントロール、エンジンコントロール、エンジンブレーキの介入レベル以外に、「ハイ」、「ミディアム」、「ロー」の3つの異なるエンジンレスポンス(※ローモードではパワーが95psに制限さける)を選択・変更することもできる。
ミッションには新型「パニガーレV4」に初めて装備された第2世代のDQS(ドゥカティ・クイック・シフト)が採用され、クラッチレバーを使わずにシフトチェンジが可能。また、ライダーがクラッチ操作に集中するだけでロケットスタートを可能にする「ドゥカティ・パワー・ローンチ」や、ピットレーンにおけるバイクの速度を自動的に制限する「ピットリミッター」といったサーキット向けのシステムも標準装備されている。
今年からドゥカティワークスに加入したマルク・マルケスもこの新型をトレーニングで使い、大変気に入ったということで、32歳の誕生日に「パニガーレV2 S」がドゥカティからプレゼントされている。現役のMoto GPライダーをも満足させる新型パニガーレV2シリーズは、ドゥカティのバイクのスポーツ製の高さを象徴する存在であると言えるだろう。
2025年シーズンのMoto GPワークスライダーである、マルク・マルケスとフランチェスコ・バニャイア仕様。ゼッケンとサーキットの似合うバイクだ。
パニガーレV2/V2 S主要諸元(2025)
・ホイールベース:1465mm
・シート高:837mm
・車両重量(燃料を除く):179kg/177.6kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブV型2気筒890cc
・最高出力:88kW(120PS)/10750rpm
・最大トルク:93.3N・m(9.5kgm)/8250rpm
・変速機:6段リターン
・燃料タンク容量:15L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=190/55-17
・価格:211万9000円/240万8000円(税込)
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アルミモノコックフレームって、ZX-12Rと同じようなモノか。