
欧州で大人気を誇る、ホンダのSUVスクーター「X-ADV」。国内には流通数が少ないため、争奪戦の様相を呈しており、今から予約しても買えるのは来年2月になるという。売却する際のリセールプライスも抜群に高いのが特徴だ。
欧州で1.7万台のヒット作、日本でも人気が高まって買えない状況に
X-ADVは、NC750Xの745cc直列2気筒+鋼管フレームをベースに、街と山野に似合うクロスオーバースタイルを与えたビッグスクーターだ。先代インテグラの後継車として2017年のデビュー以降、欧州でヒット。2021年にはフルチェンジを行い、年々その人気は高まる一方だ。
2025年型のX-ADV(ホンダ)。タフで力強いデザインが魅力で、クラッチレス+ボタン変速も可能なDCTを搭載。デザインはイタリアのホンダR&Dが担当した。143万8800円~。
58PS&7kg-mを発生するトルクフルな心臓部とロングストロークサス+スポークホイールで悪路にも強い。フロントブレーキはアフリカツイン譲りの対向4ポッドラジアルキャリパーだ。
2025モデルではデイタイムランニングライトとウインカーを内蔵した新設計のヘッドライトを採用。環境にやさしい樹脂を用いたスクリーンを採用したほか、DCTの制御をアップデートした。
ホンダの資料によると、世界的な大型FUNモデルカテゴリーでは、ホンダのラインナップで5番手の稼ぎ頭。CB/CBR650R、レブル1100、CB750ホーネット、XL750トランザルプに次いで、1万7000台規模を販売している(2023年実績を元にした2024年の予測データ)。
国内126~250ccクラスで最も売れているレブル250でも年間販売は約9000台なので、いかにX-ADVが売れているがわかる(しかも価格はレブル250より2倍以上高額だ)。
2024年、ホンダは欧州主要5か国(イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツ)でシェアNO.1を獲得したが、この勢いにX-ADVも貢献している。
日本ではややマイナーなモデルながら、国内人気も高まっている。あるホンダ販売店によると「今から注文しても来年2月の入庫」とのこと(!)。X-ADVの国内における年間販売計画台数は700台。主要マーケットである欧州(イタリア、フランス)への輸出台数が多く、日本への流通台数は少ないため、手に入りにくい状態となっているのだ。
ちなみに『二輪車新聞』による2024年の新車販売台数(推定 検査届出ベース)では、401cc以上クラスで32位の467台だった。
3年乗ったX-ADVが170万円で売却! リセールプライスも安定
入手困難なため、売却した際のリセールバリューも抜群に高い。「3年乗ったX-ADVを売却したところ、170万円で売れた」との実例も聞く(新車価格は2021年型で132万円)。
また、二輪買取&販売のバイク王は「再び売却した際、高値の付くバイク」として「リセール・プライス ランキング」を発表している。X-ADVはそのランキング常連で、2024年には第49回(3~5月)と第50回(6~8月)の2期連続で1位に。最新の第51回(2024年9~11月)でもZ900RSに続く2位に着けている。
中古相場も高値安定しており、2月15日時点で「ウェビック バイク選び」における中古車の全国平均価格は174.63万円(前月比3.7万円増)と新車より高額だ。このプレミア相場から、入手困難な状況にはリセールバリューを狙った、いわゆる“転売ヤー”も影響しているのかもしれない。
ちなみに弟分のADV160も人気だ。『二輪車新聞』による2024年の新車販売台数は4402台。126~250ccクラスでレブル250、PCX160に次ぐ3位の人気を獲得している。
2024年11月、バイク王がリセール・プライスランキングの第50回を記念したトークイベントも開催。X-ADVが1位だった。
ADV160(ホンダ)は、PCX160をベースにX-ADVの流れを汲むワイルドなデザインを与えた。49万5000円。
ライバルのヤマハTMAXは全盛期ほどの勢いはあらず!?
X-ADVのライバルと言えば、やはりヤマハのTMAX。2001年に海外でデビューし、大排気量でスポーティな「マキシスクーター」というジャンルを確立した1台だ。しかしながら近年はX-ADVに押されてか、人気にやや陰りが見える。
TMAXシリーズはこれまで欧州だけで累計33万台もの販売台数を記録した大ヒット車。デビューからわずか3年で4万台超を売り上げ、3代目が登場した2008年頃には欧州だけで年間2万台と人気絶頂に達した。
2012年型の4代目で排気量を530cc化し、TMAXからTMAX530に車名変更(国内には1年遅れで入荷)。これまた約1万6000台と人気を博したが、以降は年間平均8000台前後で推移してきたようだ。
現行型は2020年に560cc化した7代目がベース。2025年型でフェイスリフトや新デザイン、コーナリングABSなどを獲得した。最新の販売データは不明だが、絶頂期やX-ADVほどの人気はなく、その分ユーザーがX-ADVに流れていると予想される。
元々、ホンダは欧州で打倒TMAXを狙って、2012年にインテグラを導入した経緯がある。インテグラの後継であるX-ADVが、ついに打倒TMAXを果たしたと言えるのだ。
とはいえ、近頃のヤマハはTMAXから派生したMAXシリーズ(XMAX300/250/125、NMAX155/125)を展開し、世界で人気を博している。2025年型でモデルチェンジしたシリーズ旗艦であるTMAXの逆襲も見たいものだ。
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