1車種に絞ってカスタムやメンテナンスの情報をまとめた、スタジオタッククリエイティブの書籍「ファイル」シリーズ。今回は「カワサキ マッハファイル」中から、「H2維持のポイント」を紹介する。

マッハ、孤高の2ストローク

カワサキが1969年に発売したH1こと「500SSマッハIII」は、空冷3気筒の2ストロークエンジンを搭載したマッハシリーズの始祖となった。マッハIIIに搭載されたエンジンはボア×ストローク60×58.8mmの489ccで、最高出力60PS/7500rpm、最大トルク5.85kgm/7000rpmを発揮。このエンジンを乾燥重量174kgの車体に搭載し、登場当時世界最速と言われたその強烈な加速力は多くのライダーを魅了した。しかし、同年に登場した“ナナハン”ことホンダドリームCB750FOURに世界最速の座を奪われることになる。

カワサキではCB750FOURを上回る4ストロークエンジンモデルの開発が進められていたが、それ以前に世界最速の座を取り戻すために500SSのエンジンをベースに、ボア×ストローク71×63mmの748ccへとスープアップしたエンジンを搭載したH2こと「750SSマッハIV」を1971年に発売した。750cc化されたエンジンは最高出力74PS/6800rpm、最大トルク7.9kgm/6500rpmを発揮し、最高速度203km/h、ゼロヨンタイム12.0秒フラットでCB750FOURから世界最速の座を取り戻すことに成功した。そして1972年に4ストロークのDOHCエンジンを搭載したZ1こと「900 Super4」が登場し、最速の座をバトンタッチすると1975年で生産中止となった。

2ストロークエンジンそのものがロストテクノロジーとなりつつある現在、50年以上前に登場したマッハを維持するのは日頃のメンテナンスや高品質な部品への交換、そして何よりも乗ることが大切だ。そして、その道のプロによるメンテナンスやオーバーホールによって、この先何十年でも走り続けることができる個体になるはずだ。

そんなプロの手によるH2のフルレストレーションやテスト秘話、電装やキャブレターなどの整備といった、マッハの維持に必要な情報が詰め込まれたのが2009年にスタジオタッククリエイティブから発売された「マッハファイル」だ。長らく絶版となっていた同書だが、現在オンデマンド版として復刊し、Webikeにおいても取り扱いが始まった。今回はそんな「マッハファイル」から、H2をサンプルにした「H2維持のポイント」をご紹介する。

H2維持のポイント

マッハが現役時代から深く関わってきた横山モータースにお聞きした、H2の維持に関するポイントを紹介していきたい。基本的な考えとしては、マッハが作られた当時と現在の違いを充分に理解するというもの。性能や使われている素材を考えた扱いをすると共に、必要以上にノーマルにこだわらず、各ボルトやシートなど今の素材を組み合わせることで、見た目のイメージはそのまま、より快適に乗ることが可能になるのだ。乗ってこそ調子が維持できるというだけに、使うことを第一に接していきたい。

フロントフォーク

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特に弱点は見あたらず、フォークオイル交換を中心とした、一般的なメンテナンスをしてやれば充分な性能を発揮してくれるとのこと。もちろんシールやメタル類は、その劣化具合をチェックし、必要に応じて交換する。

ブレーキ

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ステンレス製の分厚いディスクは性能を考えるとガンになる部分で、性能向上を考えると溝を掘り、パッドのクリーニング性能を上げる程度しか手だてがない。逆に性能が低いだけに、摩耗して交換しなければならない事態に遭遇したこともないそうだ。

ステムベアリング

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ボールベアリングを使っているのである程度使うと打痕ができ、引っかかるようになるのは仕方がない。時折フロントを浮かし、ハンドルを左右に切った時に中央付近で引っかかるようなら、交換すること。きちんとメンテナンスしていれば、問題になる部分ではない。

プラグ

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3000〜4000kmごとに、純正指定のプラグに変える。下手に熱価を変えることで、不調になる例が多いという。市街地ではカブりやすいが、排気デバイスもないマッハは高回転重視なので、低回転でのかぶり易さは諦めるしかない。低めのギアで回して乗るしかないとのことだ。

キャブレター

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ワイヤーを使い3つのスロットルバルブを引いているだけに、タンクを脱着したり、ちょっとワイヤーに触れるだけでも同調がずれてしまうという。それだけにプラグ交換毎に同調を取るのが理想的だ。まずバンドを緩めダクトを外す。右の写真のようにバンドをキャブに引っかけると、ダクトの位置が固定され、作業効率がアップする。

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同調のチェックは、スロットルバルブの動き始めで見る。左右のキャブは目視できるが、中央のキャブはそうもいかないので、右の写真のように指で確認する。これで同調が合っていないようなら、調整を行なうことになる。

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同調の調整は、キャブレター一番上のこの部分で行なう。ロックナットを緩めたら、アジャスターを開け閉めして、3つのキャブが綺麗に同調するよう、ワイヤーの張りを調整する。調整後はダクトを取り付け、しっかりバンドで固定し、二次エアが入らないようにする。

エンジンオイル

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国内4メーカー純正2サイクルオイルの上位グレードを使えば問題ないとのこと。オイル残量は下側後ろのチューブで見るが、少しでも減っていたら継ぎ足すくらいの方が、ツーリング先などでオイルが無くなり困ることがない。長旅なら予備を1本用意したい。

キックペダル

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ステップを折らずに蹴ってしまう。といったことでリターンスプリングに負荷がかかり。戻りづらくなることが結構あるという。そうなれば交換しかないが、きちんと扱っていれば、そう出る問題ではないはずとのこと。無理をするとケースに影響する。

スイングアームピボット

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マッハでは、スイングアームの支持はブッシュを使っている。そのため、スイングアームピボット部にはグリスニップルがある。昔であればグリスの質が悪かったのでマメに整備が必要だったが、今の良いグリスであれば、車検毎程度で充分である。

チェーンオイラー

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左サイドカバー内にあるタンクは、チェーン給油用で、サイドカバー下にあるノブを引くと、オイルが流れ出てチェーンを潤滑する仕組みとなっている。今時のチェーンを使い、定期的に洗浄と注油をすれば、必要のない機構であるが、当時でもほとんどやっている人がおらず、Z1では自動給油となったそうだ。

固定ボルト

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マッハ開発当時から、ネジの規格は変わっており、現代の物の方が遥かに緩みにくいとのこと。写真のリアスプロケットは緩み止めのプレートが付くが、それでも緩むので現代のセルフロックナットを奨めるとのこと。ウインカーの固定ナットも現代のロックナットにすると、緩んで下を向くことがないそうだ。

チェーン

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チェーンは現代のシールチェーンがお奨めとのこと。マッハはドライブスプロケット周りに寸法的余裕がないが、現代のプレートの薄いシールチェーンなら問題ない。とはいえ、使用時には各部に干渉していないか、充分に確認するようにすること。

ミッションオイル

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オイルはギアオイルもしくは4サイクルエンジンオイルを使う。定期的に交換するのはもちろんだが、マメに量をチェックしたい。なぜならシールが抜けて、クランク室に入り燃えている例が多いからだ。蓋の点検棒先の線の間にオイルレベルがあるかを調べ、減っているようなら問題がある。放っておくと重大なトラブルに繋がる。

横山モータース

東京は環状七号線の近く、目白通り沿いに店を構えていたのが横山モータースだ。カワサキを始めとする国内4メーカーから外車まで何でも対応可能で、ユーザーはもちろんプロにも一目置かれる頼れるショップであった。残念ながら現在は閉店してしまっている。

住所 : 東京都中野区江原1-46-16

※この記事は2009年発行の「カワサキ マッハファイル」の掲載されている内容をウェブ用にアレンジしたものです。本紙掲載内容と一部異なる場合があります。また、全ての情報は2009年当時のものとなります。

[オンデマンド版]カワサキ マッハファイル

◾️264ページ 297×225mm
◾️ISBN : 978-4-88393-921-3
◾️価格 : 1万1000円+税

目次
●マッハ 時代を超えて響き渡る衝撃
●マッハ シリーズを振り返る
●マッハを生み出した男達
●カスタムセレクション
●今明かされるテスト秘話
●H2 フルレストレーション
●マッハエンジン検証
●トリプル電装を蘇らせる
●キャブレター&オイルポンプ オーバーホール
●マッハに魅せられた男達/マッハオーナー座談会
●マッハチューニング最前線
●アフターマーケットパーツコレクション

マッハ維持の必携書「カワサキ マッハファイル」より、
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