
取材協力:バイク王つくば絶版車館
GPZ900Rに始まるいわゆる「Ninja系」エンジンを最後に積んだのは、ZRX1200シリーズである。2016年に最終型となるZRX1200DAEGまで、約22年の間生産が続けられたZRXシリーズの中で、2001年から2004年までの4年間だけ生産されたのが、フレームマウントのハーフカウルを装着したZRX1200Sである。
目次
伝説のローソンレプリカスタイルを採用したZRX
ZRXシリーズは1994年にデビューした400から始まり、1996年に1052ccのNinja系エンジンを搭載したZRX1100/ZRX1100-IIがデビューした。ZRXシリーズのデザインは1980年代にスーパーバイクなどで活躍したZ1000Rであり、角目+ビキニカウルや角張ったデザインのタンクシートカウルなどが与えられた。カラーリングもZ1000Rを意識したライムグリーンにブルーとホワイトのストライプを組み合わせたものなどが用意され、新旧幅広いカワサキファンから支持を得た。
ZRXシリーズのエンジンの大元は、1984年にデビューしたGPZ900R Ninja。このエンジンが後のカワサキの世界最速の血筋を作る。
いわゆる「ローソンレプリカ」スタイルを復活させたのが、1994年に登場した400ccのZRX。15年以上生産が続けられたロングセラーモデルだ。
2001年、ZRX1100をベースに排気量を1164ccへとアップしたZRX1200R/ZRX1200Sがデビュー。ZRX1200Rが角目+ビキニカウルのローソンレプリカスタイルだったのに対して、ZRX1200Sはフレームマウントのハーフカウルが装着されていた。
角目+ビキニカウルのZRX1200Rは、ZRX1100から受け継ぐZRXシリーズの最もベーシックなデザインを採用。
海外向けにだけ生産されたカウルレスの丸目のZRX1200。ZRX1100時代には、ZRX1100-IIが国内にもラインナップされていた。
個性的なデザインのフレームマウントカウルを備えたZRX1200Sは、高いウインドプロテクション効果で高速ツーリングなどに対応。
タンクやシート周りなどはZRX1200Rと共通のデザインを採用。カラーリングはイヤーごとに1色だけが用意された。
1164cc化されたエンジンと、専用デザインのハーフカウル
ZRX1200Sのデザイン最大の特徴は、やはりフレームマウントされたハーフカウルだろう。スクリーンがヘッドライトに食い込む、個性的なV字型のマルチリフレクタータイプヘッドライトを備え、アッパーからミドルまで一体となったカウルは、同時期にラインナップされたZR-7Sなどに通じるデザインだ。タンクやシートカウルなどは基本的にZRX1200Rと共通であり、カラーリングはイヤーごとに1色のみとなっていた。
エンジンはボア×ストロークを76.0×58.0mmから79.0×59.4mmへと変更し、排気量は1052ccから1164ccへと拡大。最高出力は74kW(100PS)/8500rpmから74kW(100PS)/8000rpmと発生回転数が500rpm下がり、最大トルクは96N・m(9.8kgm)/6000rpmから102N・m(10.4kgm)/6000rpmへとアップした。また、この1164cc化されたエンジンは、それまでのスリーブ式のシリンダーからメッキシリンダーへと変更されている。ミッションはZRX1100と同様の5速リターンタイプで、ギア比も変更されていない。
エンジンはNinja系ベースで、ボア×ストロークが79.0×59.4mmの1164cc。ZRX1200シリーズからメッキシリンダーが採用された。
2001年モデルの最高出力は74kW(100PS)/8000rpm、最大トルクは102N・m(10.4kgm)/6000rpm。ミッションは5速が採用されている。
2004年には騒音規制対策のため最高出力が70kW(95PS)/7500rpm、最大トルクが101N・m(10.3kgm)/3500rpmへと変更。最高出力は5PS下がったものの、最大トルクの発生回転数が大幅に下がったことで扱いやすさと力強さが向上している。また、この2004年式からエキゾーストパイプがバフ仕上げのステンレス製へと変更されている。
街乗りからロングツーリングまでこなすマルチプレイヤー
ZRX1200シリーズはフレームやスイングアームにも改良が加えられており、各部の剛性を最適化することで操安性が向上している。サスペンションはフロントがインナーチューブ径43mmの正立フロントフォーク、リアはKYB製のツインショックを採用する。スイングアームはZRXシリーズの特徴でもあるS1スタイルで、リブが入ったことでデザインとしても大きく変化したポイントである。ブレーキはフロントに6ポットキャリパー+310mm径ローター、リアは2ポットキャリパー+250mm径ローターで強力なストッピングパワーが確保されている。
スイングアームはS1モチーフのアルミ製で、ZRX1200シリーズではリブが入った新しいデザインのものが採用されている。
ZRX1200Sは2004年モデルを最後にラインナップから消え、ZRX1200Rも2008年で排出ガス規制によって生産中止となった。2009年にインジェクション化された1064ccエンジンを搭載したZRX1200DAEGが発売されるが、角目+ビキニカウル仕様のみがラインナップされ、フレームマウントカウル装備車は用意されなかった。
ZRX1200シリーズの後継モデルとなるZRX1200DAEGは、フューエルインジェクションを採用することで排気ガス規制に対応したモデルだ。
ZRX1200Sのフレームマウントされた大型カウルは高速域でのウインドプロテクションが高く、高速道路などを使ってのロングツーリングをZRX1200Rよりも楽にこなすことができた。また、ネイキッドベースのため、同じ1164ccのNinja系エンジンを搭載するZZR1200よりも街中での扱いやすさなどに優れている。個性的なカウルのデザインに好き嫌いが出るモデルではあるが、街乗りからロングツーリングまで幅広い用途に対応できる万能選手であると言えるだろう。
ZRX1200シリーズと同じボア×ストロークを持つZZR1200は、最高出力155PS/900rpm、最大トルク12.7kgm/8200rpmを発揮した。
ZRX1200S主要諸元(2001)
・全長×全幅×全高:2120×780×1230mm
・ホイールベース:1465mm
・シート高:790mm
・乾燥重量:227kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒1164cc
・最高出力:74kW(100PS)/8000rpm
・最大トルク:102N・m(10.4kgm)/5000rpm
・変速機:5段リターン
・燃料タンク容量:18L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=180/55-17
・価格:99万円(当時価格)
撮影協力:バイク王つくば絶版車館
あらゆるジャンルの絶版車が揃うショールーム。カラーリング違いなども数多くストックされ、好みの1台が見つかるはずだ。
住所:茨城県つくばみらい市小絹120
電話:0297-21-8190
営業時間:10:00~19:00
定休日:木曜日
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