
2025年、ヤマハは4輪レース「フォーミュラE」に参戦する。一方、バイクではモトGPの新エンジンが開発中とされる。ヤマハの異なる事業領域で見られる動きに共通項はあるのだろうか?
4輪で世界最高峰のレースに挑むヤマハ
ヤマハはAM(Automotive=自動車)事業を手がけており、トヨタ2000GT(1967年)やレクサスLFA(2011年)のエンジンなどを手がけている。AMはレース活動もしており、1990年代のF1参戦が有名。片山右京氏の活躍やアロウズでの2位獲得が今でも語り草となっている。
1997年限りでF1を撤退して以来、ヤマハは2025年に再び4輪レースに挑むことを発表した。今回は電動レースの最高峰「フォーミュラE」で、英国ローラの車体に搭載する電動パワートレインを開発した。この流れからヤマハが電動に舵を切るかというと、そうでもなさそうだ。
周知の通り、バイクの最高峰「モトGP」は2027年からエンジンの排気量が1000→850ccに縮小される。これに向けてV型4気筒エンジンを開発しているというウワサだ。電動も内燃機関も発動機=Motorであることに変わりはなく、ともに磨きをかけていく戦略だろう。
クルマのAM事業とバイクのMC事業はリンクしており、今ではバイクでも定番のパフォーマンスダンパーはAM由来の技術。また、F1ではMC由来の5バルブの優位性をアピールすることも目的としていた。今回のフォーミュラE参戦もヤマハの2輪製品にフィードバックされるはずだ。
OX99(1991年) [YAMAHA] V型12気筒OX99のシリンダーヘッド。1985年からコスワースのエンジンにヤマハのヘッドを装着するなど5バルブに主眼を置いたエンジン開発が進められた。
OX11(1996年) [YAMAHA] F1後期はV10を採用しバイク由来の軽量コンパクト化で車体の重量バランスを追求。クルマで「ハンドリングのヤマハ」を武器とし、1997年に2位を獲得した。
T001 [Lola] 英国の名門コンストラクター、ローラの車体にヤマハの電動パワートレインを搭載。パワーは350kW(約476PS)に制限されている。12月7日の開幕戦は12位だった。
V型エンジンのヤマハに分はあるか
バイクでV型エンジンというとホンダやドゥカティのイメージが強い。だが、ヤマハは4輪AMでF1だけでなく最新の市販車両向けにV型エンジンを手がけてきている。これらのノウハウがMCにも生かされる可能性はあるだろう。また、バイクでも1980年前後にV型をトライしていた。
1977年のYZR1000(OW34)に搭載された4ストV4エンジンは、当初は耐久レースを想定していたが、これをベースに500ccのGPマシン用エンジン001A(1980年)に発展した。このエンジンでは同時にバルブ数の実験が進められており、4~7バルブヘッドが検証された。
001Aは吸気4、排気3の7バルブで125PS/約20000rpmを発揮し、これが1985年のFZ750で5バルブとして発売に至っている。さらに前述の通り4輪フォーミュラ用エンジンにも展開された。そして今後は、バイクでは未採用に終わったV型の技術が発揮される番になりそうだ。
ちなみにヤマハのAM事業は水素エンジンの開発を担っており、将来的にはバイクのファンモデルへの搭載も視野に入れられている。もし、ヤマハが2027年のモトGPをV型4気筒エンジンで戦うのであれば、AM&MCを横断した開発力の強みで成功に導いて欲しい。
2011年に展示された001AとYZR-M1のプロトタイプ(2000年)。たまたま並べられていただけのものだが、まるでV4モトGPマシンの登場を示唆しているかのようだ。
YZR1000(OW34) [YAMAHA] 1977年の東京モーターショーに参考出品された幻のV4レーサー。135PSを発揮しており、実戦投入されていれば歴史が変わっていたかも知れない。
ヤマハが開発したレクサスRC FのV8をベースにした水素エンジン(2018年)はなんとインバンク排気に変更された。ヤマハのAM事業でV型も水素もノウハウが蓄積されているのが分かる。
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てか、ヤマハの4stのV4エンジンって言えばV-maxが一番有名だと思うんだけど?