イギリス発のホワイトモーターサイクルコンセプト(WMC)と、アメリカ発のゼロモーターサイクルズの2社は共に、超高性能なEVバイクを開発していることで知られている。その2社が今年11月、協力して新たなコンセプトモデルを発表した。「WMCSRSコンセプト」と名付けられたこのマシン、車体を完全に貫通するトンネルを持ち、エンジン車では実現できない空力性能を実現しているのだ。
400km/hを超えるEVバイクの技術を市販モデルに合体
この異色のモデルを制作した2社は、それぞれ別のアプローチから高性能EVバイクを開発してきたメーカーだ。ホワイトモーターサイクルコンセプトは早くから空力性能に優れたモデルを研究しており、2021年に発表された「WMC250EV」はライダーの下をくぐる巨大なインテークを備える。さらに前後輪駆動による2WDにより、最高速度400km/hを超える性能を発揮した。
一方アメリカのゼロモーターサイクルズは、NASA所属のエンジニアによって創業されたメーカー。こちらは2010年頃から市販化モデルをいち早く投入しており、実用的なEVバイクの技術を蓄積。こちらも2021年に発売された「SR/S」で最高速度200km/hを発揮しつつ、航続距離を300km以上とした、従来のEVバイクの常識を覆すモデルを発売している。最高出力は110PS、最大トルクは190Nmというから驚きの性能だが、日本でも販売されていた。
2021年にホワイトモーターサイクルコンセプトから発表された「WMC250EV」。
この2社が昨年のミラノショー2023から交流を開始、それぞれの技術を結集して発表したのが、今回登場した「WMCSRSコンセプト」だ。SR/Sの現実的なスタイルに、車体を貫通するダクトを用いるWMC250EVの「エアロエレクトリックハイブリッド」と名付けられた構造を組み込んだ。車体前面、フロントマスクにぶつかった空気がそのまま後方へ排出され、空気抵抗を極限まで減少させることに成功している。このトンネルは流量を最適化するため、1本道ではなく二股に分かれており、より効率的に空気を排出できるという。
空気抵抗が減少することのメリットは大きく、エネルギーロスが減ることによる航続距離の増加や最高速度の向上、さらにバッテリーの小型化や充電時間の短縮にもつながるもの。さらにインテークは各パーツの放熱にも利用でき、更なる高性能化も期待できるのだ。
「WMCSRSコンセプト」スタイルはSR/Sとほとんどそのままに見えるが、独自設計のダクトを装備。
エンジン機では実現できないであろう、EVの強みを活かした効率的な設計の「WMCSRSコンセプト」。未だ開発中のコンセプトモデルではあるが、EVバイクの先端を行くメーカー同士によるコラボレーションが、今後どういったイノベーションを生み出していくのか、興味は尽きない挑戦といえるだろう。
実走行も果たしているWMCSRSコンセプト。現状は市販化などの情報はない。
EVならではの強みを活かした、新技術の発展に注目していきたい。
NEW WMC Zero SRS INTELLIGENT AERO PROTOTYPE (WMCSRS)
ギャラリーへ (11枚)この記事にいいねする













