
取材協力:バイク王つくば絶版車館
XV250ビラーゴは軽二輪クラスのアメリカンバイクとしては初めてVツインエンジンを搭載したモデルであり、その足つき性の良さや扱いやすさから幅広いユーザーに愛用されたバイクである。
目次
Vツインエンジンを搭載した本格軽二輪
映画「イージーライダー」が巻き起こした第一次アメリカンバイクブームは、「ジャメリカン」などと呼ばれる直列エンジンを搭載した車体にアメリカン寄りの外装を取り付けた独特のスタイルを生み出した。これは既存の車両をベースとして生み出された苦肉の策の産物であり、そんな中1981年に本家ハーレーと同じ横置きのVツインエンジンを搭載したヤマハのXV750スペシャルが登場した。XV750スペシャルはヨーロピアンタイプのXV750Eという兄弟車を持ち、直列エンジン時代と同じ「ジャメリカン」スタイルから抜け出しきれないモデルであった。ホンダからも1979年にVツインエンジンを搭載したアメリカンスタイルのGL400/500カスタムが発売されていたが、このVツインエンジンは縦置きであった。
空冷の縦置きVツインエンジンを搭載したXV750スペシャルは、本格的な国産アメリカンバイクの始祖と言える。
XV750スペシャルと同じエンジンとフレームに、当時のヤマハスポーツモデル系の外装を組み合わせたXV750E。
XV750スペシャルベースのVツインエンジンを、より本格的なアメリカンスタイルの車体に搭載したXV750ビラーゴ。
ホンダのGL400スペシャルは、モト・グッツィのような縦置きのVツインエンジンを搭載していた。
1983年には400ccのVツインエンジンを搭載したXV400スペシャルも登場し、ヤマハのVツインアメリカン戦略は本格化した。そして、初めて「ビラーゴ」という名前を冠した、XV750スペシャルの後継となるXV750ビラーゴが1984年に発売された。XV750スペシャルのエンジンを引き継いではいたが、新設計された車体は低いシート高や長いフロントフォークを持ち、ティアドロップタンクや段付きシートといった本格的なチョッパースタイルが与えられていた。1987年にはXV400ビラーゴが登場、そして1988年に軽二輪クラスににXV250ビラーゴが投入された。
400ccクラス初のVツインエンジン搭載モデルとなったのが、XV400スペシャル。750よりもよりアメリカンなデザインを採用していた。
XV400ビラーゴは、かなり大胆なチョッパースタイルを採用。初期モデルの小ぶりなタンクはダミーであった。
完成度の高いデザインとVツインエンジン
ビラーゴの250にはプルバックハンドルフラットハンドルタイプがラインナップされており、今回撮影したのは最終型のプルバックハンドルタイプだ。デザインは兄弟車の中で最も完成された感があり、ティアドロップタンクとラグジュアリー感のある段付きシート、メッキ仕上げのエアクリーナーやマフラーなど、各部のデザインはアメリカンバイクのツボを押さえたもである。
ビラーゴシリーズの末弟となるXV250ビラーゴは、小型二輪ながら本格的な作りの車体とVツインエンジンで人気となった。
ボリューム感のあるデザインを採用し、遠くから見ると大排気量車にも負けない迫力を持つリアビュー。
ビラーゴシリーズとしては最後にラインナップに加わった250は、専用に開発された空冷4ストロークSOHC2バルブV型2気筒エンジンを搭載する。このエンジンは排気量は248ccで、ボア×ストローク49×66mmのロングストローク設定とすることでアメリカンバイクらしいトルク感と鼓動感を感じさせる。スペックは最高出力23PS/8000rpm、最大ルク2.2kgm/6000rpmで、2気筒の250ccのアメリカンモデルとしては必要にして十分と言えるだろう。同時代のホンダレブルは、デザインはアメリカンバイクとして完成されていたものの、エンジンは直列2気筒だったため、“本格”という意味ではビラーゴに軍配が上がる。また、このエンジンはロードスポーツモデルSRV250やその派生モデルであるルネッサなどには、最高出力27PS/8500rpm仕様で搭載された。
エンジンは軽二輪クラス初となる空冷のSOHC2バルブVツインエンジン。各部にメッキも施され、高級感のあるルックスだ。
ボア×ストローク49×66mmのロングストローク設定で、トルクフィーリングを重視したセッティングとされている。
フラットバー仕様もラインナップされており、ユーザーの好みに合わせてチョイスすることができた。
ライバルとなるホンダのレブルは、空冷の並列2気筒エンジンを搭載。コンパクトな車体で、女性ライダーにも人気が高かった。
低く、長い車体を持ち、長く愛される
フレームは250専用に設計されたスチール製で、400のようにシート下にフューエルタンクは設置されない。シート高は厚めの段付きシートを取り付けても695mmとかなり低く設定されており、この250のデザインの完成度の高さはフレームの設計ありきであると言えるだろう。
キャスター角は32°05′とされており、フロントフォークはかなり寝かされている。ホイールは前後スポークタイプで、サイズはフロントが18インチ、リアが15インチとなる。ブレーキはフロントがシングルディスクでリアがドラム、リアサスペンションはツインショックタイプとなる。駆動方式は750と400ではシャフトドライブを採用していたが、250はコンベンショナルなチェーン駆動を採用している。
XV250ビラーゴは2000年に登場したドラッグスター250へとフルモデルチェンジされ、日本での販売を終えた。しかし、海外向けにはそれ以降も販売が続けられ、その一部はプレストコーポレーションによって日本にも輸入されていた。北米などでは2010年台に入っても販売が続けられており、ヤマハのプロダクトギャラリーの中には2020年モデルの写真が収められていた。30年以上生産が続けられたXV250ビラーゴには、それだけの魅力があったと言えるのではないだろうか。
XV250ビラーゴの後継モデルとなるのがドラッグスター250。新設計のフレームを採用し、よりロング&ローなスタイルとなった
ヤマハのプロダクトギャラリーに収められていた2020年モデルのXV250。基本デザインは変わっていないようだ。
XV250ビラーゴ主要諸元(1996)
・全長×全幅×全高:2215×780×1140mm
・ホイールベース:1495mm
・シート高:695mm
・車両重量:150kg
・エンジン:空冷4ストロークSOHC2バルブV型2気筒248cc
・最高出力:23PS/8000rpm
・最大トルク:2.2kgm/6000rpm
・変速機:5段リターン
・燃料タンク容量:9.5L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=3.00-18、R=130/90-15
撮影協力:バイク王つくば絶版車館
あらゆるジャンルの絶版車が揃うショールーム。カラーリング違いなども数多くストックされ、好みの1台が見つかるはずだ。
住所:茨城県つくばみらい市小絹120 電話:0297-21-8190 営業時間:10:00~19:00 定休日:木曜日
空冷Vツインエンジンを搭載した、軽二輪本格アメリカン「XV250ビラーゴ」 (29枚)この記事にいいねする