2023年に登場した250ccスクランブラー、ホンダ「CL250」。レブル250と設計をかなり共有する兄弟機ながら、オフロードもこなせそうな大径ホイールやアップマフラーの存在感抜群のモデルだ。しかし大柄になって、足つきは結構不安なイメージ……実際に跨って検証してみた。
ホンダが国産唯一のクラシックスクランブラーを投入! レトロファンも嬉しい
まずスクランブラーとは何か。基本的にはスポーツバイクに、オフロードテイストのホイールやブロックタイヤ、アップマフラーを装備したオン/オフ中庸のモデルといえば差支えないだろう。このスタイルが流行した1960~70年ごろには、ツーリングしながらも野原や不整地にも突入して楽しむ! という楽しみがお洒落だったようだ(現代のアドベンチャーバイクに似た楽しみ方かもしれない)。
やがてオフロード走行に特化したモデルが充実してくると、オン/オフの区別はハッキリとしはじめ、いっときスクランブラーは古めかしいジャンルとなった。しかし、現在は逆にビンテージ調なレトロスタイルということで、海外メーカーからはネオレトロの定番的にラインナップされている。
そんな中、ホンダが久しぶりに発売したスクランブラーが「CL250」だ。ミドルクルーザー・レブル250のエンジン、フレームをほとんど共有しているが、CLはトルクアップしたエンジンパワーや19インチの大径ホイールで、ロー&ファットなレブルのイメージと全く違うモデルに仕上げられた。また、レブル500との兄弟機、大型モデルの「CL500」も同時に登場している。
そのぶん車高があるため、一見するとCLとレブルが兄弟機とはわからないほどだ。また注目したいのは、現行国産メーカーのラインナップにはスクランブラーのラインナップがないということ。丸目でクラシカルなオフテイストの国産モデルが欲しい! なんていった場合、CLは唯一無二の存在なのだ。
ディテールはレブルと共通点多くシンプル、決めるところはビシッとスクランブラー
ディテールの確認に移ってみよう。CL250に搭載されているエンジンは、レブルと同様の249ccDOHC水冷単気筒で、ボア76.0mm×ストローク55.0mmのショートストローク。しかしパワーのセッティングはレブルと異なっており、最高出力24PS/8500rpm、最大トルク2.3kgf-m/6250rpmと、レブルより馬力は下げられ、変わりにトルクが引き上げられている。さらにアシスト&スリッパークラッチを標準装備しているため、クラッチ操作が非常に軽やかなのもポイントだ。そして特徴的なアップマフラーは、往年のCLを思わせる箱型のカバーでガード、2本出しのエンドも相まって存在感抜群だ。
車体は一目瞭然ながら、フレームの基本設計こそレブルと同じながら車高が高くなっている。しかし実は車体の長さ、ホイールベースはCL250のほうがコンパクト。ホイールはフロント19インチ、リア17インチと大径サイズを採用、車体重量は172kgで、これはレブルより1kg重いだけだ。
タンクはレブルより平べったく、小ぶりに見えるが、実は1L容量の大きい12L。タンクサイドのラバーは標準装備されている。シートはタックロール調のレトロなスタイルで、ロングで座り心地は良好だ。最近のモデルにはない場合も多い、タンデムベルトが装着されているのもレトロファンには高ポイントといえる。
メーターやスイッチ、灯火類はほとんどレブルと同様で、丸型のデジタルメーターは非常にシンプル。バーハンドルも相まってハンドル周りのアクセサリー装着に困ることはなさそう。左右スイッチもレブルと同仕様となっている。ヘッドライトは4眼のプロジェクターレンズを備えるLEDで、このほかウィンカー、テールライトもLED仕様であり、視認性は抜群だ。
足つきは165cmなら問題ないが、アップマフラーとステップ位置に注意アリ
そんなCL250にさっそく試乗してみた。まずこのCL250に乗る以前に、レブル250にも乗ってみたのだが、そちらはさすがに低いシート高(690mm)で足つき性は何も心配なく、小柄なライダーからも高評価だという理由がよくわかった。ところがCL250は、そもそも見た目からしてデカい! 250ccクラスには思えないほどだ。そもそも大柄なクルーザーのフレームを縦長にしたら大きくなるのは当たり前で、実際ネイキッドモデルの「CB250R」に比べても一回り大きい寸法だ。
このため足つきのチェックも非常に不安だった。よく「オフロードバイクは大きく見えても、サスペンションが縮むから問題ないヨ!」なんて聞くが、そもそも足短めの私にとっては、オフモデルはまたがるまでが一苦労(足が上がらないので!)、反対の足をついてスタンドを払うのが一苦労(足が届かないので!)で、おまけに小柄ではサスもそんなに沈まない。苦手意識が強い相手だ。
とはいえ、さすがにCL250はオフロードではなく、オンロードモデルの親しみやすさを持つスクランブラー。見た目のボリューム感はアッサリ裏切られ、足つきは大して気にならない。片足がステップにあるうちは、しっかりカカトまで着地もでき、乗り降りの不安もなし。シート高は795mmと、スペック上はレブルより15mmも高いのだが、アブナイ感じはしない。車体の重心も、腰高な雰囲気を裏切って安定感が強く、引き起こしも軽い。ルックスの大柄さで足つきを語ってはイケナイのだなーと改めて反省した。
しかし気になる点が2か所あった。ひとつはステップの位置だ。オフスタイルらしいワイドペグが、レブルとは違うミッドコントロールの位置に設定されているのだが、足を下ろしたときに妙に当たりやすい。このため足を着く際、意識していないとひっかかり気味になってしまう。これが気になるCL250オーナーは多いようで、ステップ位置を変更するサードパーティー製パーツが人気になっているほどだ。
もう一つはエキゾーストパイプが太く、右足がまっすぐ下ろせないというところ。ちょうど太ももが当たる位置に樹脂製のガードが装着されており、熱い! ということはないものの、その分のふくらみが車幅をワイドに感じさせる。両足を着きたいときには少し邪魔な感じといえるだろう。
走り出してみれば、足つきはもちろん一切気にならなくなる。それどころか、レブルとほとんど同じエンジンだというのに、スポーティーな加速感や操作感覚はCL250のほうが明らかに軽快だ。この理由はきっと複合的なもので、レブルより高い最大トルクであったり、細く大径のタイヤ、そしてポジションが安定するステップ位置が、キビキビした加速と気持ちよいコーナリングの感覚を味わわせてくれた。アシスト&スリッパークラッチの恩恵による、ストレスないクラッチ感覚も気持ちよい。
高めのシート高による視線の高さも、普段クルーザーに乗っている私からすると、まるで馬に乗っているかのよう。いつもと高さが違う街並みは新鮮だ! さらにロングシートで、ポジションをかなり自由に動かせるのもレブルとは違うところ。いろいろな体形やシーンのライダーが、この楽しみを享受できるだろう。
というわけで、私と同じぐらいの体格のライダーは、デカい車体に恐れを持つ必要なく乗りこなせること間違いなし。ただし小柄なライダーとなると、気になるポイントがもっと気になってしまうかもしれない。ステップ位置に関しては、社外製のステーも存在しているので、改善は可能。また2025年モデルではポジションが変更されるというから、こちらも注目したいところだ。
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