
ホンダは2050年に製品だけでなく企業活動全体で環境負荷を無くすための試みとして「Triple Action to ZERO」に取り組んでいる。ここではその一環となる材料の新しい技術などを紹介したい。
塗装工程も無くしてさらにCO2排出削減
ホンダは2050年にサステナブルマテリアル(持続可能な資源)の使用率100%を目指しており、第一歩として従来の石油から作られるプラスチックパーツを植物由来原料のバイオマスプラスチックに置き換えている。そして、2025年型NC750Xの外装パーツに採用されるのだ。
バイオマスプラスチックは透明度が高いことからまずは2024年型アフリカツインのスクリーンに採用されていた。これが、新型NC750Xでは外装パーツに発展。透明度の高さを生かした着色方法として、素材に顔料を混ぜ合わせることで塗装工程を廃しているのも特徴となる。
これにより、植物が育つ過程でCO2を吸収するだけでなく塗装工程でのCO2の排出量を削減することになり、さらに鮮やかな発色でデザイン性と質感の向上も実現している。バイオマス素材のカウルは3色のカラーリングで採用されており、2025年モデルとして発売される。
なお、素材は三菱ケミカルの「DURABIO(デュラビオ)」を採用しており、非可食のトウモロコシや小麦などが原料。一方、生分解性はないので耐久性に優れ傷つきにくいという。また、素材に顔料を混ぜて着色しているNC750Xのカウルは傷がついても色が剥げないのだ。
新型NC750X(2025年) [HONDA] モデルチェンジした新型のボディカラーの一部にデュラビオが採用されている。フロントブレーキもWディスクになった。
バイオマスプラスチックはトウモロコシや小麦などを使用するが、食料として用いられない非可食の原料を使っている。右のリサイクル材については次の段落で後述する。
色付きのデュラビオ外装はバイクでは初。塗装にはない表面の滑らかさと透明度の高い発色性が特徴になる。欧州ではグレーが未発表なので日本向けカラーかも知れない。
2024年型のCRF1100Lアフリカツインで初めて採用されたバイオマスプラスチック=デュラビオは、透明度の高さからフロントスクリーンに用いられた。
新型フォルツァ750の外装はリサイクル素材を活用
ホンダは、バイオマスプラスチックだけでなくリサイクル素材の活用も進める。欧州で販売される2025年新型フォルツァ750は販売店から回収したホンダ車の廃棄バンパーを原料に採用し、シート底板やラゲッジボックスに再利用している。
また、新型フォルツァ750の外装パーツは、自動車や家電などのプレコンシューマー素材(プラスチック製品の製造工程で発生した廃棄物を再利用した材料のこと)を採用し再度ポリプロピレン化している。ホンダは、これらの取り組みを今後他機種にも適用する意向だ。
新型フォルツァ750(2025年) [HONDA] 日本未導入のビッグフォルツァもモデルチェンジ。これの外装はプレコンシューマー素材を原料としている。
メットインスペースの素材が廃棄バンパー由来となる。回収されたホンダ車のバンパーが生まれ変わって新製品に使用されるのだ。
さらに熊本製作所の電力も自家発電
そして、新型NC750Xやフォルツァ750を生産している熊本製作所自体もCO2排出量削減に取り組んでいる。2008年に330億円かけて建設された熊本製作所の新二輪車工場は、「人と地球に優しい工場」をコンセプトに、既存工場より20%のCO2排出量削減を実現していた。
現在は再生エネルギー化を推進中で、工場や駐車場の屋根、貯水池など至るところにソーラーパネルを設置しており、これらが工場の10%の電力を賄っているという。また、休日等の余剰電力を充電する蓄電設備も備え、効率的に電力を活用できるようにしているのだ。
ホンダはバイク本体だけでなく製造工程も含めた企業活動全体で環境負荷を減らすことに取り組んでおり、熊本製作所では他にも鋳造設備の改良による省エネ化や空調機の設備更新、工場内照明のLED化など全面的に電力使用量の削減に取り組んでいる。
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ネズミにかじられるやつ
食料不足も指摘される中、わざわざ食えないトウモロコシや小麦を作るのもどうなのかと。