
空前のバイクブームだった1980年代。当時は、ロードスポーツやオフロード、スクーターなど、さまざまなタイプの名車が、数多く誕生しました。それらのなかには、現在も、そのネーミングを受け継いだ現行モデルもあり、かつての栄光を継承しています。ここでは、そうした80年代から受け継がれている人気モデルのなかでも、とくに5機種をピックアップしてみました。
スズキ・カタナ
1980年代に生まれたスズキの名車といえば、やはり「カタナ」が代表格。その名前を継承し、2019年に発売され大ヒットを記録したのが現行モデルの「カタナ(KATANA)」です。
元祖となる「GSX1100Sカタナ」は、1980年のケルンモーターショー(当時の西ドイツで開催)に出品され、翌年の1981年に世界デビューした輸出仕様車です。
「日本刀をイメージ」したというシャープで個性的なフォルムは、ハンス・ムートが率いるターゲット・デザインがデザインを担当。最高出力111PSを発揮する高性能な1074cc・空冷4気筒エンジンなどとのマッチングにより、世界的に大注目を浴びた伝説のバイクです。
その後、国内では、1982年に750cc版の「GSX750Sカタナ」が登場し、日本でもカタナ人気がヒートアップ。1991年には250cc版の「GSX250Sカタナ」、1992年には400cc版の「GSX400Sカタナ」も登場し、幅広いユーザーから支持を受けました。
そんな名車のネーミングを受け継ぐのが、現行モデルのカタナ。軽量なフレームの車体に搭載するエンジンには、スーパースポーツ「GSX-R1000」ベースの998cc・水冷並列4気筒を採用。前寄りの着座位置や幅広のアップハンドルなどにより、スポーティなハンドリング性能や、乗車姿勢の快適性などを実現します。
また、倒立フロントフォークやブレンボ製ブレーキキャリパーなど、足まわりにはスポーティな走りを実現する装備を搭載。3つの走行モードからエンジン制御マップの切り替えが可能な「SDMS(スズキドライブモードセレクター)」、5段階(+OFFモード)からトラクションコントロールの介入レベルが選択可能な「STCS(スズキトラクションコントロールシステム)」など、最新の電子制御システムも採用し、街乗りからワインディング、長距離ツーリングなど、様々な領域で走りを楽しめるマシンです。
なお、2024年10月に発売された最新モデルでは、ボディに新色を採用。ミスティックシルバーメタリックとパールビガーブルーの2色を設定し、価格(税込み)は166万1000円です。
ホンダ・CRF1100Lアフリカツイン
近年、日本はもとより、世界中で人気のアドベンチャーバイク。オンロードだけでなく、オフロードでも高い走破性を誇り、長距離ツーリングにも対応する数々の装備が魅力のモデル群ですが、国産バイクで、その元祖的存在といえるのが「CRF1000Lアフリカツイン(CRF1000L AfricaTwin)」シリーズでしょう。
初代モデルは、1988年に発売された750cc・2気筒エンジン搭載の「アフリカツイン」です。当時大きな人気を博していた「パリ-ダカールラリー(現在のダカールラリー)」に参戦し、大活躍したホンダのワークスマシン「NXR750」で得た技術をフィードバックした市販バイクです。
1978年から開催されているパリ-ダカールラリーは、砂漠や泥濘地、山岳地帯など、あらゆる路面をバイクやクルマで走破することで、「世界一過酷なイベント」として知られている競技。毎回、年末から年始にかけて2週間以上行われ、猛暑の中で1日の走行距離が800kmを超えるときもあるほどハードなことで知られています。
そんな過酷な競技で培った技術を市販車に投入したのが、アフリカツインです。2019年に登場した現行モデルのCRF1100アフリカツインでは、エンジンに1082cc・直列2気筒を搭載します。
ライダーの操作要求に対しリニアに反応するスロットルバイワイヤ、緻密な車体コントロールを実現する6軸IMUなどを装備することで、最新の電子制御システムを採用。日常のライディングから本格アドベンチャーツーリングまで、さまざまな道に対応する6つのライディングモード、後輪のスリップを検知し抑制する「HSTC(ホンダ・セレクタブルトルクコントロール)」などにより、幅広い路面での快適性や走破性、安全性などを向上させています。
過酷な競技で培った技術を市販車に投入したのが、アフリカツイン(写真はCRF1100アフリカツイン アドベンチャースポーツES)
ラインアップには、フロント21インチ、リヤ18インチのホイールを採用するCRF1100Lアフリカツイン<s>と、フロント19インチ、リヤ18インチのホイールや電子制御サスペンションを採用するCRF1100アフリカツイン アドベンチャースポーツESを用意。
また、各タイプのトランスミッションには、一般的な6速MT仕様車に加え、クラッチやシフトペダルの操作が不要なAT機構「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)仕様車も設定し、幅広い好みやスキルのライダーに対応します。
価格(税込み)は、CRF1100Lアフリカツイン<s>が、6速MT仕様車163万9000円、DCT仕様車174万9000円。CRF1100アフリカツイン アドベンチャースポーツESが、6速MT仕様車194万7000円、DCT仕様車205万7000円です。
カワサキ・エリミネーター
ロー&ロングのワイルドなスタイルに、低速域から豊かなトルクを生み出す398cc・並列2気筒エンジンを搭載したカワサキのクルーザーモデルが「エリミネーター(ELIMINATOR)」。
2023年に登場し、一躍人気を博したモデルですが、その元祖といえるのが、1980年代から2000年代前半に販売し、主に1990年代の国産アメリカンバイク・ブームをけん引した「エリミネーター」シリーズです。
初代モデルのエリミネーターは1985年に発売されました。輸出向け仕様は900cc版、国内向け仕様には当時の自主規制により最大排気量だった750cc版を投入。その後、1986年には400cc版、1987年には250cc版もリリースするなどで、豊富なラインナップを誇っていました。
いずれのタイプも、主な特徴は、アメリカで人気のドラッグレースで活躍するレーサー、いわゆる「ドラッガー」を彷彿とさせる低くて長いフォルム。特に、250ccや400ccのモデルでは、ひとクラス上のモデルを彷彿させる迫力のマッチョなスタイルなどが魅力。バイク初心者をはじめとする幅広いユーザーから支持を受け、国内で大ヒットを記録しました。
そんな伝説の名車を復活させたのが、現行のエリミネーターです。
主な特徴は、独自のロー&ロングフォルムや、タンクからテールにかけて水平基調の造形などを採用し、伝統のドラッガースタイルを継承していることです。
また、エンジンには、扱いやすさに定評がある398cc・並列2気筒を搭載。低速域での豊かなトルクによる良好なコントロール性や、高速走行時の力強いパワーとリニアなレスポンスなどにより、街乗りからロングツーリングまで、幅広いシーンで快適な走りを体感できます。
ほかにも、コンパクトな丸形オールデジタル液晶インストゥルメントパネルがモダンな雰囲気も演出します。さらに、735mmのシート高により、良好な足着き性を実現するほか、純正アクセサリーにはシート高が765mmとなるハイシート、シート高715mmとなるローシートも用意。幅広い体格のライダーが快適にライディングを楽める装備も充実っしています。
735mmのシート高により、良好な足着き性を実現(写真はエリミネーターSE)
ラインアップには、スタンダードのエリミネーターと、ヘッドライトカウル付きのエリミネーターSEを用意。また、スタンダードをベースに、GPS対応型前後ドライブレコーダーやUSB Type-C電源ソケットなどを追加したエリミネーター プラザ エディション(正規取扱店カワサキプラザの専用モデル)も設定します。
各モデルの価格(税込)は、スタンダードのエリミネーターが81万4000円、エリミネーターSEが91万3000円、エリミネーター プラザ エディションが86万9000円です。
ヤマハ・ジョグ/ジョグ125
1980年代には、50ccなどの原付スクーターにも、俊敏な走りが魅力のスポーツモデルが数多く登場。当時の若者などに大きな支持を受け、一大ムーブメントを引き起こしました。そんなスポーツスクーターの血統を現代に受け継ぐのが、ヤマハの「ジョグ(JOG)」「ジョグ125(JOG125)」です。
1983年に登場した初代ジョグは、軽快な走りとスポーティなスタイルが大きな特徴。当時としてはパワフルな4.5psを発揮する49cc・2ストロークエンジンや、尖ったフロントカウルが前輪を覆う戦闘的スタイルなどが好評を博し、大ヒットを記録します。
その後、ジョグは、90cc・2ストロークエンジン搭載モデルなど、数々の派生モデルも誕生し、ヤマハ製スクーターの基軸となります。
2007年には、排気ガス規制などの影響もあり、4ストロークエンジン搭載車に変更。2018年に登場した現行の50ccモデルでは、ホンダの「タクト」をベースに、ヤマハのデザインを投入したOEMモデルとなって、今もラインアップされています。
現行のジョグでは、最高出力4.5psを発揮する49cc・水冷4ストローク単気筒エンジンを搭載。登坂路でもグングンとストレスなく登れるパワフルな特性を持つと共に、燃費や環境にも配慮していることが特徴です。
ライナップには、スタンダード仕様のジョグと、アイドリングストップ・システムなどを備える上級モデルのジョグ デラックスを設定。価格(税込み)は18万1500円〜19万4700円です。
一方、124cc・空冷単気筒エンジンを搭載する原付二種スクーター「ジョグ125(JOG125)」は、2022年11月に登場しました。
大きな特徴は、独自の「ブルーコア(BLUE CORE)」エンジンをジョグ・シリーズに初採用し、ヤマハ原付二種スクーター最高レベルの低燃費とスムーズな加速を両立していること。
高効率燃焼、ロス低減、高い冷却性の3点を照準に開発されたこのエンジンは、パワーと燃費の両立を図るため燃焼室をコンパクトに設計。高効率燃焼のポイントとなる圧縮比を10.2:1とし、混合気のタンブル(縦渦)を効果的に生成させ、FIセッティングとの相乗効果で高出力と燃費性を兼ね備えています。
また、始動時はスターターモーターとして機能し、走行時はジェネレーターとして働く「SMG(スマート・モーター・ジェネレーター)」も採用。従来のスターターモーターと減速ギアが不要となり、軽量・コンパクト化と静かなエンジン始動を実現します。
それらの相乗効果により、ジョグ125は、最高出力6.1kW(8.3PS)/7000rpm・最大トルク9.8N・m(1.00kgf・m)/5000rpmを発揮する一方、WMTCモード値で51.9km/Lという燃費性能も両立しています。
なお、価格(税込み)は26万7300円で、かなりリーズナブルな設定となっている点も魅力です。
税込み26万7300円とリーズナブルな価格も魅力なジョグ125
ちなみに、50cc版のジョグやジョグデラックスについては、まだ正式なアナウンスこそありませんが、近々ラインアップから消滅してしまう可能性もあります。
これは、2025年(令和7年)11月から施行される予定の新しい排気ガス規制が関連しています。この規制が導入されると、現行で50cc以下とされている原付バイクは、新規制値に対応させることが技術や費用面で難しいことで、多くのモデルが販売できなくなる可能性が高いからです。
ちなみに、警察庁では、こうした動向に対し、最高出力を4.0kw(5.4PS)以下に制御した125ccや110ccのバイクを「新基準原付」とし、現在の原付一種バイクと同じ扱いにする方針です。なお、新制度は2025年4月1日から導入される予定だといいます。
こうした動きにより、前述の通り、現在の50cc版のジョグやジョグデラックスは消滅する可能性があるのです。
また、その場合、代わりに、125cc版のジョグ125をベースに、4.0kw(5.4PS)以下の馬力制限を受けた新基準原付バージョンが出てくることも考えられます。
そうなると、最高出力6.1kW(8.3PS)という馬力そのままの原付二種バージョンと、縁気を抑えた原付一種バージョンの2タイプが設定されることも考えられます。
いずれにしろ、長年続いている人気スクーターだけに、今後の動向が気になるところです。
50cc版のジョグやジョグデラックスは、今後の動向も気になるところ
ホンダ・ディオ110
スタイリッシュな外観と扱いやすい特性が人気の原付二種スクーターが、ホンダの「ディオ110(Dio110)」です。
ディオといえば、昔からのバイク好きならご存じの通り、元祖は1988年に登場した原付一種の50ccモデル「ディオ(Dio)」。排気量49ccの空冷2スト単気筒エンジンを搭載し、スポーティなスタイルと実用性が高いシート下のメットイン・スペースなどにより、当時の若者を中心に大ヒットを記録したバイクです。
現在、50cc版はラインアップから外れていますが、1990年登場のスーパーディオ(2代目)や1994年発売のライブ・ディオ(3代目)など、さまざまな名車を排出。ヤマハのジョグと共に、1980年代後半から1990年代の原付スポーツスクーター・ブームをけん引し、ホンダを代表するバイクブランドだったといえます。
そんな名車のネーミングを受け継ぐのが、原付二種モデルのディオ110です。現行モデルの3代目は2021年に登場。ダイナミックなボディーラインでアクティブさを表現したスタイリングを採用したほか、マフラーカバーやフロアステップなどに幾何学模様を施すことで、上質感なども演出します。
ダイナミックなボディーラインでアクティブさを表現したディオ110
エンジンには、軽快な走りと燃費性能を両立した排気量109ccの空冷4ストローク単気筒「eSP」を搭載。最高出力6.4kW(8.7ps)を発揮するこのエンジンは、圧縮比を高めたコンパクトな燃焼室の採用で、燃焼効率と低中速域の出力を向上し、軽快な走りを実現します。
また、高剛性と軽量化を追求した独自の「eSAF」フレームや、前後14インチの大径ホイールの採用などによる、安定性と快適性を両立した走りも魅力です。
ほかにも、低燃費走行をサポートするECOインジケーターを装備する多機能メーター、容量約18Lのシート下収納スペースなど、通勤・通学や普段の買い物など、さまざまなシーンで使い勝手がよく、実用性の高い装備を誇ります。
ラインアップには、「Honda SMART Keyシステム」を採用したディオ110を設定。このシステムは、スマートキーをポケットやカバンなどに携帯していれば、キーを取り出さなくてもエンジン始動などができる機能で、高い利便性を誇ります。
また、Honda SMART Keyシステム未設定で、リーズナブルな価格を実現したディオ110・ベーシックも用意し、幅広いニーズに対応。
価格(税込み)は、ディオ110・ベーシックが21万7800円、ディオ110が25万3000円です。
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