EICMA2024では各メーカーから様々なニューモデルが発表されたが、今回は400cc前後のミドルサイズのオフロードバイクに注目してみたいと思う。これらのモデルは、排気量制限は無いものの、最高出力が35kW(48馬力)を越えないというヨーロッパのA2ライセンスに合わせたモデルである。

復活の本格エンデューロマシン

まず注目したいのは、ウェビック+でも何度かスクープとして報じていたスズキのDRシリーズの新型、「DR-Z4S」だろう。日本では2008年に販売か週利用した先代モデルのDR-Z400系モデルは北米などの一部地域で販売が続けられていたが、DR-Z4Sは新設計のツインスパータイプフレームや、基本設計は踏襲しつつもほとんどのパーツを再設計したエンジンを搭載している完全なニューモデルとなっている。

車体デザインは一新されており、フロント21インチ、リア18インチタイヤを装着する本格的なエンデューロモデルだ。このバイクのポイントとなるのはユーロ5+排出ガス規制に対応していることであり、ヨーロッパはもちろん日本での販売が可能となっている。気になるエンジンのスペックは最高出力38PS、最大トルク37N・mと先代モデルよりも若干低くなっているが、出力特性を3段階に切り替えられるSDMS(スズキドライブモードセレクター)や3段階のセレクト+オフにすることも可能なSTCS(スズキトラクションコントロールシステム)、オンオフ可能なABSなどを備えて走行性能は相当高いレベルが期待できる。バリエーションとしては前後17インチのロードタイヤを履く「DR-Z4SM」が同時に発表されており、こちらも当然期待度が高い。

KTMは好みに合わせてチョイスできる

次に注目するのはKTMが発表した「390アドベンチャーR」、「390エンデューロR」、「390SMC R」という3台だ。この3車種は2024年にフルモデルチェンジした「390デューク」系のエンジンを使用したモデルであり、元々ラインナップのあった「390アドベンチャー」のモデルチェンジ版である「390アドベンチャーR」が中心となる。「390アドベンチャーR」はフロント21インチ、リア18インチサイズのホイールを持ち、大型のスクリーンなどを備えたアドベンチャーモデルだ。

これに小型のライトカウルなどを装備してコンペオフローダー風にしたのが「390エンデューロR」、17インチのオンロードタイヤを装着してモタード仕様としたのが「390SMC R」となる。このシリーズは、デュークに近いフレームのデザインなどを見るとバリバリのコンペ系ではなく、公道での扱いやすさなどを重視したモデルとなっている。詳しいスペックは不明ながら、2024年モデルの390デューク系の398ccエンジンを搭載してることを考えると、最高出力は33kW(45PS)が期待できる。

本気でオフロードを楽しめる「GS」

EICMAでサプライズ的に登場したのが、BMWの「コンセプトF450GS」である。車名に「コンセプト」と付くように、このモデルは量産車ではなくあくまでもコンセプトモデルということではあったが、BMWは「量産準備がほぼ整っている」と発表しているのでほぼこのまま市販されると考えられる。

このコンセプトF450GSは新開発された450ccの直列2気筒エンジンを、これもまた完全新設計となるフレームに搭載。エンジンのスペックはA2ライセンスギリギリの48PSと発表されており、ホイールサイズはフロント19、リア17インチで、スポークホイール仕様となっている。そのデザインは「GS」の名を冠していることもあり、今年発表されたR1300GS系のXスタイルのLEDライトが目を惹く。ただ、外装パーツはアドベンチャーとしては最低限といった感じで、最低地上高もかなり高く取られているため本格的なオフロードバイクという印象を受ける。重量は175kgとG310GSと5kg程しか変わらず、GSシリーズの中で最もスポーティなオフロード走行が楽しめそうだ。アドベンチャーとエンデューロの中間的な仕上がりを見せる「コンセプトF450GS」は、「GS=ゲレンデ・シュポルト」という名前が最も似合うバイクになりそうだ。

想像が膨らむ新型KLE

最後に、まだフロントホイールしか発表されていないカワサキのニューカマーにも触れておこう。このモデルで現時点で判明しているは、フロント21インチホイール、倒立フォーク、2気筒の水冷エンジンくらいのことである。ただ、「EST1991」や「KLE」というヒントから、KLEシリーズのニューモデルであることは確実だ。KLE500は1991年にデビューしたアドベンチャーモデル(当時はデュアルパーパスと称されていた)であり、日本にも400cc版のKLE400が導入され、250ccのKLE250アネーロも販売されていた。

ヨーロッパではモデルチェンジもされたが、2007年に登場したヴェルシス650へとモデルチェンジする形でラインナップから外れていた。ヴェルシス650は前後17インチのロードタイヤを履いた、どちらかというとロード志向の強いアドベンチャーモデルである。これはメインのヨーロッパでのニーズに合わせたものではあるが、今回発表されたのはよりオフロード志向を高めたモデルと考えられる。

僅かに覗えるエンジンの形状を見ると、エキゾーストパイプやバランサー形状は「エリミネーター500」に採用されている水冷並列2気筒エンジンによく似ている。逆に同様の並列2気筒、Z650のエンジンとは形状が異なるようだ。このため新モデルはヴェルシス650のキャラクターとは異なる新モデル……「KLE500」となるのだろうか!? 本機の続報に期待したい。

どれにしようか? 悩めるニューマシンたち

今回のEICMA2024で発表されたA2ライセンスモデルのアドベンチャーとエンデューロモデルは、それぞれのメーカーの考え方の違いが感じられて非常に面白い。スズキは完全にエンデューロ路線。KTMは目的別にバリエーション展開、BMWはアドベンチャーとエンデューロのいいとこ取り、カワサキはおそらくアドベンチャーといった感じだろうか。

日本への導入を考えると、スズキとKTMは400cc以下なのでそのまま、カワサキは500ccだとするとその400cc版を導入する可能性が高い。問題はBMWで、これは400cc版を作る可能性は低いと考えられる。価格の面においてもスズキ、KTM、カワサキは80〜90万円程度となるだろうが、BMWはG310GSが74万円からということを考えると100万円オーバーが予想される。もちろんそれ相応の装備が備わっており、免許と価格という不利を跳ね除けるだけのパワー感じさせるパッケージではある。いずれも2025年度中には日本仕様もリリースされるだろうから、今から期待して待ちたいところだ。

ミドルクラスが熱いぞ! EICMAで発表されたアドベンチャー&エンデューロ (22枚)

この記事にいいねする


コメント一覧
  1. 匿名 より:

    生産国次第かな〜。
    BMW310とかKTM390系ってアジア生産ですよね?
    BMWの上のクラスは本国生産だし、KTMも700系(インド)と800系(本国)で生産国分けてる。
    不都合はなくても上級グレードをアジア生産に組み込まないのはプライスだけの話じゃないよね。

コメントをもっと見る
コメントを残す