ホンダがミラノショーでV3エンジンのコンセプトモデルを発表した。しかも世界初のバイク用電動スーチャーを備え、回転数に関わらず強大なトルクを発生するという! ホンダのV3と言えば1980年代の世界GPで黄金時代の先駆けとなったNS500を思い浮かべる人も多いハズ。時代を超えて栄光のV3が復活する!

超スリム&コンパクトなV3スポーツを開発中!

噂にはなっていたが、多くの人が驚いたに違いない。電動化が叫ばれる時代に完全新設計のガソリンエンジンを新開発。しかも現行バイクにはないV型3気筒で、世界初の電動スーパーチャージャーまで採用する……!?

――11月5日からイタリアで開幕したミラノショー(EICMA)で、ホンダが「2025 Honda ICE Concept bike」を世界初公開。大型二輪車向けで、高効率&高性能の内燃機関(ICE)コンセプトバイクとなる。

エンジンの排気量は不明だが、水冷4ストロークV型3気筒エンジンでシリンダー挟み角は75度。スリム&コンパクトを追求したという。バイク用としては世界初の電動過給機を採用し、エンジン回転数に関わらず任意に過給をコントロールし、低回転からハイレスポンスなトルクデザインを実現する。

通常の過給機は冷却用にインタークーラーが装着されるが、新V3では必要としない設計。スペースが限られたバイクでは大きなメリットで、マスの集中化と軽量化にも貢献する。

――以上が正式に発表された内容だが、シンプルなトレリスフレームから推察するに、カリカリのスーパースポーツではなく、ストリート向け高性能FUNスポーツのキャラクターと言えるだろう。

またシリンダーの75度バンクは珍しく、ヤマハ・ドラッグスター1100のV型2気筒などに採用例がある。

電動スーチャーならエンジン回転数も関係なく全域トルクフル

過給機は、圧縮した空気をエンジンに送り込み、より高い出力を発生させるシステム。ターボは排気圧で回転させるタービンで過給し、スーパーチャージャーはエンジンの動力を利用して過給するが、ともに回転域によっては効果を得られにくいのがデメリットだ。

一方の電動過給機は、エンジンではなくモーターによる羽根車で空気を圧縮するため、エンジン回転数に関わらず過給圧を得られるのがメリット。今回のシステムを見る限り、排気圧で回転するタービンがないためターボではなく、機構的にはスーパーチャージャーの一種である電動スーパーチャージャーと言える。

また新型V3の写真を見るとモーターがないが、恐らく海外の4輪メーカー(メルセデスやアウディ)が採用するモーターとインバーターが一体化したタイプだろう。

二輪用の機械式スーパーチャージャーとしては、カワサキが2015年にNinja H2を世界で初めて市販化。H2はスーパースポーツだったが、その後ツアラーのNinja H2 SX、ネイキッドのZ H2として展開されたが、他メーカーからスーチャーバイクは発売されていない。ホンダの電動スーチャーV3がどんなジャンルのバイクとして発売されるのか楽しみだ。


V3市販車は40年ぶり、ホンダの象徴であるV型マルチが復活へ!

今回のV3は単なるコンセプトではなく、リリースにはしっかり「開発中」の文字がある! ホンダがV3の市販車を発売するのは1985年のNS400R以来。2025年に新型V3モデルが発売されれば、40年ぶりとなる。

ホンダの歴史は、V型マルチエンジンと密接に結びついている。まず世界を席巻したのは1982年の世界GPに投入された2ストV型3気筒のNS500。フレディ・スペンサーの走りで、1983年にはホンダに16年ぶりの年間王者をもたらした。

さらに1983年にはMVX250F、1985年にはNS400Rという90度V型3気筒の市販車も発売した。

以降ホンダは レースと市販車の両面にV型4気筒を投入し、黄金時代を築いていくが、その先駆けとなったのがV3だ。現在ホンダのラインナップにV4は存在しないが、シンボルであるV型マルチを復活させる狙いがあるのだろう。

近頃は並列4気筒の存続に黄信号が灯り、並列2気筒が全盛の時代。そんな中、現行バイクにはない唯一無二のV3という個性を打ち出してきたホンダに拍手を送りたい。しかもバイク用の電動スーチャーという世界初の技術まで投入してきた。その乗り味に世界中から注目が集まる!



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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    予想CGのエンジン外観、フレーム形状、スイングアーム、ブレーキ等がまったくの別形状なのはなぜ?

  2. 匿名 より:

    ※写真は2024年9月に編集部制作

  3. 匿名 より:

    さすがエンジンのホンダわくわくする

  4. バイクは趣味の乗り物 より:

    エンジンはとても魅力的。車体デザインもホンダイメージを脱ぎ捨てて一新して欲しい。
    個人的にはCBR400Fあたりの雰囲気がいいかなぁーと?イタリアンデザインがEGの志向ともマッチすると思うけどホンダにそれを求めてもダメでしょうね。いっそのこと車体デザインは外部に丸投げして衝撃的なモデルを出してくれ!何なら別ブランド名にしてもよい。モトGPも排気量ダウンされることだし、上手くタイアップしてとにかくそそられるモデルが出ることを待つ。

  5. するめ より:

    インタークーラー必要なしって事は過給圧低めの設定で、トルク必要なし場面で瞬時にトルクを上げるシステムかな。
    今時のバイクは秋分過ぎるくらい速いから、燃費アップに貢献システムなら歓迎。
    電動ならコスト的にもターボや普通のスーチャーに比べれば良いね。

  6. あま より:

    予想CGのマフラー形状って、まんまMVアグスタやんけw

  7. 匿名 より:

    インタークーラーを必要としない設計?
    こう書かれると…何もわかっていない。

  8. コイチ より:

    タービン付いてます。
    故にこれはターボに分類されます。
    スーパーチャージャーの定義は、繭型のローターがセットされたハウジング内でエアを圧縮過給するものです。

  9. 匿名 より:

    タービン=排気圧を用いるターボに使う羽根車。今回のは排気圧を用いないからターボやタービンと言うには違和感がある。

    今回のは羽根車(インペラ)。
    あとスーパーチャージャーの定義は繭型とは限らない。カワサキのような遠心式もある。これの電動版が今回のに近い。

  10. 工業高校1年生 より:

    コイチさん、空気を圧縮する羽根車をコンプレッサーといいます。この記事の新エンジンにタービンは付いていないけど、コンプレッサーは付いているから、あなたのおっしゃる通りターボ機械に分類されますよ。

    匿名さん、流体のエネルギーから駆動力を取り出す羽根車をタービンと言います。タービンという言葉に排気圧を用いるという意味はありません。そういう言葉を使うと知識のある方は「?」と思っちゃうかな。火力発電所にも原子力発電所にもタービンってありますよね。そういうことです。電動でもターボですし、軸動力を使ってもターボです。排圧を使ってもターボです。そしてどれも過給する機械なので、スーパーチャージャーと言います。そのうちの一つをターボチャージャーと呼び、あなたがターボと言っています。

    工業高校の1年生の授業で習うと思いますよ~。

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