
2001年にTMAXの初代モデルが登場した時、「スクーターがここまでスポーティな走りをするようになるのか」と驚かされた。TMAX530、TMAX560と進化を続けたTMAXは、スポーツスクーターのトップエンドを走り続ける存在だ。ヨーロッパで発表された2025年モデルではデザインが変更され、各種装備もグレードアップが図られている。
目次
2025年モデルはデザインも大きく変更
現行のTMAX560が登場したのは2022年であり、国内では「TMAX560 ABS」と上級モデルとなる「TMAX560 TECH MAX ABS」の2グレードが展開されている。2025年のヨーロッパモデルとして発表されたのは「TMAX」と「TMAX TECH MAX」だが、これは国ごとの呼称の差なので日本でもこのヨーロッパとほぼ同じ仕様のものへとモデルチェンジすると考えて良いだろう。
2025年型のTMAXは新しくデザインされたデュアルアイヘッドライトを中心に、ボディの各部のデザインが変更されており、より精悍になった印象を受ける。象徴的なブーメランサイドパネルや上向きのエキゾーストシステム、「彫刻的」とヤマハが表現するなデュアルシートなど、TMAXのDNAが生きた各部のデザインはスポーツスクーターとして完成度が高められたと言えるだろう。
本気のスポーツライディングにも対応できるTMAXは、ヨーロッパでは非常に人気の高いモデルだ。
2025年型はフロントマスク、特にヘッドライトを中心に、デザインが大きく変更されている。
熟成の進むエンジンはEURO5+排出ガス規制に対応
エンジンは水平対向往復ピストンバランサーを備えたDOHC4バルブ並列2気筒562ccで、最高出力35kW(47.6PS)/7000rpm、最大トルク55N・m/5250rpmという性能を発揮。2025年モデルではエンジンと排気システムが改良され、EURO5+排出ガス規制に完全に対応している。
このエンジンはVベルトを介して駆動するオートマチック トランスミッションと組み合わされることで快活でTMAXのスムーズな走りを生み出している。さらに遠心クラッチの設定を見直すことで高いレベルの乗り心地を実現し、停止状態からの加速がよりスムーズだ。また、新しい設計の吸気ファンネルにより、スロットルが完全に開いたときによりクリアで穏やかなサウンドを奏でるという。
エンジンは振動を消すための水平対向往復ピストンバランサー付きのDOHC並列2気筒。EURO5+排出ガス規制に対応している。
スポーティなデザインのエキゾーストシステムだが、EURO5+排出ガス規制のクリアに一役買っている。
最新のブレーキコントロールシステムを搭載
フレームはTMAXの伝統とも言えるアルミ製のツインスパータイプで、フロントには倒立フォーク、リアには長さのあるスイングアームを組み合わせて高い運動性能を実現している。ホイールサイズは前後15インチで、ホイールを軽く強度の高い鍛造品とすることでバネ下重量を軽減している。
ブレーキは前後ディスクタイプを採用しており、いわゆる「コーナリングABS」と呼ばれるブレーキコントロールシステムを装備。もともとヤマハの高性能スーパースポーツバイク用に開発されたこのブレーキコントロールシステムは、アンチロックブレーキシステムと連携して、急ブレーキ時や低トラクション路面での走行時にブレーキスリップを最小限に抑えてくれる。慣性測定ユニット (IMU) によって起動されるこのシステムは、さまざまな速度、傾斜角、道路状況で最も快適なブレーキ性能を提供することを目標として開発されている。
フロントフォークは倒立タイプで、ブレーキキャリパーはラジアルマウントとスポーツバイク並みの装備を持つ足回り。
エンジンから独立したスイングアームはかなり長めで、しっかり動くことで運動性能を高めている。
さらに、走行条件に合わせて希望のエンジン出力特性を選択できる「D-MODE」と、滑りやすい路面などで後輪へのパワーを調節するトラクションコントロールも装備されている。これに先述のブレーキコントロールシステムを加えることで、このスポーツスクーターの既存の電子制御技術パッケージが補完され、さまざまな路面状況において乗り手に高いレベルの自信を与えることに成功している。
右のスイッチボックスには切るスイッチ、モード切り替えスイッチ、スターターボタンが付く。
新しい7インチTFTダッシュボードを採用
7インチTFTダッシュボードがアップグレードされ、3つのスクリーンレイアウトを選択できるようになった。これによりライダーは、自分にとって最も重要な情報に重点を置いたレイアウトを選択できるようになった。さらに「My Ride」アプリを介してスマートフォンを接続することで、音楽を再生したり、SMSを表示したり、通話やメール通知を受信したりすることもできる。
7インチTFTダッシュボードは、必要に応じて3種類のスクリーンレイアウトを選ぶことが可能。
左スイッチボックスには十字キーが設けられている。これはおそらくスクリーン操作用だ。
「My Ride」アプリを介してスマートフォンを接続し、様々な情報を共有することが可能だ。
iPhoneまたは Android端末にダウンロードできる「Garmin Motorize」アプリを通じて、フルマップの Garminナビゲーション(※イギリスではフルマップのGarminナビゲーションを無料で使うことができるが、すべての国で提供されているわけではないので注意)にアクセスできるようになる。さらにナビゲーション機能に加えて、このアプリを使用することで交通、天気などに関する情報も表示できるため、ツーリングの際などにより効率的なルーティングを行なうことができるようになる。
ナビケーションをメインにした画面。四輪車のナビゲーションシステムと同様の視認性を持つ。
その他、シート下の収納スペースには、フルフェイスヘルメット1個または、オープンフェイスヘルメット2 個 (サイズと形状によって異なる) を収納できる。また、スマートキーイグニッションにより、ライダーがスマートキーを持っている限り、イグニッション、シート、燃料タンク、メインスタンドをキーレスで操作することができるようになっている。さらに、上級モデルである「TMAX Tech MAX」には、ヒーター付きシート、ヒーター付きグリップ、電子調整式スクリーン、クルーズコントロールなどが装備される。
シートの下にはヘルメットなどを収容することが可能。スポーツ性と実用性がきちんと両立されている。
スマートキーを採用しているため、キーを持っているだけでエンジンをかけたりシートを開けたりすることができる。
日本デビューはモーターサイクルショーか?
走行性能はもちろん、EURO5+排出ガス規制に対応した環境性能や、電子装備による安全性の向上など2025年モデルTMAXシリーズは全体的な完成度がワンランク上になったと言える。ヨーロッパ市場においてライバルであるホンダのフォルツァ750のモデルチェンジも発表されており、ヨーロッパにおけるビッグスポーツスクーター戦線には大きな動きが出ている。
初代モデルのコンセプトはそのままに、スポーツスクーターとしてさらに進化した「TMAX」と「TMAX Tech MAX」、そう遠くないうちに日本でもラインナップされることになるだろう。 またひとつ楽しみ、いや悩みが増えたという人もいるのではないだろうか? この安全で、速く、楽な新しいTMAXはヨーロッパでは2025年の3月に発売される予定となっている。それを考えると、日本デビューはタイミング的に来年のモーターサイクルショーあたりになりそうだ。
ヨーロッパでの発売は来年3月を予定。日本仕様についても情報が入り次第お伝えしていく予定だ。
TMAX Tech MAX主要諸元(2025)
・全長×全幅×全高:2195×780×1415-1525mm
・ホイールベース:1415mm
・シート高:800mm
・車両重量:221kg
・エジンン:水冷4ストロークDOHC2バルブ2気筒562cc
・最高出力:35kW(47.6PS)/7000rpm
・最大トルク:55N・m/5250rpm
・燃料タンク容量:15L
・変速機:Vベルト式オートマチック
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-15、R=160/60-15
・価格:14,300ポンド[TMAX Tech MAX](約280万円)
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