名門ビモータがSBKに復帰するために、カワサキと手を組んで開発した「KB998」は、2025年シーズンの台風の目となるはずだ、そして、そのストリートバージョンは、2024年のEICMA(ミラノショー)にて発表されるようである。

デビューから実力を見せつけたSBK「KB998」

ファクトリーチームであるKRTのSBKからの撤退はレース業界にっとって大きなショックであったが、ビモータが「Bimota by Kawasaki Racing Team」としてカワサキのエンジンを搭載したマシンで2025年から参戦することが発表されたのは皆さんご存知だろう。参戦予定のマシンはZX-10RRベースのエンジンを搭載した「KB998」、ライダーラインナップもアレックス・ロウズとアクセル・バッサリーニと2024年のKRTから変わらないこともあり実質的にはカワサキのワークスと大きく変わらない体制であると言えるだろう。

ビモータはイタリアの小規模スポーツバイク製造メーカーであり、マッシモ・タンブリーニの手による鋼管パイプフレームに主に日本製のバイクのエンジンを搭載したバイクを製造していた。社名はエンジンメーカーのイニシャルとビモータのイニシャル「B」を合わせ、その発表順に数字が付けられている。ホンダであれば「HB」、ヤマハであれば「YB」、スズキであれば「SB」、ドゥカティであれば「DB」、そしてカワサキであれば「KB」となる。

ビモータは2019年からカワサキモータースヨーロッパと合弁会社を設立し、H2系のエンジンをハブセンターステアリングを持つフレームに搭載した「TESI-H2」を発表。その後Ninja1000SX系のエンジンを搭載した「KB4」を発表し、これはカワサキのディーラーを通して販売をされている。そして、SBK用の「KB998」がつい先日ヘレステストでデビューし、いきなりのワンツーを飾っている。KRTは2015年から2020年までジョナサン・レイのライディングで6年連続でスーパーバイク選手権を制しており、その時代の勢いを感じさせる結果と言えるだろう。

ビモータは過去にもZ1000系エンジンを搭載したKB1、Z550系エンジンを搭載したKB2、Z1000J系エンジンを搭載したKB3という3台のカワサキエンジンを搭載したモデルを発表している。KB3が発表されたのが1983年なので、TESI-H2の登場まで実に36年もの時間が経過したことになる。

当然だがSBKレーサーである「KB998」には、レギュレーション上「ベースマシン」となるストリートバージョンが必要となり、ビモータのフェイスブックを見る限りそれは今年のEICMAでデビューするようだ。

ビモータの魂が宿るフレーム

KB998のエンジンベースは先にも触れたようにZX-10RRであり、ノーマルでもラムエア加圧時に154.5kW (210PS) / 13600rpmという強烈なパワーを発生する。ストリートバージョンのKB998に搭載される際にも、あくまでも公道仕様であることを考えると大幅に手が入れられることは無いだろう。

KB998で注目べきは、やはり車体周り、それもフレームであろう。タンブリーニがカジバに移籍して以降はアルミフレームモデルを数多く生産したビモータだが、KB4においてはフロント部分を高強度鋼製トレリスフレームとし、エンジンをフレームの一部とした上で削り出しのスイングアームピボットプレートを組み合わせる。公開されている写真を見る限り、KB998も鋼管トレリスフレームとアルミを組み合わせたフレーム構造を採用しているようだ。モトGPの世界においてもドゥカティやKTMがこうした鋼管トレリスフレームとアルミやカーボンを組み合わせたフレームで一定の結果を残しており、いわゆる「鉄フレーム」が過去のものではないことを証明している。実際このKB998は、ヘレスでのテストにおいてこのフレームの戦闘力の高さを証明したと言えるだろう。

スイングアームはアルミ製で、おそらくはKB4同様に削り出し部品を溶接したもの。KB4では3ピースだったが、溶接跡を見る限りLB998では4ピースになっているようだ。スイングアームの内側はリブを残して大きく肉抜きがされており、軽さと強度を両立している。トップブリッジも美しく肉抜きされ、その加工精度の高さはさすがビモータと言えるクオリティだ。

アッパーカウルのフォルムはどことなくZX-10Rを思い起こさせる逆スラントフェイスを採用しており、公道バージョンもこのデザインを引き継ぐことにかるだろう。サイドにはカーボン製のウイングレットが装着されており、これはH2Rに装着されていたものに近い形状。ライバルと言えるヤマハYZF-R1やBMW S1000RR、ドゥカティ パニガーレV4Rなどがウイングレットを装着してきているので、当然これは市販車にも装着されるだろう。

KB998のSBK仕様にはフロントフォークにショーワ製の倒立タイプが装着されており、ブレーキはブレンボ製だ。リアショックは確認できないがショーワ製と考えるべきだろう。現行のZX-10Rにはフロントがインナーチューブ径43mmのショーワ製のBFF、リアがショーワ製のBFRC liteが装着されているので、KB998のストリートバージョンにもこの組み合わせが装着される可能性が高い。ブレーキに関しても、ZX-10Rに採用されているラジアルマウントのブレンボ製M50モノブロックあたりが適切だろう。

ストリートバージョンは限定か量産か?

SBKのレギュレーション上、ロードゴーイング仕様のデリバリーが必要になるので「KB998」の公道仕様は100%発売される。ただ、ホモロゲーションギリギリの台数しか製造されない限定モデルとなるのか、ある程度の量産を考えたモデルとなるのかは今の所まったくわからない。

いずれにしてもビモータとカワサキがSBKのチャンピオンを取るために開発したこのKB998、実車を写を見てガッカリということはありえない。現地時間11月5日の11時45分にアンベールされるのはおそらくこのKB998のストリートバージョンなので、まずはパソコンの前で情報を待つことにしたい。

【速報】ビモータがEICMAでのアンベールを予告! SBKレーサー「KB998」のストリートバージョンか!? (16枚)

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コメント一覧
  1. あま より:

    「ストリート仕様においてはビモータの独自性が強いデザインのものが採用される可能性もある」

    SBKなんだからレース用と市販車のデザインが変わるわけないと思うが。微細な変更はあっても全く変わったらレギュレーション違反になると思うが。

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