2025年11月からの排ガス規制強化を前に、原付一種(50cc以下)は生産終了する可能性が高い。その前に入手しようとするユーザーも多く、2024年上半期のセールスが伸長。メーカー側は需要に生産が追いつかず、既に在庫が完売している店も多いという。その辺の現状をリポートしてみた。
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2024年上半期の50cc出荷台数は2年ぶりのプラスで12.8%増
長年、庶民の足として愛されてきたガソリンエンジンの原付一種=50ccが絶滅の危機にある。当Webでも既報のとおり、2025年11月から排ガス規制が強化され、排気量の小さい50ccでは規制値をクリアすることが困難。技術的にクリアできたとしても、非常にコストがかかり、車両価格が高額になってしまう。
近頃の50ccはほぼ日本専売の上にセールスが減少しており、メーカーは生産から撤退する見込み。どのメーカーも正式には発表していないが、生産終了は確実と見られ、新車で50ccが買えなくなってしまう。
とはいえ、年間9万台規模が販売され、今も公共交通機関の少ない地方を中心に生活手段の一つとして重宝されている。そこで代替の乗り物として、排気量125cc以下で最高出力を4kW(5.4ps)以下に制限した新基準原付(新原付)が2025年4月から導入される予定だ。
そんな中、50ccに駆け込み需要が発生していることがわかった。
まずはデータから見ていこう。二輪業界紙の「二輪車新聞」が独自調査した2024年上半期(1~6月)の50cc出荷台数は、前年同期比で6135台増(12.8%増)の5万3945台を記録した。
全ての排気量帯の合計は、前年同期比で2万6409台(14.1%減)の16万1177台。50ccを除く排気量帯は全て台数がダウンしており、50ccは2年ぶりのプラスで上半期を終えた。
ベーシックなタクトとジョグが特に人気
メーカー別に見てみると、ホンダは前年同期比4215台増(18.9%増)で2万6507台。タクト、ジョルノ、スーパーカブ50が好調で、特にタクトは1万台を突破した。
ヤマハは、ジョグが1万台超の出荷などで2078台増(10.8%増)の2万1243台。スズキは微減で、158台減(2.5%減)の6195台。レッツが人気だ。
なお、排気量別のシェアは、原付一種が前年同期比25.5%だったのに対し、33.5%にまで上昇。他の排気量帯は全てシェアが落ちている。
需要増で生産計画を上回り、今から注文しても新車の入手は困難
さらにホンダ系の販売店に話を訊いてみると「既に新車の50ccは買えない状態」という。
情報筋によると、ホンダは2025年5月で原付の生産を打ち切る予定。2023年末にホンダが販売店に最後の受注を募集した。その結果、注文が供給を上回ってしまい、年間生産計画をオーバーしてしまったという。
販売店には、注文しても希望した台数が割り当てられないケースが発生。人気がある車両は販売実績で割り当てが決まるので、原付をたくさん売っている店や需要の多い地方に割り当てられるためだ。一般的な店舗では10台注文して6台だったり、大型店でも300台要望して200台しか割り当てがなかった場合もある。
販売店が多めに見積もって注文したケースのほか、生産終了の報道を耳にして欲しがるユーザーも増加している。実際「既にオーナーで壊れかけている人や、なくなるなら欲しいという人からの注文が増えた。駆け込み需要は実際に起きている」と販売店オーナーは話す。
今後ジャイロキャノピーがプレミア価格になるかも?
新原付は125cc以下のモデルがベースのため、50ccに比べて重さや足着きを心配する声も。また、新原付の価格は現在の50ccより上昇すると見られる。そのため「50ccはプレミア価格で数万円値上がりするかもしれない」という。
特に値上がりしそうなのがジャイロキャノピーだ。悪天候をものともしないルーフと安定感が特徴の3輪スクーターで、配達業務でおなじみの存在だが、既にガソリンエンジン50cc版は終売。電動モデルは価格(104万2800円 ただし助成金あり)や使い勝手の面からセールス不調のようだ。
これらの動きもあり、ホンダは2025年5月の生産打ち切りを延長し、排ガス規制が始まる同10月末までの生産を検討し始めているという。
今後登場する新原付の価格で50ccの今後が決まる
他メーカーでも状況は同様らしく、50ccの新車在庫が完売している店は多い。また、中古車も売れており、品薄になっているそうだ。「今後は50ccを修理しながら何万kmも乗り継ぐ人が出てくるのでは?」とも話す。
現在の50ccがどんな道をたどるのか? それは今後リリースされる新原付の価格や乗り味にかかってくるだろう。50ccの代替手段として上手くフィットしてほしいものだ。
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