2023年のジャパンモビリティショーにて発表された、スズキ発の次世代原付一種「e-po(イーポ)」。今年夏には公道走行調査が行われるなど、着々と市販化に向けて開発が進められているが、いよいよ先日メディア向けに試乗会が開催された。自転車のようで自転車ではない、個性的なe-poの乗り心地を紹介したい。
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電動アシスト自転車にEVバイクの性能をプラス!新しい原付モビリティへ
50ccガソリンエンジンの原付一種バイクは、コンパクトで軽く免許取得も簡単で、買い物や通勤に身近な存在だ。しかし既報のとおり、2025年度に全面施行予定の排ガス規制によって消滅の危機にある。原付一種が消えてしまったとすれば、困るのはこれら生活の足として原付一種を利用しているユーザーだ。
そんな原付一種の将来を前に、スズキが昨年発表した新モビリティが「e-po」だ。見た目はほぼ完全に自転車で、さもありなんe-poはパナソニック製の電動アシスト自転車「OFF TIME(オフタイム)」をベースとしており、足でこぐペダルもそのまま。ナンバープレートと前後ライト、ウィンカーによって、ようやくバイクとわかるデザインだ。
これはe-poのコンセプトがズバリ、「電動アシスト自転車の気軽さ×EVバイクの快適さ」を狙ったものだから。アシスト自転車は運転免許も要らず気軽ではあるが、実はそのパワーに規制があり、アシスト力は人のこぐ力の2倍まで、速度24km/h以上はアシストできないという、あくまで自転車の域にとどまるもの。原付一種となれば、アシスト力には制限などなく、またアシストなしのスロットル操作で加速していくこともできる。e-poはそんな両車のいいとこどりを図った、新しいモビリティなのだ。
選べる3モードで楽ちん運転 折りたたんで車載も可能!
そんな次世代のモビリティ・e-poは、シチュエーションに合わせて3つの走行モードを選ぶことができる。まずはEVバイクとして、スロットル操作のみで走る「フル電動モード」。最高速度は30km/h程度に達し、50ccクラスの走行性能を発揮。そしてペダルをこぐ力をサポートする「アシスト走行モード」。アシスト自転車を超え、人力の3倍までアシストするうえ、速度が24km/hを超えてもアシストを続けてくれる。そしてサポートのない「ペダル走行モード」では、自転車的にペダルのみで走ることができ、バッテリーが切れても走行することができる。
基本的な設計は元になったアシスト自転車を踏襲しているため、バッテリーは自転車用のパナソニック製16Ahを採用。充電時間は約5時間で、約20kmの航続距離があるが、ペダルのみ運転を組み合わせればもっと航続距離は伸ばせるだろう。また、自転車用バッテリーの互換性もあるため、既に手元にあるバッテリーを流用することも可能だ。
車重は23kgで、アシスト自転車からは3.2kg増加しているが、ガソリンエンジンのバイクとは比べるまでもなく軽量だ。さらにフレームを半分に折りたたむことで、とてもコンパクトに格納する機能も。玄関先へしまうこともできるし、自動車のトランクに積んでアウトドアへ持ち出すことも可能だ。こんなコンセプトの原付は従来にもあったが、ガソリン漏れなどトラブルはつきものだった。しかしEVバイクではそんな心配はなく、EVの強みを活かした特徴といえる。
いざ試乗 自転車の姿でスイーと加速するパワーは原付以上か?
というワケでいよいよ試乗に臨んでみた……と、言いたいところだが、見た目も車格も全てがほぼ自転車なので、あまり緊張感はない。シート高(サドル高)も簡単に上げ下げでき、足つきや取り回しも自転車と同じだ。ところが、実際にペダルをこいで走り出すと、かなり速い!アシスト自転車の気分でいるとビックリすること間違いナシ。アシスト性が人力の3倍というのは伊達ではない。あっという間に原付の制限速度・30kmに到達だ。
さらにこぐペースを高めたところ、最高速度は40km/hまで確認。公道では出せない速度だが、原付一種並みの運動性能は発揮というわけだ。トップスピードはややガソリンエンジンに届かないが、加速性が素晴らしいのはEVならでは。変速機は自転車でよく見る外装式の7段で、走り出しから巡航まで細かな調整が可能。自転車オーナーにとってはまったく違和感なく運転することができるだろう。
さらにスロットルのみでの操作も試してみる。こちらはトップスピードは伸び切らないが、やはり力強い加速が楽しい。フレームはサスペンションのないリジッドであり、車体も軽いためギャップは少しドキドキ。コーナリングも慣れるまではちょっと怖い(最近自転車に乗っていないのでなおさら!)が、ブレーキはフロントのディスクブレーキで制動力十分だった。
車道のど真ん中を走ることはできないが、裏路地を軽快に抜けるのにはピッタリな特性は、まさに原付一種らしいメリット。それでいて持ち上げられるほど軽く、畳んでアウトドアにも持っていけるとなれば、これはe-poならではの面白い個性だ。
今後のEV原付はどうなる? 話題の「e-チョイノリ」にも期待だ
そんなe-poだが、実はまだ開発は完成しておらず、スロットルのレスポンスや灯火、配線のレイアウトなど、さまざなポイントを更に改良していくという。このため発売時期、価格は未定だが、開発テーマとして「原付一種のユーザーのために」開発を進めていることや、ベース車両のアシスト自転車「OFFTIME」の機構が極力残されていることから、価格は高価にはならないだろう。また、車載機能など従来のバイクとは全く違う個性から、スズキの自動車販売店で取り扱われる可能性もあるようだ。
また、昨年の規制緩和により一気に見かける機会の増えた「特定小型原付」は、e-poとの親和性も高いカテゴリーといえる。既にスズキは、「ナンバープレートを折りたたむ機構」の特許を取得しており、e-poにも搭載の可能性はあるといえるが、こちらも開発段階のため、続報を待ちたい。
そして、忘れてはいけないのがe-poと共にモビリティショーで発表された「e-チョイノリ」の存在だ。かつて大人気を誇ったチョイノリの次世代モデルと言っていいこちらは、ポップなスタイルも相まって注目度は極めて高く、SNS等でも大きな話題を呼んだ。こちらも開発は着実に進んでおり、クラスはやはり原付一種。e-poとは個性の違うスタイルが、どんな風に実現していくのか楽しみにしていきたい。
e-po(開発中)主要諸元
・全長×全幅×全高:1531×550×990mm
・ホイールベース:1044mm
・シート高:780-955mm
・乾燥重量:23kg
・モーター:直流ブラシレスモーター
・定格出力:0.25kW
・バッテリー容量:25.2V-16Ah
・変速機:外装7段シフト
・ブレーキ:F=ディスク、R=ローラーブレーキ
・タイヤ:F=18-2.125 、R=20-2.125
・価格:未発表
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