軽量コンパクトなロードスポーツとして、2014年に登場した「MT-07」。そのMT-07をベースに2017年に発売されたのが、「XSR700」だ。実用域で粘り強いトルクを発揮する「クロスプレーン・コンセプト」に基づいた270度クランクの直列2気筒DOHC688ccエンジンを共用しつつ、「オーセンティック」なスタイリングとなっている。
文:小川浩康 写真:コイズミユウコ目次
懐かしさのあるスタイルと最新装備が調和
2017年11月に国内モデルとして初登場したXSR700。実用域での粘り強いトルク特性を狙ったクロスプレーン・コンセプトを採用した水冷DOHC4バルブ直列2気筒エンジンは「CP2」とも呼ばれ、そのCP2は、軽量コンパクトで高い支持を得ているMT-07のエンジンをベースとしている。しかし車体はXSR700独自のもので、リラックス&カジュアルな走りに向いたアップライトなライディングポジションへと変更。タンクサイドカバー、ヘッドランプステー、ラジエターサイドカバー、フロントフェンダーステー、ハンドルバーなど、アルミ材を採用して素材感を強調したスタイルとなっている。また、ヘッドランプ、テールランプ、メーター、マフラーエンドの形状をサークル型とし、サイドカバー、メーター、前後フェンダーなどをシンプルかつ独立したパーツとすることで、ドレスアップやカスタムのしやすさも考慮している。
2019年と2020年には往年のスポーツモデルをイメージしたカラーを追加。2022年にはエンジンを最新の排ガス規制に適合し、フロントディスクの大径化、ヘッドライト・ポジションランプ・ウインカーのLED化、ネガポジ反転液晶メーターなど、各部を最新装備にアップグレード。ヤマハスポーツモデルの伝統を感じるスタイルと現代の走りを両立している。
XSR700の足着き性をチェック
軽量コンパクトで気負わずに乗れる
XSR700の全長は2075mmで、軽二輪のYZF-R25よりも15mmコンパクトになっている。車重も188kgと600cc~800ccのミドルクラスとしては軽く、足着き性も良好。エンジンはスロットル操作に対するレスポンスがよく、低回転でのトルクも太いので発進や渋滞時にもエンストの不安を感じない。3000rpm程度でも充分な加速力を発揮し、その回転域をキープしていても交通の流れに乗って走行していけるのが、クロスプレーン・コンセプトらしい扱いやすさなのだろう。
ハンドル幅は740mmとワイドだが、ハンドル切れ角もあって小回りもしやすい。個人的にはもう少し絞りがある(ハンドルグリップ位置が手前にある)ほうが操作しやすいと感じたが、足着き性をチェックした筆者より小柄なライダーは「ハンドル位置は遠すぎず操作しやすかった」とコメントしていたので、好みの部分となるだろう。このハンドルバーのおかげで上半身が起きたアップライトでリラックスした姿勢が取りやすく、目線も高い位置となって見晴らしもいい。ただ、リラックスした姿勢でライディングしていると、車体は立ち(直立性)が強すぎるというほどではないけれど、ハンドル操作に対する車体の反応がややマイルドに感じられた。車体を倒し込んでから一瞬間があって旋回していくような感じで、安定感のある乗り味だと思った。ただし、軽快な取りまわしと安定したマシン挙動の両立は乗りやすさにもなっていて、大型バイクの経験が少ないビギナーやブランクのあるリターンライダーにも扱いやすく感じられるはずだ。
回せばスポーティな乗り味が楽しめる!
3000rpm辺りで5~6速を使っていても、スロットルを開ければ車体はスッと加速し、市街地ではストレスのない走りができる。ハンドリングにマイルドさはあるが、上半身が起きたリラックスしたライディングポジションのままだとフロントに荷重をかけにくいので、むしろマシン挙動がシビアにならないセッティングだと思った。このエンジン回転域を使っていると、リラックスしてクルージングが楽しめ、日々の移動の足としても週末のツーリングの相棒としても扱いやすいマシンになっている。
しかし、各ギヤで4000rpm以上をキープすると、XSR700の走りは一気にスポーティになる。上半身を少し伏せてフロントに荷重すると、ハンドリングはマイルドさがなくなり、マシン挙動もシャープになる。エンジンはツインらしいパルス感が増してきて、蹴り出されるような加速力を発揮するので、スロットル操作をするのが楽しい。
前後サスペンションは荒れた路面でも底突きせず、スムーズに衝撃を吸収し、前後ブレーキは確実な制動力を発揮してくれる。クルージングで感じられた車体の安定性はスポーツライディングでも変わらないが、マシンコントロールはよりダイレクトになるのでコーナリングも楽しい。XSR700は以前のモデルで、往年のスポーツモデルをイメージしたカラーリングを採用したが、それは単なるオマージュだけではなかった。往年のスポーツモデルにはなかった厳しい環境性能や騒音規制をクリアしつつ、スポーツライディングの楽しさは当時を彷彿させるレベルに仕上げられているのを体感できたからだ。オーセンティックは忠実や正統という意味だが、本物という意味もある。誰もが感じられる扱いやすさと本物のスポーツライディングを楽しめる懐の深さがXSR700の特徴だと思った。
【2023年型ヤマハXSR700主要諸元】
・全長×全幅×全高:2075×820×1130mm
・ホイールベース:1405mm
・車重:188kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒688cc
・最高出力:54kW(73PS)/8750rpm
・最大トルク:67N・m(6.8kgf・m)/6500rpm
・燃料タンク容量:13L
・変速機:6速リターン
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=180/55-17
・価格:100万1000円
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