
取材協力:バイク王つくば絶版車館
レーサーレプリカ時代の幕を開けた4L3型RZ250は、1983年に29L型RZ250Rへとフルモデルチェンジされた。翌1984年に45PSエンジンとフレームマウントのカウルを装備して登場したのが、51L型RZ250RRである。
目次
RZRが登場した1983年、アルミフレームの時代が始まった
1980年に発売された初代4L3型RZ250は、他メーターを巻き込んだ2ストローク250cスポーツモデルのブームを引き起こした。1983年2月には、WGP直径とも言える最高出力40PSの2ストロークV型3気筒エンジンを搭載したMVX250Fを発売した。同月ヤマハはRZ250をフルモデルチェンジした29L型RZ250Rを発売、新設計のスチールフレームにYPVSを装備した43PSエンジンを搭載してMVXを迎え撃った。
35PSの水冷2ストロークエンジンをTZ譲りのモノクロスサスペンションを採用した車体に搭載した4L3型RZ250は、元祖レーサーレプリカと言える。
新設計のスチール製フレームに、ワークスレーサー譲りの電気式YPVSを採用したエンジンを搭載した29L型RZ250R。
1979年型のTZ250。クロモリ製のワイドフレームとアルミ製のスイングアームを採用している。
しかし、同じ1983年2月にスズキからアルミフレームに45PSエンジンを搭載し、フレームマウントの大型カウルを装備したRG250γが発売されると、2ストローク250ccスポーツバイクの勢力図は一変した。翌1984年3月ヤマハはRZ250Rにフレームマウントの大型カウルを装備し、エンジンを45PSまでパワーアップした51L型RZ250RRを投入した。しかし、同年4月にはカワサキからもアルミフレームにタンデムツインエンジンを搭載したKR250が登場。ホンダは販売不調であったMVX250Fに1年で見切りをつけ、1984年5月にアルミフレームに45PSのV型2気筒エンジンを積み、フルカウルを装備したNS250Rを発売するなど2ストローク250ccスポーツバイクはアルミフレームの時代に突入していった。
ワークスレーサーNS500のレプリカとなるMVX250は、40PSのV型3気筒エンジンをスチール製のフレームに搭載して登場。
アルミフレームに45PSのエンジンを搭載し、フレームマウントの大型カウルを採用して登場したRG250γはスポーツバイクの概念を変えたゲームチェンジャーだ。
RZ250Rをベースにフレームマウントの大型カウルを装着し、エンジンも45PSまでパワーアップした51L型RZ250RR。
29K型RZ350RRはアンダーカウルまで装着されたフルカウル仕様となる。最高出力55PS、最大ルク4.4kgmのYPVS付き347ccエンジンを搭載。
カワサキから登場したKR250は、独創的なタンデムツインエンジンをアルミフレームに搭載。
MVXの後継となるNS250Rは、45PSのV型2気筒エンジンをアルミフレームに搭載し、フルカウルを採用した本格的なレーサーレプリカとなる。
ジャジャ馬RZを一変させたYPVS
今回の撮影車は51L型RZ250RRのYSP仕様車で、アンダーカウルまで装着されたフルカウルとブルーのストロボカラーが特徴だ。フレームやエンジンは基本的に29L型RZ250Rを引き継ぐが、先にも触れたように最高出力は45PSまで引き上げられている。フレームマウントのカウル以外にもエキゾーストシステムはサイレンサー別体式タイプに変更され、RZ250Rもこのエンジンを搭載した1AR型へとモデルチェンジした。
フルカウルを装着したRZ250RRのYSP仕様は、ヨーロッパのレースシーンをイメージさせるフレンチブルーのストロボカラーを採用している。
フロントのフルカウルに対して、スリムなデザインにまとめられたリア周りによってリアビューは引き締まった印象になる。
RZ250RRのカウルレスバージョンとして登場した1AR型RZ250R。45PS仕様エンジンなど、カウル以外はRZ250RRと基本的に共通だ。
51L型のベースとなる29L型のRZ250Rで最も進化したと言えるのが、YPVS(ヤマハパワーバルブシステム)と名付けられた排気デバイスを搭載したことだろう。このYPVSはシリンダーの排気ポート部にバルブを設け、エンジンの回転数に連動させてバルブを回転、またはスライドさせ閉めたり開けたりすることで実質上の排気のタイミングをコントロールするというもの。1977年のロードレース世界選手権フィンランドGPでワークスレーサーYZR500に搭載され、その後モトクロッサーYZM250や市販レーサーTZ500にも搭載された。非常にピーキーであった4L3型RZ250に対して、YPVSを装備した29L型RZ250Rは低速域での扱いやすさと、スロットルによって思い通りのパワーコントロールができるフレキシブルさを身につけた。また、RZ250Rに装着されたYPVSは、ワークスレーサーYZR500と同様の電気式であったことも特筆すべきだろう。
29L型のRZ250Rのフレームは同時代のTZに倣ったワイドタイプのダブルクレードルとなり、ホイールベースは30mm長くなり1385mmとなった。フロントブレーキにダブルディスクを採用すると共にリアブレーキもディスク化、モノクロスサスペンションもリンクタイプへと改められるなどより進化した足周りが与えられね51L型もそれを引き継いでいる。
スタンダードバイクとしてロングセラーとなったRZR
正常進化を遂げたRZ250R/RRだったが、アルミフレームを装備したライバル車相手に苦戦を強いられることとなった。そして、1985年にアルミデルタボックスフレームに45PSエンジンを搭載し、フルカウルを採用した1KT型TZR250を発売して再びヤマハはレーサーレプリカの頂点へと立つに至った。
TZR250の登場によってRZ250Rはレーサーレプリカブームのメインステージから降りることとなったが、スタンダードな2ストロークスポーツバイクとして併売が続けられた。1986年にはタンクやホイールなど、各部ののデザインを大きく変更した1XG型へとモデルチェンジ。1988年に17インチホイールやデジタル進角CDIを採用した3HM型へとモデルチェンジし、このモデルを最後にRZの名前はヤマハのラインナップから姿を消した。1990年に発売されたR1-Zはそのスタンスや名称においてRZの後継モデルであり、エンジンは初代TZR250系のものはあったがRZの魂を引き継ぎロングセラーモデルとなった。
市販レーサーTZよりも先に、ワークスレーサーYZR250譲りのアルミデルタボックスフレームを採用した1KT型TZR250は大ヒットモデルとなった。
17Lタンクやスリムなテールカウルのデザインを採用した1XG型RZ250Rは1988年登場。写真のゴロワーズ風カラーもラインナップされた。
17インチホイールや大径のフロントシングルディスクブレーキ、デジタル進角CDIなどが採用された3HM型RZ250Rは最後のRZとなった。
RZ250RR主要諸元(1984)
・全長×全幅×全高:2095×670×1190mm
・ホイールベース:1385mm
・シート高:790mm
・乾燥重量:139kg
・エジンン:水冷2ストロークピストンリードバルブ並列2気筒247cc
・最高出力:45PS/9500rpm
・最大トルク:3.5kgm/9000rpm
・燃料タンク容量:20L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=90/90-18、R=110/80-18
・価格:45万8000円(YSP仕様・当時価格)
撮影協力:バイク王つくば絶版車館
レアな絶版車両が並べられるショールーム。カラーバリエーションや年式なども、幅広く揃えている。
住所:茨城県つくばみらい市小絹120 電話:0297-21-8190 営業時間:10:00~19:00 定休日:木曜日
45PSのYPVS付きエンジンとフレームマウントカウルを得て、完成されたRZ250RR画像ギャラリー (30枚)この記事にいいねする