いよいよ2024年日高2デイズエンデューロの本番が迫ってきました。Honda CRF250Lをカスタマイズし、オフロードコースで乗り込みながら、このバイクの特性をインプットしてきました。
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エンデューロ参戦での課題はズバリ“サスペンション”
2021年1月に行われたメディア向け試乗会から今日まで、オフロード専門誌の取材で何度となく乗ってきたバイクではありますが、やはり「自分ごと」として、いざエンデューロに参戦するとなると気になるものも見えてきます。それらを要約すると「重量」「サスペンション」「ブレーキ」でした。
「重量」に関しては前回の記事でもお伝えしたようにアフターパーツに換装したり、タンデムステップなどレースに不要な物を取り除くことで、すでに3kgほどの軽量化を果たしています。今回はサスペンションがテーマです(ブレーキは次回の記事で掲載)。
当初の私の思惑は「なるべくノーマル状態のCRF250Lで日高を完走してみたい」というものでしたが、オフロードコースを走るたびに、どうしてもフロントサスペンションの底付きの多さが気になりました。かなり遅いスピードにもかかわらずちょっとしたギャップでの底付きがあるため、安心してアクセルを開けられないのです。
エンジンは非常に扱いやすく私にはパワーは十分。ギヤ比を変えたこともあり中低速の加速感も文句ありません。また車体自体のニュートラルな旋回性の良さもホンダらしく、このCRF250Lの利点です。しかしやはりサスペンションは剛性の低いSFF(片側ダンパー、片側スプリング)ということもあり、限界値は低いです。
ということで背に腹は変えられないということで、日頃からお世話になっているサスペンションプロショップ「テクニクス(https://technix.jp/)」さんにご相談した結果、今回は日高用にお試し用としてレンタルしていただけることになりました。これらのサス装着車は過去の取材で何度か乗っているので、安心感は半端ありません。
ノーマルからテクニクス製サスペンションへ換装!
まずはスタンダードサスをクローズドカートリッジ・伸圧ダンパーアジャスター付きのオリジナルサス「TRIC COMP KIT」に換装します。リアはリザーブタンクと、HI/LO2WAYの伸圧アジャスターが装備された「TEC5.2 Perfomance Shock」を導入しました。
純正フロントフォークのSFFシステム(片側ダンパー、片側スプリング)から、レーサーモデル同等のフォーク左右にスプリングと積層シム式カートリッジダンパーを持つ構造にアップグレード。コンプレッション、リバウンドの減衰調整が可能です。
無段階に調整可能なプリロードアジャスターと流路独立型リバウンドアジャスター、High・Lowスピードコンプレッションアジャスターを備えたリアショック。軽量で放熱性に優れるアルミニウム製のボディとオイル量を60%増やす別体式リザーバータンクを装備します。
テクニクス社屋にてCRF250Lをカスタム!
埼玉県春日部市にあるテクニクスさんの社屋では、車両持ち込みも可能となっています。早速私のCRF250Lを持参して、ベテランの土田メカニックに換装していただきました。
元々このサスペンションキットはCRF250-LでJNCCや日高に参戦したホンダ社員ライダー、世利和輝さんの要望にテクニクスさんが応えて完成し市販したものです。「今回取り付けたものはダートでの運動性能に振っていて、左右それぞれにダンパーとスプリングが入ります。
スタンダードの片側ダンパー、片側スプリングのサスはアジャスター1クリックの調節が大味になってしまうのですが、キットを組み替えることで微調整が可能になります。またスタンダードサスはボトムブラケットの剛性に頼るしかなく、アクスルシャフトも細いので、コンペモデルのSFF(片側ダンパー、片側スプリング)よりも動きが不安定になりやすいです。
両側のサスを同じ条件にすることでバランスが取れ、ボトムブラケット剛性の弱さも打ち消せます」と教えていただきました。
またリアサスペンションに関してはCRFは測定したことがないそうですが、セロー250の場合はオフロードコースを走ると140度くらいまで上がるそうです。風が当たるところにタンクを装備することでサスペンションのライフも保つ効果があるとのこと。
スタンダード(写真左)とテクニクスTRIC COMP KIT(写真右)の重量を測定しました。スタンダードは8.65kg、TRIC COMP KIT8.8kgと、構造変更もあり、やや増量。
リアショックはスタンダード(写真左)3.5kgに対して、テクニクスTec Performance Shock(写真右)が3.3kgということなので、前後トータルでほぼ重量差がないという結果に。リアショックの外付けダンパーアジャスターが追加されてもなお、材料置換によって軽量化されているのがポイントです。
元々ロードバイク用サスペンションにも開発、採用されてきたNHP(写真左)。特殊なメッキコーティングをアウターチューブに施すことで、適切な摺動性を実現しています。またサスペンションキットにはSKFフォークシール(写真右)も採用されています。こちらはフリクションロスの低減と、耐久性の向上を促す定番のフォークシールです。
渋いカラーがバイクを引き締めるNFP(Night Hawk Plating)処理を施されたアウタチューブの効果は、一言で言えば「摺動性の向上」ですが、単純にフリクションロスを低減させるものではなく、接地感の高さを狙ったものです。
サスペンションの初期作動の良さはテクニクスさんのサスチューニングの概念の根本をなすところですが、ただ動けば良いというものではなく、ストローク速度がゼロ=サスペンションが伸び切った状態でのフリクションはむしろ大事だという考えを、特殊なメッキ処理で実現したのがこのNHPというわけです。
何度か試乗していますが、本格的に長距離を走るのは今回が初めてなので、インプレッションも今後の記事で書かせていただきます。
さて、無事サスペンションの換装が終了しましたので、社内を見学させていただきました。ここは作業行程の一部をどなたでも見学できるスペースがありますので、ぜひ行って見てください。サスペンション装着車のレンタルや試乗などもぜひ!
ライダー出身のスタッフも多いテクニクスは、様々な要望に応えてくれる確かな技術と、経験、信頼性があります。歴代の社屋にお邪魔してきましたが、現在の社屋は広くて駐車場にも余裕がありますよ!
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