
取材協力:バイク王つくば絶版車館
ネイキッドバイクブームにおいて、400ccクラスや大排気量クラスではネオクラシック路線というのが各メーカーの戦略であった。しかし、250ccクラスにおいては各メーカーの考え方は異なり、純粋なネオクラシック路線と言えたのはホンダのジェイドだけであった。
目次
各社の戦略が異なった250ccクラスのネイキッドモデル
1989年にカワサキゼファーが巻き起こしたネイキッドバイクブームによって、各メーカーから様々なネオクラシックスタイルのネイキッドバイクが登場した。まず主戦場である400ccクラスに各メーカーはネオクラシックスタイルモデルを投入、続けて大排気量へとラインナップを広げていった。250ccクラスにおいてもレプレカ系の4気筒エンジンを使ったネイキッドモデルが投入されたが、カワサキがバリオス、スズキはバンディット、ヤマハはジールとネオクラシックとは少しズレた印象だったのに対して、ホンダは王道的なネオクラシック路線のジェイドを1991年に投入した。
1991年に登場したジェイドのメインカラーになっていたのは、このタスマニアグリーンメタリック。ライバル車よりも落ち着いた印象を与えた。
最大のライバルカワサキバリオスは、ZXR250系の4気筒エンジンを搭載。バリオスIIまで含めると、2007年まで製造されたロングセラーモデルだ。
スズキのバンディット250は1989年に発売され、1995年にフルモデルチェンジ。エンジンはGSX-R250由来で、モデルチェンジ後は可変バルブタイミング機構付きのVもラインナップされた。
ヤマハのジールはFZR250系のエンジンを積み、個性的なデザインに仕上げられたネイキッドモデル。車体がコンパクトなため、女性オーナーも多かった。
バイクらしさを求めて行き着いたネオクラシックスタイル
ホンダはこのジェイド発表した資料で、「“オートバイ”という言葉から、誰もがまず思い浮かべる形態イメージを大切にする」、「バイク単体だけではなく、人が乗った時により美しいかたちを追求する」、「時が経つほどに一層好きになれる生命力あふれるデザインとする」という3つのキーワードを基本にそのデザインを構築したと言っている。
ジェイドはスチール製のスタンダードなダブルクレードルタイプのフレームに、CBR250RR系のカムギアトレインエンジンを搭載。ボディデザインはCB系の流れを汲んでおり、いわゆるスタンダードなバイクらしい形をしている。タンクはボトムラインがエンジンの上まで来る昔ながらのデザインで、サイドカバーからテールカウルまでのラインが美しくつながっていく。これはホンダの伝統とも言えるCB750FやCBX400F系統のデザインに通じるものであり、CB1000SFやCB400SFの末弟のようにも見えるのだが、1番最初にこのデザインを採用したのは1991年3月に発表されたジェイドである。ちなみにCB1000SFが発表されたは1991年10月から11月にかけて開催された第29回東京モーターショーであり、CB400SFが市場に投入されたのは1992年4月のことである。
ジェイドののエンジンベースとなったのは、CBR250RR。現行モデルとは異なる、カムギアトレーンのDOHC4気筒エンジンを搭載していた。
CBR系のカムギアトレーンのDOHC4気筒エンジンを最初に搭載したのが、このCBR250Fourだ。
「バイクらしい」という表現が似合うジェイドのスタイルは、ライバル車の中でも完成度の高さを感じさせるものだ。
サイドカバーからテールカウルへとつながるラインが美しいリアビューは、CBやCBXを思い起こさせる。
レプレカベースのエンジンを、扱いやすくリファイン
先にも触れたようにエンジンはCBR250RRをベースにしているが、バルブリフト量を吸入側を5.9mmから5.2mmに、排気側を5.4mmから5.0mmに変更することで流速を早め、低速域でのスワール効果を高めてより安定した燃焼を実現。また、吸気、排気共に大幅にバルブタイミングを変更し、オーバーラップをゼロにすることでエンジン回転数にによって変化する排気脈動の影響を抑えるみとでスロットルの開閉に対するリニアリティを向上させている。また、キャブレターのスロットルバルブのセット角も変更されており、スロットル開度の急激な変化を抑えることで低速域でのリニアリティを向上させている。その結果、エンジンのスペックは最高出力40PS/14000rpm、最大トルク2.4kgm/11000rpmとなり、トータルでCBR250RRよりも低中速域での扱いやすさが向上している。
足回りはフロントにテレスコピックタイプフロントフォーク、リアに角形スチール製スイングアーム+モノショックというサスペンションに前後17インチホイールをセット。ハンドルの切れ角は38°と大きく取られ、ブレーキは前後ディスクタイプが採用されている。ホイールベースは同年式のCBR250RRの1345mmに対して、1420mmと長めにすることで軽すぎない落ち着いた走行感覚を生み出している。
ジェイドはもっとヒットすべきだった名車だ
この1991年前後に発売された250ccクラスのネイキッドバイクの中で、最もヒットしたのはカワサキのバリオスであろう。ジェイドは1992年にスポーティさをアップしたジェイドSをラインナップに加えるなどしたが、残念ながら売り上げを伸ばすことができず1993年モデルで生産中止となる。このジェイドの後継となるのは同系統のエンジンを搭載し、よりスポーティなデザインを纏ったホーネットだ。1996年登場したホーネットは大ヒットモデルとなり、バリオス/バリオスIIとともに200年代まで250ccネイキッドバイクシーンを牽引した。
最後に、今更ではあるが、なぜこれだけよくできたジェイドがヒットしなかったかということを少し考えてみたい。デザインは今見てもよくできていて、同年代の250ccネイキッドバイクの中では最もまとまって見える。エンジンや車体も申し分ない仕上がりだ。車名の「ジェイド」はヒスイを意味するのだが、このネーミングが例えば「CBX250F」や「CB250SF」だったらどうだろう? また、ジェイドS以外は濃いめのグリーンやブルーといった地味目の単色カラーリングを主に採用していたのだが、CBX400Fのような赤白のツートンカラーがあったらどうだったのだろう? もちろん当時のホンダにはホンダの考え方があったのだとは思うが、他メーカーのネイキッドモデルが過去のレジェンドバイクのイメージを使うことで成功したことを考えると、ホンダも限定車などでもっと積極的にレジェンドバイク仕様を試してみても良かったのではないかと思う。
1992年モデルに追加されたジェイドSは、2トーンカラーやメッキパーツなど上質な装備を与えられたアッパーグレードモデルだ。
今や伝説となったCBX400F。そのデザインをジェイドSと見比べてみると、ジェイドのデザインがその流れにあることを再認識できる。
ジェイドの後継モデルとなったホーネットは、スポーティさ全面にを打ち出したことで若いライダーの心を掴むことに成功した。
ジェイド主要諸元(1993)
・全長×全幅×全高:2060×710×1105mm
・ホイールベース:1420mm
・シート高:780mm
・車両重量:161kg
・エジンン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒249cc
・最高出力:40PS/14000rpm
・最大トルク:2.4kgm/11000rpm
・燃料タンク容量:14L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=100/80-17、R=140/70-17
・価格:49万9000円(当時価格)
撮影協力:バイク王つくば絶版車館
希少な絶版車が並ぶショールーム。もちろん全て販売車だ。
住所:茨城県つくばみらい市小絹120
電話:0297-21-8190
営業時間:10:00~19:00
定休日:木曜日
ホンダの元祖ネオクラシック路線、CB・CBX系デザインを受け継いだジェイド画像ギャラリー (26枚)この記事にいいねする