
ヤマハによる新オートマ「Y-AMT」を搭載した第1弾モデルがMT-09に決定。パワフルな3気筒ネイキッドに、ボタン変速とオートマを組み合わせ、走りに集中できるという。価格は未発表だが、ホンダのE-クラッチ並みのプライスを期待。7月26日の発表で国内仕様が2024年中に発売されることも明らかになった。
目次
新世代セミオートマを3気筒ハイパーNKのMT-09に初搭載
欧州ヤマハが2024年7月25日、「MT-09 Y-AMT」を正式発表した。既報のとおりY-AMT(YAMAHA AUTOMATED MANUAL TRANSMISSION)はクラッチレバーとシフトペダルを備えず、手元でのボタン変速と完全オートマが選択できる。既存エンジンに搭載しやすいのも特徴だ。
「クロスプレーンエンジン」への搭載が予告されていたが、当WEBの予想どおり、まずはMT-09へ搭載されることになった。
MT-09は、ヤマハの現行ラインナップを代表する1台。120PSを発生するパワフルな888cc水冷トリプルと193kg(STD)の軽量な車体、豊富な電脳デバイスを組み合わせ、スポーティさが魅力だ。2024年型でデザイン変更やクルーズコントロール新採用などのモデルチェンジを実施していた。
MT-09 Y-AMT(YAMAHA 欧州仕様)。ベース車は6速マニュアルミッションの2024年型MT-09で、車体色はSTDと同じミッドナイトシアン(写真)、青、黒の3カラーだ。
クラッチレバーは非搭載。オートマで運転できるほか、親指と人差し指で操作するシーソーボタンでの変速が可能だ。
シフトペダルもなし。最高出力119PSや最大トルク9.5kg-mは6速マニュアルのSTDと同じだ。
左手元の+スイッチでシフトアップ、-スイッチでシフトダウンできる。
右ハンドルのスイッチボックス。前側にAT/MT=オートマ/マニュアルの切り替えボタンを設置。オートマではスポーティな D+と、通常の Dモードが選べる。
Y-AMTのシステム。シンプルな構成で、スイッチボックスのほか、エンジンに2つの電動モーター(アクチュエーター)と制御コンピュータを追加するのみ。
クラッチとシフトの操作はそれぞれ電動モーターが担当。既存のマニュアルミッション車に大変更をしなくても追加できる。
左手に代わってモーターがクラッチレリーズを動かし、クラッチを断続させる。
5インチのTFTカラー液晶メーターを踏襲。右上部にY-AMTの作動状況を表すインジケーターが追加され「D+」の表示が見える。
車重はわずか3kg増、STDにはないスマートキーも備える
クラッチレバーとシフトペダルの有無、スイッチボックスを除き、外見からマニュアルのSTDとY-AMT仕様の違いはほぼ見当たらない。
Y-AMTのシステム重量は2.8kgと既に発表されていたが、車重はSTDの193kgに対し、Y-AMT仕様は196kgと3kg増に留まっている。
MT-09にはオーリンズリヤサスやブレンボキャリパーを備えた上級版「MT-09SP」も存在するが、今の所こちらにY-AMT仕様は設定されていない。
ただしSTDにはなく、SPの専用装備であるスマートキーが今回のY-AMT仕様に採用されるのが特徴だ。車両のメインスイッチを押しまわすワンアクションで、電源ONやハンドルロックも解除可能。燃料タンクキャップのロックおよび解除もこのシステムで行える。
ベースはMT-09ながら、MT-09SP専用装備のスマートキーを採用する。メインスイッチに鍵の挿し込み口はなく、ノブを備える。
走りに集中できコーナリングの乗り味を強化、スポーツ性能をスポイルしない
一般的に“オートマ”と言うとスポーツ性が損なわれるイメージがあるが、ヤマハはY-AMTによってMT-09のスポーティさがアップすると謳う。
リリースによると「手は足より脳との密接で洗練されたつながりがあり、人体が持つ最も触覚的で強力なツールの 1 つ」としている。
加えて「足と手を組み合わせてシフト操作するのではなく、手だけでシフト操作を行うと、速いだけでなく考える時間が短縮され、ライダーはスロットルとブレーキの適用、リーンアングル、体の位置、タイヤのグリップレベルに集中することができます。特にコーナリング時の乗り心地が強化されます」という。
さらに「シフトペダルがないため、ライダーは旋回中に下半身の位置をより適切に保つことができ、コーナリング中に優れた安定感を提供」ともある。
MT-09 Y-AMTの走行シーン。Y-AMTはクイックシフターより変速スピードが速く、効率的という。
停止中や極低速の走行中も当然エンストの恐れはなし。クラッチレバーの操作から解放される。
オートマの2つのモードに関しても詳細がわかった。D+モードは MT-09が積む3気筒エンジンの特性を解き放ち、6 速ミッションを使って高回転域を自動で長時間キープしてくれる。一方のDモードは、よりソフトで信頼性の高い自動シフトで低速走行や街中での走りをサポート。リラックスした走行を楽しみたい通勤や移動に最適だ。
なお、MTモードからATモードへの移行は右手元ボタンで行うが、AT→MTへの切り替えは左手元のシーソーボタンを操作するだけで可能。オートマで走行中、状況や気分に応じて即シフトチェンジできるのはありがたい。
ホンダE-クラッチ並みの価格を期待、さらにCP2(688cc)への展開も確実に!
欧州仕様の価格は未発表。7月26日に国内でヤマハが発表したY-AMTの概要によると国内仕様は2024年内に発売予定とされている。
価格はホンダのE-クラッチ並みを期待したい。E-クラッチは2024年6月発売のCBR650R とCB650Rに初搭載。Y-AMTと違い、E-クラッチはクラッチレバーとシフトペダルを備え、マニュアル変速とクラッチレスの変速を両立しているのが特徴だ。
価格はSTDから+5万5000円で、Y-AMTも同等かそれ以下での登場をお願いしたところだ。
ヤマハは、Y-AMTを複数のモデルに展開すると予告している。MT-09譲りの3気筒を積むXSR900/GP、トレーサー9シリーズ、登場が予想されるYZF-R9への搭載もありえるか。さらにクロスプレーン並列2気筒688ccエンジンへの搭載もヤマハの開発メンバーが明らかにしたのでMT-07などへの展開も期待!
ホンダのCBR650R E-クラッチ(左 115万5000円~)とCB650R E-クラッチ(108万9000円)。車重はマニュアル仕様に対し、2kg増に抑えた。
MT-09 Y-AMT[2024 欧州仕様]主要諸元
※【 】内はMT-09欧州仕様
・全長×全幅×全高:2090×820×1145mm
・ホイールベース:1430mm
・シート高:825mm
・車重:196【193】kg
・エンジン:水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ 890cc
・最高出力:119PS/10000rpm
・最大トルク:9.5kg-m/7000rpm
・燃料タンク容量:14L
・変速機:6速Y-AMT【6速マニュアル】
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
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個人的にはホンダのクラッチレバー付きの方がいいかな、と思っているのだが、慣れたらスイッチでも違和感なくなるのかも?
リリースに「手は足より脳との密接で洗練されたつながりがあり、人体が持つ最も触覚的で強力なツールの 1 つ」としているならば、空いたスペースに左手ブレーキを入れた方がホンダEクラッチとの差別化もできて、「シフトペダルがなく(左手ブレーキ)のため、ライダーは旋回中に下半身の位置をより適切に保つことができ、コーナリング中に優れた安定感を提供」がよりできそうなのになぁ…と思いました。
オートマなんてって全否定されてしまう層もあるかと思いますが、現行GT-Rとかと同じだと思えば自分的にはとても興味深いシステムだなと思います。
ただし、シフトフィーリング次第なので、試乗車やレンタルバイクがあれば乗ってみたいです。
みなさんクラッチレバーやチェンジペダルを欲しがると思うが全日本選手権クラスの人でもない限りメーカー設定の自動シフト操作にはかなわないと思う
普段使いやロングツーリングではATモードしか使わなくなだろうし