
二輪ロードレース最高峰のモトGPは1000ccのマシンで争われているが、2027年から排気量を850ccに落とすことが決まっている。これに向けてホンダの首脳がニューマシンを用意することを明らかにした。
ホンダ二輪トップ・加藤稔氏が「マシンは用意します」と発言
7月上旬に開催されたホンダの二輪メディア向け懇親会で、この4月から二輪事業本部長に就任した加藤稔氏が今後の事業方針を説明した。その際に、2027年からとなるモトGPマシンの排気量制限に適応したニューマシンを用意する方針を明かした。
現在の1000ccから排気量が850ccに制限されるため、モトGPへの参戦を続けるためには新たに開発する必要があるが、「マシンは用意します。ですがまだ何も決まっていません」と語った。エンジン型式などの詳細は不明なものの850ccマシンの登場が確実となった。
競争や高性能化が激しくなる一方のモトGPは、現在トップスピードがF1を超えていると言われる。対してサーキットの安全性が飛躍的に高まる訳ではないので、マシンの性能を調整する必要があるのだ。また、サステナビリティも睨んだ変更とも主催者側は説明している。
ホンダは、モトGPマシンをRC211V→RC212V→RC213Vと連番で開発していることから、次は「RC214V」というネーミングになるのが順当ではある。そして、これをベースとして850ccモトGPレプリカがデビューしてもおかしくはないが、どうなるだろうか?
2007~2011年にかけてモトGPが800ccに制限された際のホンダ製V4エンジンで写真は2011年のもの。RC212Vに搭載されケーシー・ストーナー氏がタイトルを獲得した。
記者からの質問に答えた加藤稔氏(右)は、4月から二輪事業統括部長に就任したホンダの二輪トップという立場。海外経験も長く、ベトナムやインドでは現地の社長を務めた。
「RC214Vレプリカ」の可能性はあるのか?
850ccモトGPマシンの登場を明かした加藤氏は、「量産開発にリンクするかと言えば今の時点では難しいと思います」とも回答。現時点では市販の構想はないという。RC212Vが活躍していた当時もスーパースポーツは1000ccだった訳で同じ状況とも言える。
一方、既報の通りヤマハがYZF-R1/M公道版の欧州における生産終了をアナウンス、カワサキZX-10Rの生産終了が噂されるなど、1000ccスーパースポーツの存続が危ぶまれている状況は当時と異なる。環境対応したダウンサイジングスポーツは時代が求める方向性と一致するのだ。
まずは、3年後の2027年シーズンに向けて勝てるマシンを開発することがホンダの急務と言える状況。加藤氏は「そのタイミングでは出ない」と付け加えていたが、後にイメージやエッセンスを受け継いだ「RC214Vレプリカ」が登場する可能性は十分あるだろう。
かつてホンダは2002年にデビューしたRC211Vで圧勝し、そのイメージを受け継ぐCBR600RR、CBR1000RRを2003年、2004年と立て続けにデビューさせた例がある。現在苦戦するホンダにとって規則変更という“リセット”が起死回生の材料になれば、市販版の機運も高まるずだ。
手前のCBR600RRは、センターアップマフラーやユニットプロリンクサスペンションなどコア技術を受け継いだRC211Vレプリカという位置づけで、製品写真でもアピールされた。
CBR1000RR(2004年) [HONDA] CBR954RRから1000ccに全面刷新。2004年からプロダクションレースも4気筒が1000cc化され、レースベース車の役割も担うことになった。
手前のCBR1000RRは、前年のCBR600RRと同じ車体パッケージを踏襲。エンジンも並列4気筒を採用した。当時、V型5気筒の市販版も開発されていたというが発売されなかった。
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