12月15日、新型KB4とともにカワサキモータースジャパンによるビモータブランドの国内取り扱いが発表された。ビモータは、H2のスーパーチャージドエンジンを搭載したテージH2を2020年にデビューさせたが、新生ビモータが正式に日本に上陸するのは初。カワサキプラザ店等で販売されることでより身近になった伝統のブランドを解説したい。

ビモータはエンジン以外を開発生産するイタリアンブランド

ビモータは、1966年に空調設備会社として設立されたのが発端。社名は創業者3名のそれぞれの頭文字をとって命名されたものとなる。1973年より創業者の一人、「TA」にあたるタンブリーニ氏を中心にモーターサイクルのフレームビルダーとして活動を開始し、1975年に初の量産モデルHB1をリリースした。

その後、1978年にカワサキZ1000のエンジンを搭載したKB1を発表。1980年代には現在の世界スーパーバイク選手権の前身にあたるTT-F1世界選手権に参戦しタイトルを獲得。1990年にフロントにハブステアリングシステムを搭載した最初のモデルを発表するなど、その名を世界に轟かせた。

ビモータで特徴的なのはその生産方法。カワサキのライン生産とは異なり、一台一台、一から手で組み上げる、イタリアならでのクラフトマンシップを発揮したハンドメイド製法を採っている。ペイントも職人が一つ一つ手で塗っていくことで生産され、全ての車両が唯一無二の一台となる。

これにカワサキのエンジンが組み合わされることによって、ハンドメイドイタリアンデザイン+高性能および高い信頼性という新たな価値を生み出すことが期待されている。

▲2019年にカワサキモータースグループが出資したことで活動を本格化させた新生ビモータは、2020年にH2のスーパーチャージドエンジンを搭載したテージH2をリリースした。カワサキモータースジャパンの桐野社長はテージH2の販売についても積極的で、今後販売体制を整えていくことを検討するという。

▲テージH2はモトコルセが866万8000円で日本に25台程輸入販売し、写真はその一台。シャーシは「魔法の絨毯」のようなフィーリングだという。実は、ニンジャH2は当初ハブステアで開発されており、H2本来の姿がテージとも言える。

▲12月15日に日本で初公開されたKB4。カワサキニンジャ1000SXの1043cc並列4気筒や電子制御一式もそのまま利用されている。車名のKB4はカワサキエンジンで4番目のモデルという意味で、1983年のKB3以来約40年ぶりのニューモデルだ。カワサキプラザ店のうち50店ほどやビモータ販売店で発売される。価格は437万8000円。

ビモータとカワサキのコラボモデル、KBシリーズは並列4気筒の歴史

1978年、カワサキのエンジン(Z900/Z1000)を搭載した最初のビモータである、KB1が誕生。1981年のKB2はZ550FXなどの550ccカワサキ製エンジンを搭載し、かつてのTT-F2クラスへの参戦を主眼においた本格的なレーシングマシン。1983年のKB3はZ1000Jのエンジンが使用されたストリートスポーツモデルだった。

このKBシリーズのプロジェクトにおいて、ビモータが目指したのは、すでに高い次元で成立しているものをさらなる高みへと引き上げる、というものだった。ビモータは、カワサキの高性能エンジンをより軽快なシャーシと組み合わせることで、マシンが本来持つ運動性能をさらに先鋭化してきたのだ。

最新のKB4は、歴代KBシリーズと同様に“リキッドレッド”に塗られたシャーシに、初代KB1のスタイルから想起された「ビンテージインスパイアード(Vintage Inspired=ビンテージ風)」デザインを採用。カワサキ製の並列4気筒エンジンをはじめ、マスの集中化や低く構えたライディングポジション、独創的な冷却システムなど、約40年の時を経て生まれた最新のKB4にも、オリジナルKBシリーズの思想は継承されている。

▲1978年のKB1。エンジンはカワサキZ1の後継であるZ900やZ1000の空冷直4が採用された。日本製のモデルではZ1-R等のビキニカウルしかない時代にレーサーのようなフルカウルとセパハンはあまりにも特別だった。

▲ベースとなったカワサキのZ1000。1976年にZ900へモデルチェンジして信頼性を高め、1977年から4mmボアアップして1015ccに排気量を拡大している。写真は、KB1と同年式の1978年モデル。

▲1981年のKB2。ミドルクラスのZ550系(日本ではZ400FX)のエンジンをベースに開発されたモデルで、最高傑作とも言われるトレリスフレームが美しい一台。

▲1979年にカワサキはDOHCの400cc/500ccのエンジンを開発し、Z400FXやZ500を国内外で発売。500cc版は1980年に553ccに拡大された。写真はKB2と同じ1981年式のGPZ550だ。

▲1983年のKB3。新設計となったZ1000Jのエンジンをベースにしたモデルで、各社の並列4気筒エンジンを搭載できる汎用シャーシに搭載されていたのが以前のモデルと異なる。

▲カワサキは、1981年に従来のZ1系からエンジンを大幅に新設計したZ1000Jをリリース。同時に1100版のGPZ1100も用意されており、Z1000Jはレース参戦を視野に入れたスポーツ仕様だった。

数えるならKB0? 幻のZ1用キットパーツカスタムがカッコいい!

実は、ビモータとカワサキのコラボレーションは1978年のKB1以前から始まっており、それが知る人ぞ知るビモータのZ1用キットだ。

1973年、ビモータがZ1向けにスイングアームやマグネシウムホイール、シート&外装などを販売。フレームが制作されていないためかナンバリングされていないが、1978年のKB1よ以前なので、「KB0」と呼ぶべき存在だ。

今後、ビモータとカワサキのコラボレーションが継続されていく中で、このような外装や足まわりだけのカスタマイズ仕様の展開も十分考えられるだろう。12月15日のKB4発表会でビモータ代表のピエルルイジ・マルコーニ氏は、「今後もKB4で使用した1043cc並列4気筒エンジンを使って開発を続ける」と語っており、現代版KB0と言える"Z1000RS by ビモータ"も期待できる!?

▲1973年にビモータがリリースしたキットパーツを装着したZ1。カフェレーサースタイルは、今見てもかなりカッコいい。

▲1972年秋に出荷がスタートし、2022年に50周年が公式にお祝いされるZ1。KB0をカウントすると2023年はビモータ×カワサキのコラボレーション50周年となり、カスタム仕様を発売するにも絶好のタイミング!?

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