
ヤマハが2023年に発表したXSR900GPは、1980年代から90年代のレーシングマシンをイメージした「レーサーレプリカ」と言って良いだろう。このバイクに興味を示すライダーの多くは、過去レーサーレプリカに乗っていた層であろうことは想像がつく。そんなライダーたちの心に残るレーサー、XSR900GPはそれを再現するのに最適な素材となるはずだ。
XSR900GPは、リバイバルレーサーレプリカ
1980年代のバイクブームはバイクレースの人気を高め、そのままレーサーリプリカブームへとつながっていく。各メーカーはレーサーレプリカタイプのバイクを毎年のようにモデルチェンジし、高校生や大学生はこぞってそれらの高性能バイクに跨った。しかし、1990年代に入るとネイキッドバイクが台頭し、レーサーレプリカブームは終焉を迎えた。ただ、スーパースポーツと名を変えて、750〜1000ccのスポーツバイクはレースベースとして進化を続けていく。
そんな中、2014年に3気筒エンジンを搭載したMT-09を発売したヤマハは、その派生モデルとしてRZをイメージさせるXSR900を発売、2024年にはモデルチェンジした新型XSR900をベースにカウルを取り付けたXSR900GPを発売した。このXSR900GPに取り付けられたカウルは、1980年代のレーサーレプリカをイメージさせるものであり、筆者を含め1980年代にバイクと共に青春を過ごしたライダーの関心を大きく引いた。
XSR900GPのスタンダードカラーであるシルキーホワイトは、マルボロカラーを意識させる、というかマルボロカラーそのものであり、小ぶりなライトの上にはゼッケンプレートがペイントで再現されている。このカラーの元ネタとなるのはマールボロヤマハのYZR500であり、エディ・ローソンやウェイン・レイニー、ノリックなどが乗って戦った。このXSR900GPは最初から1980年代のレーサーレプリカとして仕立てるために用意されたバイクとも言え、ライトの上にはゼッケンナンバーが貼られ、様々なヤマハのレーシングカラーで塗られることは想定されていたことだろう。
XSR900GPのスタンダードカラーであるシルキーホワイトは、ほぼマールボロヤマハカラーだ。
1987年型のマールボロヤマハYZR500。ゼッケン1はエディ・ローソンの搭乗車だ。
レジェンドバイクをオマージュした、ヨーロッパ発のカスタム
ヤマハ モーター ヨーロッパでは「バック・トゥ・ザ・パドック」という標語を掲げ、ヨーロッパのヤマハ販売代理店と共に過去の有名なライダーやバイクをベースにしてXSR900GPをカスタムするヤードビルド プロジェクトを立ち上げている。まず紹介する2台のカスタムXSR900GPは、このヤードビルド プロジェクトを代表する2台である。
1台目は“キング”ケニー・ロバーツ率いるヤマハのワークスチーム、「チーム ラッキーストライク ロバーツ」のYZR500カラーをモチーフにしている。本来はラッキーストライクのロゴが入る部分は、ヤマハ モーター ヨーロッパが「スポーツヘリテイジ」モデルオーナーをターゲットにしたライフスタイルブランド「FASTER SONS」へと変えられているが、誰がどう見ても「ラッキーストライクカラー」である。ゼッケンは「3」でランディ・マモラやウェイン・レイニーをイメージさせる仕様だ。
ラッキーストライクカラーを纏ったXSR900GP。アンダーカウルの形状から、ロゴが切れてしまうのはご愛嬌だ。
XSR900GPのデザインは、ゼッケンナンバーを貼ることで完成すると感じる走行シーン。
もう1台はバンス&ハインズのAMAスーパーバイク仕様FZR750Rをイメージしたカラーで、印象的なパープルとイエローを組み合わせたこのカラーリングはマニア心を揺さぶる。ゼッケンナンバーは「7」なので、1993年にデイトナ200マイルでエディ・ローソンが勝利した仕様をイメージ。バンス&ハインズは元々ドラッグレースでそのキャリアを始めたが、1980年代後半にAMAスーパーバイクに参戦を始め、1990年からはヤマハのファクトリーチームとして活動。コーリン・エドワーズや先日亡くなったアンソニー・ゴバートといった、世界的に活躍するライダーを輩出している。
インパクトのあるバンス&ハインズカラーも、XSR900GPのデザインはしっかり受け止める。マニアにはたまらない仕上がりだ。
エディ・ローソンとAMAスーパーバイク仕様のFZR750R。1993年のデイトナ200マイルで勝利している。
派手なカラーリングにペイントされたことで、XSR900GPはよりレーサーレプリカという印象を強める。
6月に開催されたフランスのビアリッツの「Wheels & Waves フェスティバル」では、この2台を含めた8台のカスタムXSR900GPがお披露目された。ヤマハ モーター ヨーロッパではこのヤードビルド プロジェクトのためにカラーリング検討用のテンプレートが提供されているので、あたなたも自分のイメージカラーでXSR900GPを塗ってみて欲しい。
ブルーストロボのこの車両は1984年に250ccクラスチャンピオンとなったクリスチャン・サロン車がモチーフ。本人がライドするというおまけ付きだった。
赤白のストロボカラーにゼッケン45を付けたこの車両は、1996年にコーリン・エドワースが乗ったYZF750がモチーフ。
ブルーとホワイトのツートンカラーは、1988年にスペイン人ライダーファン・ガリガが駆ったYZR250のカラー。
1993年シーズンにファブリツィオ・ピロバーノが、ワールドスーパーバイクで乗ったYZF750SPカラーを纏う。
「Wheels & Waves フェスティバル」におけるヤードビルドコンテストで、チャンピオンとなったのがこの車両だ。
ヤマハ モーター ヨーロッパのウェブサイトからダウンロードできるテンプレート。4面図がpdfで用意されている。
XSRシリーズに息づく、ヤマハレーシングスピリット
元々ヤマハはXSRシリーズにレジェンドマシンのカラーリングを取り入れており、初代モデルにはインターカラーを、2台目にはゴロワーズイメージのブルーなどを採用している。ワイズギアから、RZV500RとFZ400Rのカラーリングをオマージュした外装キットが発売されたのも記憶に新しい。これは言ってみればレーサーレプリカのレプリカ仕様であるが、期間限定品であったこともあり好調な売り上げであったと聞く。つまり、このXSR900GPはヤマハの目論見通り、1980年代当時にレーサーレプリカに乗っていたユーザーや、憧れたユーザーを取り込むことに成功したと言えるだろう。
この記事にいいねする
グリップエンドミラーがダサ過ぎる。
せっかくアンダーカウル作るのならなぜあんなに切り欠いてるのだろう?
モデルとなったYZR500みたいにアッパーカウルの下端から真っ直ぐ下に繋がるようにすれば、もっと表面積が大きくなってスポンサーのロゴも大きく見やすくなるのに。
このバイクだけじゃなく他のフルカウルのスポーツバイクに言えることだが、最近レースの世界でスポンサーの確保が難しいと言われてるが、その理由の一つにカウル面積が小さくなってスポンサーロゴが目立たない、というのも理由の一つなんじゃないかと思う。
スポンサー側からすれば、せっかく大金出すのに双眼鏡で見なけりゃ自分の会社のロゴが見えないようじゃ、金出したくなくもなるだろう。
バーエンドミラーがカッコいい!