
2024年6月9日、富士スピードウェイで開催されたMCFAJ MAX10グループにCHALLENGER RACINGの長瀬智也氏らがバガーレーサーで参戦した。バガーレースと言えば2020年からアメリカで開催されているキング・オブ・ザ・バガーズが世界で注目されており、これが初めて日本のレースに登場。そして、実現に向けて長瀬智也氏が牽引したことが大きなニュースだ。
目次
アメリカで人気のバガーレースがついに日本上陸!
今回、長瀬智也氏らが日本のレースに持ち込んだバガーレーサーは、アメリカで盛り上がっている「キング・オブ・ザ・バガーズ」をお手本にしたもの。ハーレーダビッドソンやインディアンの大型ツアラーで行われるレースで2020年にアメリカで初開催された。
バガーとはバッグ付きモデルのことで、速さや運動性を追求するレーサーとは対極的な存在の重量級ツアラーがサーキットを自在に駆け抜ける様は圧巻。瞬く間にエンターテインメントとして人気となり、ついに日本にも飛び火したのだ。
この立役者が長瀬智也氏。以前からバイク好きとして知られ、ストリートでチョッパーに乗るだけでなく往年のハーレーダビッドソン パンヘッドの車両でレースにも参戦している。その長瀬氏が、新たな表現としてバガーレースに目を付けたのは2022年のことだった。
「2022年の秋にJOYRIDEの西田さんにバガーレーサーを作りたいと持ちかけたのが始まりです。ちょうど、西田さんもバガーレースをやりたいと考えていたこともあり、まず一台作ることになりました。ただその時は雑誌の企画だったので、ほぼ外装のみのカスタムコンセプトでした。
そして、これがきっかけになってバガーレーサーでMAX10に参戦したいという話になっていきました。そこからバッグをつけての走行がOKになり、レース参戦が現実的になったので、新たにFLTRX-STをベースにしたマシンをゼロから作り直しました」(長瀬氏)。
左からJOYRIDEの西田裕氏、CHALLENGER RACINGの長瀬智也氏、ROUGH MOTORCYCLEの伊藤毅氏。日本初のバガーレーサー参戦を一挙3台で実現し、富士スピードウェイで大きな注目を浴びた。
本来レースで必要のないバッグの中には「愛がつまっています!」
とは言え、バッグをつけた大型ツアラーのレース参戦は前代未聞。長瀬氏の情熱と多くの協力者の理解の下、バガーレーサー初参戦に至っている。
「ハーレーでのレースは、参戦できるカテゴリーがかなり限られていて、その中で今回参戦したMAX10グループは外国車2気筒という条件で出ることができます。ただ、バッグがついているのは、これまでサーキット走行してきた方からするともの凄く邪魔に見えると思います。
見たことのない幅の広さなので、一緒に走る人は戸惑うだろうという話があったのですが、アメリカで成功しているレースだということが後押しになって、レースの時だけはバッグが装着可能になりました。MAX10グループの会長さんのご理解に感謝しています」(西田氏)。
「練習ではバッグを外しているんですけど、今日は初めて装着して走行しました。もちろんバッグを外して走るという選択肢もありました。だけど、アメリカのハーレーダビッドソンという乗り物に魅了されてきた私たちとしては、バッグを外して走ったとしたら、自分だったら悲しむと思います。
それを西田さんたちがサーキットやレース主催者の方と話をしてくれて、実際にバガースタイルでレースができたというのは、本当に色々な方々の“愛”なんだと思います。だからバッグの中には“愛”がつまっています(笑)。そして、興味を持ってもらってバガーレーサーが増えてくれることも楽しみにしています」(長瀬氏)。
バガーレーサーを日本に持ち込んだ長瀬氏も熱く語った。
手前の#66が長瀬氏、奥の#77が西田氏でともにFLTRX/-STで参戦。マシンの製作は西田氏のJOYRIDEによるもので、#66が足まわりも含めて本格的なレーススペックが与えられている。
エンジンは2100ccにボアアップし車体も徹底改良
長瀬氏が乗車したハーレーのFLTRX-ST(ロードグライドST)レーサーは、排気量を128キュービックインチ(約2100cc)にボアアップし、カムシャフトは低中回転重視のステージ1仕様を投入。最高出力は後輪で120PSをマークし、重量級の車体をレースでも加速させるようにしている。
シャーシは、ステムやスイングアームはKENS FACTORYとJOYRIDEで開発したアルミ削り出しパーツを装着し、モディファイしたオーリンズ製サスペンションで姿勢を調整。アメリカ発祥のバガーレーサーを国産パーツも組み込んで製作することもコンセプトとしている。
今回は初のレース参戦で、エンジンがラバーマウントされていることによる車体挙動が課題になった模様。次戦11月の筑波サーキットに向けてセットアップを進めつつボディにはペイントが施され、より完成度がアップするだろう。日本独自のバガーレーサーの進化に期待だ。
長瀬氏のFLTRX-STは、前後17インチの足回りが与えられ、タイヤはピレリのスーパーコルサSCを履く。今後、外装パーツはカーボン製を装着してペイントされる予定だ。
長瀬智也氏のレース活動をヨシムラが強力サポート
ヨシムラファンを公言する長瀬智也氏は、2024年の東京モーターサイクルショーでは加藤陽平氏社長就任発表のお祝いに駆けつけており、交流が深まっている。そして、今回は長瀬氏のバガーレーサー初参戦に吉村不二雄相談役が激励に訪れた。
それだけでなく、FLTRX-STレーサーにはヨシムラ製フルエキゾーストが装着されており、開発面でのサポートが開始されている。ヨシムラには現在ハーレー用のマフラーは存在せず、珍しい組み合わせと言えるが、今回は長瀬氏のレース活動をヨシムラが支援するのだ。
新作マフラーは、かつてUSヨシムラでラインナップされた「シリーズ7」を復刻しており、米ハーレーにちなんだスタイルとしているのが特徴。エキゾーストパイプは径50mm、サイレンサーは径80mmのパイプに65mmのインナーを組み合わせており、消音は最低限としている。
素材は内部を含めてフルチタンとしており、強めのカーブを描く機械曲げパイプを繋いでバンク角を稼ぐために高めにマウントされた。完全にバガーレーサー専用設計のマフラーは、開発はまだ始まったばかりなので、今後も進化していくだろう。
ヨシムラによるハーレー用マフラー「シリーズ7」。ヨシムラ×ハーレーは非常に珍しいが、意外にもマッチしている。いずれ市販されることがあるのか動向に注目したい。
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アメリカの「乗り物への自由」っておもしろいよね。
「コンバインでドラッグレース」したり「芝刈り機でフラットトラックレース」したりね。
「本場オウシュウの文化ガー!」ではじまった、日本のレース文化じゃ発想すらできないよね。
縛り多すぎもあるけど、基準をはみ出す文化は認めない風潮が阻害してるんかと
思いついたことをやれる環境と度胸が備われば
日本も盛り上がりそうなもんだけどな
バイクはこうじゃいけないとか
スタイルはこう
法律違反だのマナーだのうるさ過ぎ
やりたいことはやったらいいんだよ
認める寛容さもあればいいのに
キングオブバガーが普通に日本で観られるといいなぁ
本場のバガーレーサーのサイドバッグって、本物のバッグじゃなくてバッグの形をした見た目だけのフェアリングじゃなかったっけ?