
今年KTMのストリートファイターモデル、DUKE(デューク)シリーズが誕生から30周年を迎えた。それに合わせて2024年モデルでは最大排気量となる1390スーパーデュークRエボから現在販売されているモデルでは最も小排気量である250デュークまでデュークシリーズすべてがモデルチェンジ!
今回スポットを当てるのは、1390スーパーデュークRエボと990デュークだ。その進化具合は半端じゃない、しかと見届けるべし!
アグレッシブで精悍なスタイリングに磨きがかかったKTM 1390 SUPER DUKE R EVO
目次
デュークがあってこそ、いまのKTMは存在するのだ!
KTMが世に送り出したロードスポーツモデル、デュークは今年で30周年を迎えた。最初に登場したのは1994年(デリバリー開始は95年)の620デュークで、各国のラリーレイドで活躍していたエンデューロレーサーに使われていたシングルエンジンをデチューンし採用していた。
まだストリートファイターやスーパーモタードと言ったカテゴリーがあいまいだった時代の中で、新たなスタイルのスパルタンなロードスポーツモデルとして受け入れられた。これは当時オフロードモデルのイメージが強かったKTMが現在のようにスポーツバイク全般を手掛けるブランドとなるまでの階段を上り始める第一歩であり、KTM・デュークが独自路線を築く礎となったといえる出来事となった。
それから30年という長い年月が経った今、最新のデュークに注目してみようではないか。まずはシリーズの長兄である1390スーパーデュークRエボからだ。
ウエットかつ濃霧というコンディションであるものの、 1390 SUPER DUKE R EVOはいたって従順な走りを楽しめる
美人じゃないんだけれどなんだか魅かれる個性的な顔
デュークシリーズにおいてのフラッグシップである1390スーパーデュークRエボは従来モデルの1290スーパーデュークRから排気量を約100㏄引き上げ、全回転域でパワーとトルクが増大した。最高出力は190馬力、乾燥重量は約190kgということなので、パワーウエイトレシオはほぼ1:1ということになる。
WP製の電子制御サスペンションはすでに3代目となり、細かい制御や変更スピードが向上している。サーキット走行を楽しむことも想定されており、用意されているトラックモードでは8段階と細かいダンピング調整が可能となっている。
MotoGPからのフィードバックにより発進時にサスペンションを縮め車高を下げるファクトリースタート機能が新たに追加されているのも注目だ。
そしてどうしても気になって仕方ないのが新型のヘッドライトだ。多分実車を見た人なら、ご納得いただけることだろう。プレデター的というか、内臓がむき出しになっているというか、なんとも形容しがたいデザインなのである。ただし、けして美人ではないのだけれどなぜか心奪われてしまう。特殊な見た目もさることながら従来のヘッドライトと比べて700g軽量化に成功している。
一度見たら忘れられない奇妙奇天烈なヘッドライト。従来モデルと比べて700gもの軽量化となっているのもポイント
KTM 1390 SUPER DUKE R EVOの燃料タンク容量は従来モデルと比べ1.5L増え、17.5Lとなった
排気量の増大、各部の軽量化により、パワーウエイトレシオの理想値とされている1:1に限りなく近づいた。
スタイリングからして軽量な印象を受けるホイールに、120/70ZR17サイズのタイヤをセット。ブレーキキャリパーはブレンボのモノブロックをラジアルマウントする
各種セッティングは十字キーと中央のセットボタンで行う。直感的な操作が可能だ。クルーズコントロールも標準で装備
ブレンボのMCSマスターシリンダーが採用されている。単体価格は5万円近いパーツである
スイングアームは片持ちタイプ。タイヤは200/55ZR17サイズのミシュラン製パワーGPを採用
KTMのクイックシフターはシフトレバーの軸にセンサーを備えているために、タッチが良く、スムーズなシフトチェンジが可能だ
シート高は834mm。パッセンジャーシートとはセパレートしており、スポーティなスタイリングを印象付ける 3世代目となるWP製電子制御式サスペンション。マグネティック・バルブによる可変ダンピングが特徴
なんと990デュークは従来モデル比96%のパーツを更新したぞ!!
国内のデリバリーが前倒しされたばかりの新型990デュークにも触れておこう。実はこのモデルこそ初代620デュークから続く血統とされており、2018年に登場した790デューク以降パラレルツインエンジンを採用し進化してきた。スーパーデュークの初代モデルが990スーパーデュークだったことを思い返すと、以前ミドルサイズと呼ばれていたクラスはもうビッグサイズになってしまった感があるが、その話は長くなるのでまた別の機会に綴るとしよう。
さて990デュークは従来モデルと比べて96%もの構成パーツを一新している。新型のLC8Cエンジン(リキッド・コールド・8バルブ・コンパクトの意)は排気量947ccで123馬力を絞り出す。新型フレームは横剛性で8%、ねじれ剛性で5%向上しているが、その剛性力アップとバランスをとるために、新型スイングアームでは剛性を35%引き下げられている。
面白いのは新車時から走行1500kmまで“デモモード”となっており、クイックシフターをはじめとしたオプション類を使用することができる。これは1500km走行後自動的に使えなくなってしまうが、もし継続して利用したいならば正規ディーラーにて追加することができる。
それほどすぐに手放すこともないだろうが、もし新車、中古車問わず手に入れるなら見るべきポイントの一つとして頭の片隅に入れて置いても悪くないだろう。
990DUKEのフロントマスクは1390SUPER DUKE R EVOを踏襲するデザインとなっている
947ccまで排気量が引き上げられたLC8C並列2気筒エンジン。新しいピストン、クランクシャフト、コンロッドが採用され、最高出力123馬力を実現
フロントフォークはφ43mmWP製APEXサスペンションを採用。リバウンド、コンプレッションを5クリックで調整することができる 新型フレームが剛性を増したことに対し、新型スイングアームでは剛性を引き下げている。単体重量は1.5kg減だ
KTM発リアルストリートファイターは見た目も中身も異次元アップグレード!
1390スーパーデュークRエボと990デュークに試乗した際のインプレションをお伝えするのだが、数メートル先も見えなくなることもある濃霧、時折強く降り注ぐ雨というシチュエーションのことなので、はっきり言ってしまうと200馬力近いバイクを飛ばす気にはなれず、むしろ慎重さが先に出てしまった。 本性はサオ立ちビンビンキャラクターであってもライディングモードをレインにセットすることでまろやかセーフティ
がしかし、一方でレインモードがとても良いセッティングとなっていることは分かった。速度やバンク角をしっかりとセンシングしながら出力特性を変えてくる。もちろん加速時に水たまりを通過した際にスリップモーションを検知すると、即座に抑えてくれる。そんなだから、肩の力を抜いてバイク任せに走れば、どんな路面コンディションでもいたってスムーズに走り抜けることができる。
トラックモードにすればいとも簡単にフロントタイヤが浮き上がり、ウイリーアングルを任意にセットすることができるようなバケモノであるにも関わらず、怖くなく、安心して接することができるのだ。
もちろん電子制御デバイスの進化、これの効果は絶大だ。一方で昔からそうなのだが、デュークシリーズはスタイリングからして荒々しく思わせながらも、走り出すと想定外の従順さがあり、そもそもその根底には車体のセッティングバランスが絶妙なのだと思ってきた。
もはやデュークはバイクであって他とは別次元のノリモノだと感じている。それはラーメンという食べ物であって、初めて口にする者のラーメンに抱くイメージを覆す二郎のような存在に近しいと考える。これこそがデュークは二郎のようだと私が言う所以なのである。大ダブルニンニクヤサイアブラカラメマシマシで突っ込むべし!
1390SUPER DUKE R EVO[2024]主要諸元
・全長×全幅×全高:―×―×―mm
・ホイールベース:1,491mm
・シート高:834mm
・車重:212kg(燃料含む)
・エンジン:水冷4ストロークV型2気筒DOHC 1350cc
・最高出力:190PS(140kW)/10,000rpm
・最大トルク:145Nm/8,000rpm
・燃料タンク容量:約17.5L
・変速機:6速
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR-17、R=200/55ZR-17
・価格:269万9000円
990DUKE[2024]主要諸元
・全長×全幅×全高:―×―×―mm
・ホイールベース:1,476mm
・シート高:825mm
・車重:190kg(燃料含む)
・エンジン:水冷4ストローク並列2気筒DOHC 947cc
・最高出力:123PS(90.5kW)/6,750rpm
・最大トルク:103Nm/6,750rpm
・燃料タンク容量:約15L
・変速機:6速
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR-17、R=180/55ZR-17
・価格:179万9000円
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